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【スーダン】ポートスーダンのドローン攻撃の影響と国際社会がすべきこと② (会報誌T&Eより)

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2023年から続く内戦が深刻な人道危機を招いているスーダン現地代表の今中が現地の様子や国際社会のすべきことについてお伝えする後編です 

▶「【スーダン】ポートスーダンのドローン攻撃の影響と国際社会がすべきこと前編はこちら

本記事は、2025年10月20日に発行されたJVC会報誌「Trial & Error」No.360に掲載された記事です。会報誌はPDFでも公開されています。ぜひご覧ください。

JVC会報誌「Trial & Error」No.360のPDFはこちら

市民に広がる不安と葛藤と不満

ドローン攻撃は夜間に発生し、昼間は何もなかったかのように日常生活が継続していました。子どもたちは学校に行き、市場や商店も営業していました。しかし、現在JVCがポートスーダンで実施している避難民・ホストコミュニティを対象とした生計向上支援プロジェクトにおいても、対象地域がターゲットになった空港から非常に近いため、避難を余儀なくされた住民が多数います。ただでさえ簡易な小屋のようなものに住んでいるのに、大きな爆撃音は計り知れない恐怖を与えました。 

さらにこうした混乱の下、国外に避難する人々が急増しました。私の知り合いだけでも複数の人々がポートスーダンを離れ、中にはエジプトへ陸路で密入国した人もいます。ピックアップカーの荷台に乗り、振り落とされないように紐で体をくくりつけ、砂まみれになりながら砂漠を駆け抜け、国境付近ではエジプトの警察のものか盗賊からのものなのかもわからない銃声が聞こえてきたりしましたが、なんとかエジプトにたどり着くことができたそうです。正規にビザを取得し空路で渡航するには莫大な金額がかかるため、こうした生と死が隣り合わせの選択を取る人は後を絶ちません。一体彼らは何度避難をしないといけないのでしょうか。 

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ハルツームからポートスーダンに退避していたサンドウィッチ屋の青年は、ドローン攻撃を機にエジプトに逃げました 

留まる人の中にも葛藤や不満が渦巻いています。「一体あいつらの目的は何なんだ? 軍事拠点だけをターゲットにするのならまだ理解できる。だけどこれは武器を持っていない市民への攻撃だ」、「本来スーダン人は平和的だが、それでもこれは許せない。私たちの尊厳にかけて闘う」、「国際司法裁判所(ICJ)がアラブ首長国連邦(UAE)に対するスーダンからの訴訟を却下したことには失望した。国際的なプレッシャーが足りないし、皆が知らないふりをしている」など。 

UAEとの緊張

ドローン攻撃から間もなく、スーダン政府は「UAEがRSFを支援している」と非難し外交関係の断絶を宣言しました。これまでスーダン政府は繰り返しUAEがRSFへ武器支援しているとして批判を続けており、今回のポートスーダンへの攻撃で両国の関係はさらに悪化しました。在UAEのスーダン大使館の閉鎖を発表すると、政府の反応に追随するかのように、スーダンの民間企業や大学がUAEにある拠点を閉鎖する動きも見られました。 

UAEは戦闘への関与を一貫して否定しています。しかし5月上旬に発表されたアムネスティ・インターナショナルの報告によると、RSFが首都ハルツームやダルフール地方で中国製の高性能榴弾砲を使用しており、この武器を輸入したのは全世界でUAEだけであるとのことです。これは明らかに、国連による武器禁輸措置に違反しています。アメリカは5月下旬に「化学兵器を使用した」として、スーダンに対する追加制裁を発表しました。しかし、同時にUAEに対する総額14億ドルを超える武器売却契約を承認しました。 

疑惑の渦中にある国に武器を売買することで利益を得る。これによって命を奪われ、生活が破壊されるのは、脆弱な立場にいる一般市民です。国際社会の一員として、国家の指導者たちには国際法の遵守が求められ、私たち市民にはその行動を注意深く監視する責任があります。これはスーダンだけではなく、世界中で起こっている紛争にもあまねく当てはまることです。私たちは決して無関係ではありません。 

私たちに求められる支援

2025年9月現在、国外や地方に避難していた人々の帰還が活発になっています。特にジャジーラ州マダニ、首都ハルツームではその動きが顕著です。エジプトからは南部の都市アスワンまでの無料のバスや電車が用意されるなどしています。国外で触れた優しさや暖かさを惜しむ別れの涙、スーダンで親族や友人と流す再会の涙、様々な感情がSNSでも共有されています。しかし激戦地となったハルツームでは、地雷や不発弾による事故が度々発生しています。こうした危険物の除去と基本的インフラの復旧が、人々の帰還と安定した生活のためには不可欠です。 

一方でダルフール地方やコルドファン地方では現在でも戦闘が継続しています。JVCの活動地でもあるカドグリも武装勢力の包囲下にあり、予断を許さない状態にあります。 

帰還できない人々はポートスーダンにもいます。JVCではポートスーダンにおいて、そうした脆弱な避難民とホストコミュニティを対象にUNDP(国連開発計画)と協働し、農業・漁業支援や職業訓練、インフラ整備など包括的な活動を実施し、住民の対応能力の強化を目指します。

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ポートスーダンでは清潔な水の確保が、喫緊の課題となっています。JVCでは給水設備の支援を予定していいます

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ポートスーダンで、農家の人に栽培している農産物や作付け期、耕作をする上での課題などについて聞き取りを行っている様子。陽射しが強いため、橋の下で行っています

広大なスーダンにおいては地域ごとに異なる人道支援のニーズがあり、それぞれに早急に応えなければ手遅れになります。これと同時に国際社会は一刻も早く、自国の利益の追求ではなく、停戦のために人道の立場にたったアクションを取らなければなりません。 

筆者プロフィール

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スーダン事業現地代表/イエメン事業担当 今中 航 

京都府出身。大学でアラビア語を専攻し、在学中にイエメンに留学。留学中に「アラブの春」と総称される民主化運動が始まり、ライフラインが脆弱化し、国が混乱に陥っていく様を目の当たりにする。卒業後は途上国・新興国の根幹を支えられるようなインフラ支援に携わりたいとの思いで、メーカーにて発電プラント事業を担当。退職後、現地の人々により近い距離で可能性が広がることに尽力したいという思いが大きくなり、2018年JVCに入職し、以降スーダンに駐在。イエメン事業立上げに参画し、2022年よりイエメン事業担当も務める。

https://www.ngo-jvc.net/about/staff/sudan_imanaka.html 

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