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ガザ:タハディーヤから6週間−続く封鎖と募る不満

パレスチナ現地代表 小林 和香子
2008年8月 8日 更新

6月19日木曜日午前6時、ガザを実質支配するハマス(イスラム抵抗運動)とイスラエル政府がタハディーヤ(平静)に入った。タハディーヤとは、双方の武力攻撃の(一時)停止を指す。イスラエル政府とハマスがタハディーヤに合意した背景には、イスラエル側のガザ隣接地域への防衛の術がないこと、ハマスが拉致したイスラエル兵士の返還交渉が必要なこと、ハマス側はイスラエルの封鎖による人道危機的状況の緩和の必要に迫られたことなどがあったとされる。しかし、ハマスのタハディーヤに西岸地区も含める要求は見送られた。イスラエル政府はラマッラー暫定政府のみを公式政府と認めるという表向きの姿勢を示しているが、ハマスと合意を交わしたことで、ハマスをガザの実質管理者として認知したことになり、和平交渉相手のラマッラー暫定政府の立場を弱めることになっている。それは、ラマッラー暫定政府とハマスとの間の統一政府へ向けての努力に水を差し、双方の権力争いに再度火をつけた形になっている。

タハディーヤ後もガザの封鎖は続く

タハディーヤから約6週間後、ガザを訪れた。ガザの友人に何か変化があったか聞いた。友人の答えは「何も変わらないわ。電気もガスも水も不足しているわ。」友人はガソリン不足で通勤の足を奪われ、毎日30分以上かけて歩いて通勤している。移動の足に苦労するガザは静かだ。たまに走るタクシーは黒い煙を撒き散らしている。知り合いのタクシー運転手は、「ほら、あの黒い煙はファラッフェル(パレスチナのひよこ豆で作ったコロッケ)の臭いがするだろう。あっちは魚の臭いがするね。」ガザの車の燃料は揚げ物に使った食用油の使い古しなのである。車の代わりを果たしてきたロバや馬の疲労も臨界点に達しているようだ。お尻に大きなタダレがあったり、毛が抜けている、悲しい目をしたロバを目にする。

ガザに向かう商業物資が30%増えたと報道されている。しかし、ほとんどゼロだった状態に30%足してもそれは数字のトリックでしかない。相変わらず一日の3割ほどは停電。停電のため断水。ミネラル水は売っていない。汚水施設は運転できず、汚水は海に垂れ流し。ガザの人の貴重な資源の海と海産物は汚染され、黒ずんでいる。人々は人道支援物資で餓死しないギリギリで生かされているのだ。人々はタハディーヤの恩恵を受けていない。

子供の栄養団体のスタッフの話では「イスラエル産の果物や野菜が少し入るようになったけど、高いだけでなく傷んでいる場合が多いの。検問所で長時間待たされるからなのね。」「ジュースとかお菓子とか、子供の栄養にならないものはお店にならぶようになったけどね。」実際、町のスーパーや飲食店では、イスラエル産のジュースが並んでいた。水道水が塩分が多いため飲用に適さないガザで、ミネラル水はないのにジュースが入り、栄養に必要な野菜や果物が入りにくいのにお菓子は入ってくるのだ。

内部紛争再燃と治安悪化

タハディーヤはガザの人々の生活を改善しないどころか、それなりに保たれてきた治安状況を悪化させた。西岸がタハディーヤに含まれなかったことが大きく影響している。タハディーヤから6日目の6月24日、武力勢力イスラミック・ジハードがイスラエルにロケットを発射した。前日、西岸ナブルスで組織のメンバーがイスラエル軍により殺害されたことに対する報復としている。西岸では、イスラエル軍による、イスラム系列の団体や施設の襲撃や逮捕が頻発している。ヘブロンでは、イスラム系の慈善団体が押収され、孤児院に相次いで閉鎖命令が出されている。ナブルスでは昼間はラマッラー政府の警察が治安を管理しているが、夜中はイスラエル軍の管理下に入る。そして夜な夜な、ハマスと関連があるとされるイスラム系の団体の施設が手入れに遭う。7月7日・8日はナブルスのイスラム系の女子学校、モスク、医療施設が狙われ、コンピューターなどが押収された。7月8日には、7つの団体の施設に2年間閉鎖の軍令が出された。中にはナブルスで最大のショッピングセンターも含まれる。ガザだけで停戦をしても、西岸各地で「テロリスト掃討」の名のもとにハマス関係者や関連団体が「暗殺」や「閉鎖」や「手入れ」にあっている。その後、人権団体や国際NGOによる働きかけで一部の施設の閉鎖は延期になってはいるが。

