
【スーダン】ポートスーダンのドローン攻撃の影響と国際社会がすべきこと① (会報誌T&Eより)

2023年から続く内戦が深刻な人道危機を招いているスーダンについて、現地代表の今中が、2回にわたって現地の様子や国際社会のすべきことについてお伝えします。
|
本記事は、2025年10月20日に発行されたJVC会報誌「Trial & Error」No.360に掲載された記事です。会報誌はPDFでも公開されています。ぜひご覧ください。 |
2023年にスーダンで内戦が始まって以降、当初は即応支援部隊(RSF)の攻勢が続いていましたが、スーダン国軍は2025年1月にジャジーラ州都マダニ、3月には首都ハルツームといった要所をRSFから解放するなど、戦局に大きな変化が起こりました。しかし4月以降、RSFによるスーダン各地の発電所、変電所、ダムがドローン攻撃のターゲットとなり、 幅広い地域で停電をもたらすなど、一部都市機能に混乱を引き起こしました。
本稿では主に、現在JVCの現地事務所があるポートスーダンへのドローン攻撃の実際を詳しくお伝えすると同時に、その背景とスーダン社会全体やJVCの活動への影響、国際社会のすべきことについて指摘します。
2023年4月に勃発した戦闘では首都ハルツームが主戦場となったことから、実質的には首都機能が紅海に面した港湾都市ポートスーダンに移り、以来、省庁、企業、軍も拠点を構えています。

JVCを含むほとんどの人道支援団体も戦闘後ポートスーダンに事務所を移しています。現状、国際商業便が運行する唯一の空港と港を有し、国の玄関口としての役割も果たしています。同時にハルツームなど戦闘地域から安全を求めて来た20万人以上の国内避難民も受け入れているといわれていますが、実数はもっと多いのではないかと感じます。リキシャの運転手、市場で働く商人、レストランのウェイター、パン屋で働く人など、街で出会う人たちの半分以上が避難民という実感があります。
国内随一の港町でありながら、多くの人々を受け入れるインフラや住環境を兼ね備えていなかったため、紛争以降は様々なアパートやホテルが増築・建設され、レストランや商店が続々と開店しました。夏場は40度を超える高温多湿の大変厳しい気候でありながら、国内では戦闘地域から最も遠い場所であり、数少ない「安全な場所」として認識されていました。
しかし、RSFによるドローン攻撃はそれを覆しました。5月4日早朝、軍基地や空港、港などが、5日には燃料施設がドローン攻撃され、燃料タンクの火災が発生しました。その影響で空港は閉鎖され、容易に国外に退避することもできなくなりました。
そして6日午前4時、凄まじい爆発音が鳴り響きました。JVC事務所から程近い燃料施設がドローン攻撃のターゲットになったのです。かばん一つと懐中電灯を手に事務所から飛び出しました。他団体の職員が車両を保持していたことから、助手席に乗せてもらい退避しようとしましたが、車が渋滞して動きません。迫りくる煙を見て、車から飛び降り、歩いて避難することに。すぐに電話で事務所近くに滞在していた現地職員のモナと連絡を取って合流することができ、煙と反対の方向にひたすら歩きました。近所の人たちも、鞄を持って右往左往しています。ある者は北に、ある者は南に、この後も攻撃が来るかもしれない、どこが安全なのか、とりあえず軍施設や燃料施設から離れているところに行かなければ……。運よくトゥクトゥクを拾い、「安全な場所へ!」とお願いしたのです。空に広がる黒煙とは裏腹に、トゥクトゥクから見えた海から昇る日の出のなんと美しいことでしょう。
一旦安全そうな場所に着き、お茶やザラビア(ドーナツのようなもの)を食べて、モナと今後のことを話しました。

差し迫る危険の中、今中とモナが避難した先で食べたザラビアとミルクティー
「どこに行こうか?」「事務所には戻れないよな?」「空港も閉鎖されている」「そもそも出国ビザをまだ取得していないぞ」。そんな時、NGOが多数参加するワッツアップグループにある国際NGOから「ゲストルームに空室があるので、緊急の人はどうぞ」というメッセージが投稿されました。急いで連絡し、モナと2人で受け入れてもらうことになりました。部屋着姿で避難していたため、途中の商店で長ズボンを買い、慌てていて持ってくるのを忘れた携帯の充電器を買おうと探していると、状況を察した男性が「持ってけ」と手渡してくれました。お金を払おうとしても受け取ってくれません。こんな大変な状況下でも助けてくれる人々に感銘を受けました。
燃料施設からの火は1週間消えることなく、黒煙がポートスーダンの空にずっと漂い、毎日夜7時から早朝4時の間は、ドローン撃墜兵器の音が夜空に響き渡っていました。

滞在させてもらった国際NGOの屋上からは、燃料施設から立ち上る黒煙が1週間に渡って見られた

燃料施設の燃料タンクは中身が全て燃え、完全に破壊されてしまった
計画的でない停電は、高温多湿なポートスーダンでは肉体的・精神的にダメージをもたらします。モーターが動かないため屋上の貯水タンクに水を汲み上げられず、水を外部から購入しないといけなくなり、家計を圧迫します。鶏肉など冷凍保存が必要な商品が店頭から消えます。発電機を所有している飲食店はコストがかさみ、それを賄うために商品の値段を上げるしかありません。さらに夜7時ころからドローン攻撃が始まるため、稼ぎ時に店を閉めないといけません。航空会社や海運会社はポートスーダン発着便を運休し、運航する会社があっても保険料の値上がりのため運賃が跳ね上がります。ポートスーダンでは死傷者こそ公式には発表されていませんが、燃料供給の停滞により、住民の生活に大きな影響を与えました。
数千キロも移動可能と言われる高性能のドローンの登場により、もはやスーダンには安全な所はなくなったともいえます。ちなみに現在の戦闘においては国軍とRSFの両者とも、ドローン兵器を積極的に使用しています。
▶「【スーダン】ポートスーダンのドローン攻撃の影響と国際社会がすべきこと 」後編はこちら

スーダン事業現地代表/イエメン事業担当 今中 航
京都府出身。大学でアラビア語を専攻し、在学中にイエメンに留学。留学中に「アラブの春」と総称される民主化運動が始まり、ライフラインが脆弱化し、国が混乱に陥っていく様を目の当たりにする。卒業後は途上国・新興国の根幹を支えられるようなインフラ支援に携わりたいとの思いで、メーカーにて発電プラント事業を担当。退職後、現地の人々により近い距離で可能性が広がることに尽力したいという思いが大きくなり、2018年JVCに入職し、以降スーダンに駐在。イエメン事業立上げに参画し、2022年よりイエメン事業担当も務める。