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【イエメン】「紛争と平和の中間」の暮らし #03

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こんにちは、元インターンの沓掛里美です!

この記事では、現地を訪れたスタッフの方からお聞きした、2024年10月時点でのイエメンの様子を全3回のレポートでお伝えします!レポート第3弾は、困難に直面しつつも、前を向いて暮すイエメンの人びとをお届けします。

これまでのレポート:
【イエメン】「紛争と平和の中間」の暮らし #01はこちら!
【イエメン】「紛争と平和の中間」の暮らし #02はこちら!

人と人との結びつき

イエメンの重要な文化の一つとして、タイズ・サーベル山のところでご紹介したカートが挙げられます。カートは覚醒作用のある葉で、初体験したJVCのスタッフには青臭く感じられました。ですがイエメンの人には馴染みが深く、街中のあちらこちらで、カートを噛みながら座って話をする人たちの姿が見られます。カートにはコミュニケーションツールとしての側面もあるようで、人と人との結びつきが強い部族社会の中では断りにくいものなのだそうです。

厳しい状況下にあるイエメンですが、そこに暮らす人たちは温かいです。
スタッフがお昼を食べに入ったあるレストランで、パンが美味しかったことをお店の方に伝えると、なんといくつかプレゼントしてくれました。ホテルの中のレストランでは、知らない人同士もおしゃべりに花を咲かせていて、スタッフに声をかけてきてくれた人もいました。

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人の顔のサイズをはるかに超える巨大なパン

紛争地を故郷に持つということ

イエメン滞在中には、街の方から人生についてのお話を聞く機会もありました。
アデンの最高級ホテルで働くサーリムさんは、30年間エジプトのカイロで暮らした後イエメンに戻ってきました。1994年の南北戦争から避難する形でエジプトに移り、貿易会社で働きながら安定した生活を送ってきましたが、年齢を重ねる中で故国に帰ってくることを決めたといいます。
電気不足などの混乱は帰国前から覚悟していたものの、ショックを受けたのは人々の間で道徳心が失われていることでした。やっとのことで見つけた今の仕事の給料も、約半分が交通費に消えてしまうそうです。
30年ぶりの故郷ではありますが、こうした状況を前に「イエメンを出られるならどこにでも行きたい」と嘆きます。

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サーリムさん(右)は自らの書評が掲載された雑誌や小説をプレゼントしてくださいました

タイズのカーヒラ城では、カートを噛みながら勉強するアムラーンさんという青年に出会いました。子どもの頃から医者になるのが夢だといい、高校卒業後は父親が営む洋服屋を手伝いながら、大学に入るために勉強を続けてきました。
貧しさに追い詰められているように感じる日々の中でも、医者になる夢をどうしても捨てられないからです。その後、「無事に国立大学の歯学部に合格することができた!」という嬉しいお知らせをもらいました。1,300人受験して、合格者はたった50名。厳しい競争を乗り越え、未来への扉を開いたのです。
合格後は入学するまで、家計を支えるために別の街のレストランで住み込みで働いています。

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カーヒラ城にてアムラーンさん(左から二番目)と

飛行機の乗り継ぎのために訪れたカイロでも、イエメン出身の方にお話を聞きました。
長引く戦争についての思いを語ってくださったのは、カイロで学ぶ大学生です。元々スーダンの首都ハルツームに留学していたのですが、スーダンで戦闘が勃発したことにより緊急退避を余儀なくされました。
自らも物心ついたときから故国が紛争状態にありましたが、「小さい頃の知識は石に刻むようなもの」という諺を引き合いに出し、10年にわたって続く戦争が子どもたちにもたらす影響を心配していました。

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エジプト・カイロにて大学生の男性3名と

皆さんのお話の中から見えてきたのは、イエメンの方たちが、故郷の不安定な政情に人生を翻弄されつつも懸命に前へと進む様子です。

カイロの大学生が話していたように、長引く混乱のせいで、子どもたちの教育やメンタルヘルスに深刻なダメージが出ることが懸念されます。そこでJVCは、イエメンで「子ども広場」という、子どもたちが子どもらしく過ごせる場を作る活動を行っています。

JVCイエメン事業について、詳しくはこちらをご覧ください。

※現在イエメン全土は外務省で危険度4(退避勧告)に指定されています。JVCでは安全管理体制を徹底し、セキュリティに関する特別な研修を受けたスタッフのみ駐在および出張を可能としています。また、常に現地の安全に関する情報を入手し分析、安全性を確認したうえで駐在・出張を行っています。本記事は現地の状況をお伝えするためのものであり、一般の方の渡航を促すものではないことはご理解ください。

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