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【イエメン】「紛争と平和の中間」の暮らし #02

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こんにちは、元インターンの沓掛里美です!

この記事では、現地を訪れたスタッフの方からお聞きした、2024年10月時点でのイエメンの様子を全3回のレポートでお伝えします!レポート第2弾は、物価高とその影響、ジェンダーギャップに関する現状をお届けします。

レポート第1弾:
【イエメン】「紛争と平和の中間」の暮らし #01はこちら!

暮らしに差す影

日本でもここ数年物価高騰が続いていますが、イエメンでも物価高は大きな問題になっています。その理由の一つは、通貨イエメンリヤルの大幅な下落です。1年間で、1米ドル=1,560リヤルだったところが=2,000リヤルにまで下落しました。インフレが進行しているものの労働者の給与は上がらず、教員が月収30米ドル、最高級ホテルのウェイターが月収45米ドル、医師でも月収100米ドル未満ということもあるそうです。

その影響か、栄養失調も深刻化しています。トマトの値段が8倍になるなど激しい物価高騰の中で食糧にありつけない人が出ており、ゴミを拾って食べる人もいるといいます。
暫定政権掌握地域では、直接的な戦闘よりもむしろ物価高の方が、切迫した問題として人々の生活を苦しめていると言えるかもしれません。

最近では大規模な武力衝突こそ起きていないものの、国内の分断は相変わらず深刻です。暫定政権が掌握する南部と、フーシー派が勢力下に置く北部とに分かれ、人々の相互交流は続いているものの社会の亀裂が顕著になっています。国内のサッカーリーグも南北で別になっており、両者が対戦するのは優勝決定戦の時のみだそうです。
タイズには、暫定政権とフーシー派の支配地域の境界線が位置しており、緑が生い茂った緩衝地帯をサーベル山から目視できます。ここでは未だに銃撃戦が行われるため、人が住めないのです。

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写真中央に見える緑の帯が、暫定政権とフーシー派の緩衝地帯

中でも鮮烈な分断の象徴が、国民的歌手アイユーブ・ターリシュによる曲の替え歌です。「我が祖国、我が祖国、イエメン、永遠に、私はあなたを称える、我が故郷よ」という部分が「我が祖国、我が祖国、南の国、国の首都は、アデン」に変えられたものが小学校でも歌われているといいます。子どもたちの意識の中に替え歌のほうが強く定着してしまわないこと、停戦と南北の分断がこれ以上進まないことが強く望まれます。

ライフステージとジェンダーギャップ

タイズ市に入る前には検問所がありますが、そこに勤めている兵士の中には女性の姿も見られました。結婚してからも働く女性は多いといいますが、地方に行くと状況は異なります。
田舎の方には〈女性は家のことをする〉という文化があり、結婚しているからアデンでの職業訓練に参加できなかったという女性もいます。また「早期婚」(非常に若くして結婚すること)の問題もありますが、最近では数が減ってきているということです。JVCも、イエメン事業のファシリテーターを対象にした研修の中で早期婚のデメリットを伝えています。

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研修で早期婚のデメリットについて学んだという、ファシリテーターのイフティヤールさん

教育の分野でも不平等が残っています。
その一つが、女子が学校に通うのを6年生まででやめさせてしまう親の存在です。イエメン人の99%が信じるイスラム教の厳格な解釈では、家族以外の大人の男女が同じ場所で過ごすことは好ましくないとされます。
一方、紛争下で学校数が限られる中、男女別に分ける余裕がないため共学となっている学校もあります。すると、成長してきた娘を学校に通わせないという選択をする親も出てくるのです。

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密集して授業を受ける、女子小学校の児童たち

なお、学問へのハードルは収入によっても異なるようです。混乱が続くイエメンですが、裕福な家庭では女子も高等教育を受けられ、海外留学も若者の進路の選択肢として存在します。比較的行きやすいのはアラブ圏ですが、知を求めてマレーシア、イギリス、日本などに渡る人もいるそうです。

男性たちにも悩みがあります。その一つが、結婚にかかるお金の調達です。イエメンの結婚式では、何百人もの招待客に数日間にわたって食事を振る舞います。結婚式場代に1日数千米ドルかかるほか、女性に「マハル」と呼ばれる結納金のような婚資を支払う習慣もあります。
こうした結婚の関連費用は全て男性の負担になり、生活費や住居の準備なども全て男性がしなければなりません。そのため、それらを用意できないがゆえに結婚できない人も多いといいます。

※現在イエメン全土は外務省で危険度4(退避勧告)に指定されています。JVCでは安全管理体制を徹底し、セキュリティに関する特別な研修を受けたスタッフのみ駐在および出張を可能としています。また、常に現地の安全に関する情報を入手し分析、安全性を確認したうえで駐在・出張を行っています。本記事は現地の状況をお伝えするためのものであり、一般の方の渡航を促すものではないことはご理解ください。

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