REPORT

南アフリカ

ケアボランティアと保護者のケアの質を向上させるための訓練

皆さん、こんにちは!JVCインターン生のアリシアです。

今回のレポートでは、南アフリカの現地スタッフのドゥドゥさんに聞き取った、ケアボランティアと保護者のケアの質を向上させるための訓練の進捗状況をご報告したいと思います。ご興味のある方は、スカウトとカッブプログラム菜園づくり活動についても、追ってレポートをお届けいたしますので、進捗報告を是非ご覧ください!

「Drop-In Center」(DIC、こどもケアセンター)について

JVCは、「子どものケアを中心として南アフリカの社会的な悪循環を変えたい」という思いから設立された、リンポポ州の「Drop-In Center」(DIC、こどもケアセンター)という団体と連携しています。リンポポ州は、南アフリカの中でも特に医療・教育ケアの面で、取り残されている人々が多いとされる州です。その中でDICは、5−24歳の孤児または脆弱な青少年を対象とし、将来困難に直面しても生きていくための道を自ら切り開く力をもてるように、ライフスキル、性教育や社会教育等を提供している団体です。

このビジョンを達成できるよう、JVCはケアボランティアと保護者のケアの質を向上させるための訓練、スカウト活動、カッブプログラムと菜園づくりを含む、様々な啓発活動を行っています。

保護者向けの研修とは

DICに通っている子どもの多くがネグレクトを含む様々な課題を抱えています。子どもたちの保護者と協力しながら、ネグレクトの悪循環を止め、子どもケアセンター内外の子ども達の課題を特定、見落としなく対応できるよう、「Journey of Life」(人生の旅)という研修を行なっています。40名の保護者が2022年9月の研修に参加し、2023年度には2022年度の参加者とは別の保護者約30名に提供をする予定です。

保護者自身が子どものごろに虐待を受けていたので、虐待のことを「仕方のない当然なことだ」と考える傾向があります。多くの場合、例えば、働いたりギャンブルをしたりする際に子どもをひとりにすること、子どもに対する様々な自態度や行動が「ネグレクト」であることがわかっていません。そのため、ネグレクトが子どもにどのような影響をもたらしているのか知らず、むしろ家庭を支えていると信じています。保護者が知らないまま、子どもが性的虐待やいじめを受けている場合もあります。

これは、子どもが日々をどう過ごしているか、どう感じているかを確認したり、日常の会話をしたりしない結果、コミュニケーションギャップが生じるためです。

「Journey of Life」は子どもをお世話をする大切さ、より良い親になる方法を中心に教える研修です。まずは、子どもをひとりにさせないことが一番大事なことであると教えます。絆を築くことは、例えば食事を共にすることであり、日常会話であり、ただ一緒にいることがとても大切です。子どもは誰も聞いてくれないと思うので、何も言えずに苦しんでいます。しかし保護者が一緒に時間を過ごしたり、調子はどうか聞いてくれたりすると、子どもの抱える課題が以前より話しやすい環境になり、保護者として子どもを守る機会にもなれます。


(保護者訓練の様子)

南アフリカの現地スタッフによると、研修に参加した保護者は、研修後もDICのケアボランティアに子どもとの関わり方についてアドバイスを聞きに来るそうです。学校でも子どもの成績を尋ねる保護者の数も増えているそうです。保護者はお互いをサポートすべく、自分たちで作った「保護者ミーティング」で子ども達との対応をフォローアップすることにもしたそうです。DICはこれが子どもと親の良い関係づくりの始まりだと信じています。

ケアボランティア向けの研修とは

家庭でも学校でも酷い状況に直面することが多いからこそ、子どもが居場所があることを知るためにDICが子ども達にとって安全で楽しいところであることが非常に大切です。

この環境が提供できるよう、ケアボランティアは2021年から研修を継続的に受けています。この活動改善研修の目標は、ケアボランティアが子ども達に適切なケアを提供でき、年齢別に応じた活動プログラムを自分たちだけで継続的に実施できるようになることです。2022年5月にケアボランティアは子どもの人権の研修を受け、2021年度に行われた救急法研修の基礎的なスキルに基づく上級研修が2022年10月に実施されました。

2022年8月に、KTDという南アフリカのNGOがモニタリングし、ケアボランティアにアドバイスをすることにもなりました。研修機関KTD、JVC現地スタッフとDICのケアボランティアとの会議ではケアボランティアとともに、子どもに関する課題への解決策について一緒に考えました。活動の企画・実施に関するアドバイスを仰ぐこともでき、自分で活動を行う自信を与えています。

(活動に夢中な子どもたち)

ケアボランティアはカウンセリングの研修も2回受けています。子どもたちがどのような悩みを抱えているのかを知ることができるよう、何をどのように聞いたらいいのか、そしてセンター内で子どもたちにどう振る舞うできなのかについて学びました。そして、子どもたちが抱える課題をすべて自分たちで解決しなければいけないと感じるのではなく、他の適切な方に頼ってもいいことも学びました。

(カウンセリング研修に参加した後のケアボランティアさん)

(カウンセリング研修の様子)

研修が始まってから、ケアボランティアたちは、より熱心に、そしてより主体的にセンターの活動に取り組むようになり、子どもたちの活動に役立つ情報を探すようになりました。南アフリカの祝日をひとりで過ごさないよう、子ども達全員が一緒に遊べる活動を考えて、今年から行う予定です。

研修当初より、ケアボランティアたちによる子どもたちへの活動の計画や実施能力は、改善してきていますが、ゲームと遊びを結び付けて教える「プログラム」を開発することは未だ難しいです。そのため、2023年度では能力開発に注力し、JVCとの事業終了後も持続できることを目指しています。

スカウトとカッブプログラム菜園づくり活動の進捗報告の記事も順次掲載していきますので、是非ご覧ください!

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