事態をさらにエスカレートさせたのが、7月25日のガザのビーチで4歳の子供と4人のハマスメンバーが死亡、20人以上が負傷した爆破事件。ハマス警察はファタハ系組織が事件の背後にあるとし、26日ファタハ系列とされるNGOや施設の閉鎖や押収をおこなった。同日ラマッラー警察は、西岸で30人以上のハマス関連とされる政治家等を拘束した。

私がガザを訪れた7月30日・31日は、言ってみれば台風の目だった。人影も少ない街中、人々は次の嵐の訪れるのを予感していたのだろうか。出張から戻った翌日から、国連の治安部隊とガザの国際NGO治安協会から、治安警告が頻繁に流れてくるようになった。

8月2日、ガザ北部のファタハと関係が強かった武装組織を持つヒレス部族とハマス警察の武力応酬があった。武装組織を抑えきれなくなっているという噂を払拭したいハマスと、ガザでの最後の武力拠点を守りたいファタハの息がかかったヒレス部族の誇りと生き残りをかけた銃撃戦が繰り広げられた。9人が死亡、子供12人を含む80人以上が負傷した。一族の地区を徹底捜索したハマス警察は50人以上を逮捕した。ヒレス部族の180人以上がイスラエルとの境界に向かい、西岸への「亡命」を求め、一時的にイスラエル軍に保護された。ラマッラー政権のアッバス大統領は彼らをラマッラーに向かえると発表した。しかし、翌日アッバス大統領は方針変更し、30人以上がガザに返還されハマス警察に逮捕された。数日後、アッバス大統領は再度方針転換し、残りのヒレス部族をラマッラーではなく、ジェリコに受け入れた。

一触即発のガザ

タハディーヤ後も続く封鎖による改善しない生活。埋まるどころか深まる内部対立。ガザの人の不満は募る一方。ガザの人々から良く聞く声を紹介しよう。「もうハマスはうんざり。私たちの生活を滅茶苦茶にした。」、「NGOの事務所を目茶苦茶にするなんて、ハマスはファタハと同じよ。」、「私たちには泥棒のファタハか無能なハマスしか選択肢がないのか?」、「アッバスは大統領なら、パレスチナを統一することを優先するべきだ。」、「ガザの人々が制裁を受け苦しんでいるのに、イスラエル首相オルメルトと抱擁しキスしているなんて、大統領にあるまじき行為。」、「これなら、オスロ前のイスラエル占領時代の方がましだった。パレスチナ自治政府なんてなくなれば良いのよ。」、「私たちはアッバス大統領からも、世界からも見捨てられた。」、「今まで耐えてきたけどガザでの生活なんてもううんざり。海外に脱出したい」。

ファタハが主導したオスロ合意とその「和平プロセス」に一般のガザの人々が平和の配当を感じたのは束の間だった。また、ハマスに希望を託すも封鎖によって生活はひどくなるばかり。武力を停止した「タハディーヤ」も封鎖を解除せず、生活の改善にはいたらない。何のために抵抗の手段としての武力を放棄したのか?一部の武装勢力は納得が出来ない。そしてイスラエルへのロケット発射を再開した。しかし、ハマスは武力でそれら全てを抑え込むことは出来ない。それを抑えることが出来るのは、イスラエルによるガザ封鎖の解除でしかない。封鎖解除による経済・開発活動の再開。食料支援に依存しなければならない異常な屈辱的な状態ではなく、職に復帰し、家族を養うという、「正常」な生活が営めるようになることが尊厳の回復の原点であり、武力闘争ではなく交渉による和平が可能だと感じることができる唯一の方法でもある。ガザ封鎖解除が見られない中、現地の国連機関や国際NGOの間でも、ガザが爆発するのは時間の問題と懸念している。「タハディーヤ」や「アナポリス和平交渉」さえ行われていれば、何かしら状況が改善するだろうという楽観的な「幻想」を捨て、一触即発の状況に目を向けなければならない。


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