タリバン政権下での女子教育の再開(JVC会報誌 No.352より)
本記事は、2023年1月20日に発行されたJVC会報誌「Trial & Error」No.352に掲載された記事です。会報誌はPDFでも公開されています。こちらより、ぜひご覧ください。
アフガニスタンでタリバン政権が2021年に復活すると、 初等教育後の女子の中等教育が止まった。だが、同国ナンガルハル県で活動する現地NGO「Your Voice Organization. 以下、YVO」 はタリバン地方当局と粘り強い話し合いを続け、女子教育の再開に漕ぎつけた。なぜそれが可能になったのか。アブドゥル・ワハーブYVO副代表から届いたビデオメッセージを紹介したい。
みなさん、こんにちは。私の名前はアブドゥル・ワハーブです。YVOの医療・保健部門の事業担当マネージャーで医師でもあります。長年、草の根レベルで活動してきました。
YVOはもともとはJVCのアフガニスタン現地事務所でしたが、00年以降、治安が悪化し日本人スタッフの駐在も出張も難しくなったのを機に現地スタッフがJVCから独立し、YVOを立ち上げ、 19年3月にアフガニスタン政府登録のNGOとなりました。
以後、組織運営はYVOが行いますが、JVCとはパートナーシップ契約を締結し、地域教育、保健分野、平和構築活動に取り組んでいます。設立当初は財政的困難に直面しましたが、JVCが支援してくれました。なお、JVCだけではなく、いくつかの日本のNGOともパート ナーシップ契約を締結しています。
YVOという団体名は、「人々の声になる」ことを目指して付けられました。人々が何を必要としているのか、どのように彼らに寄り添えるのか、いつも考えています。今はアフガニスタンの人々の、将来は世界中の人々の声になれたらと願っています。人々の声をしっかり聴 き、状況を分析し、そして改善する方法を人々と話し合っています。
タリバン政権が復活して、教育分野では困難なことが増えました。特に、年齢の高い女児や成人女性は学校に行くことができません。タリバン内でも意見が分かれているようですが、女子教育の禁止なのか、文化的なことや宗教上のことを解決するための準備段階なのかは不明です。
YVOでは、ナンガルハル県の教育担当長官と何度も話し合いを重ねてきまし た。
そして2年10月初頭、YVOが地域に根付いて教育を提供してきたこと、YVOの教育プログラムが文化や宗教の観点から問題になるようなことはないということを理解してもらい、男子のクラス、女子のクラスの両方を運営できるようになったのです。1クラスは10歳以上の生 徒30人です。女子クラスの監督は、YVO女性スタッフの2人ですが、適任者を見つけるのは困難な問題です。
識字教室の男性クラスと女性クラス
しかし、私たちは資金難の壁にぶつかりました。2年の政変以来、アメリカの経済制裁で海外からのドル送金を受け取ることができなくなったのです。そのため、このプログラムの予算規模を削減せざるを得ませんでした。これは、スタッフが無給のボランティアになることを意味しますが、この事業を遂行するという私たちの決意は変わりませんでした。
そんなときに、銀行以外の民間の業者を通してのJVCの支援があり、プログラム実施を決定できたのです。JVCには大変感謝しています。支援金は、事業費、つまり教師の給与、文房具代や学校の備品代、その運搬代に使いました。そして10月10日ころ、教室の備品や教材、文房具を教室に運び、同時に教師を選び、5日間、教え方のトレーニングを実施し、教育活動を始めることができました。
今のアフガニスタンで教育を止めてはいけません。アフガニスタンの識字率は世界でほぼ最下位。特に地方における女性の識字率は非常に低い。ですから、女子教育は大変重要なのです。
日本の皆さまに大変感謝申し上げます。YVOが識字プログラムを行う理由は、アフガニスタンでとても必要度が高いものだからです。
また、こういった識字プログラムを実施するだけではなく、どのように女子を教育するのかというアドボカシー(政策提言)も重要です。何年にもわたって女子の教育が禁止されることになれば、識字率はますます下がってしまいます。
日本の皆さんには、国際社会の中でこのアドボカシーを一緒にやっていただきたい。アフガニスタンにおけるもっとも小さなNGOのYVOの教育プログラム応援してもらいたいのです。それが、アフガニスタンにおける女子教育開始に向けての第1歩となるのです。
アフガニスタンにおける女子教育の今後は不透明であり、まったく予想がつきません(2年12月20日、タリバン暫定政権は女子の大学通学を無期限に停止すると通知を出しました)。 タリバン中央政府と地方の有力者たちの女子教育に対する考えが異なっており、世界から女子教育再開を求める声が強いことはタリバン政権は承知しているはずですが、積極的に調整して再開の道筋をつける兆しも見えません。しかし、私たちは、「Remember Afghanistan (アフガニスタンを忘れないで)」と言い続けたい。ここアフガニスタンでがんばっている人たちの希望になりたいと、強く望んでいます。
◎注1・・・ https://www.nic-nagoya.or.jp/japanese/publication/nicnews-back number/assets_c/ NIC_J_03-04 2106-2107.pdf
◎注2・・・unicef 「アフガニスタン 女子中等教育の禁止で、 アフガン経済に5億米ドルの損失 児童婚や人身売買のリスクも」 https://www.unicef.or.jp/news/2022/0151.html
◎注3・・・ 毎日新聞 2022年8月18日
〇執筆者
JVC 物品支援 および 海外事業支援担当インターン
坂田 佳代子
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