REPORT

南アフリカ

南アフリカのスカウト・カッブプログラムって?

皆さん、こんにちは!2023年度JVCインターン生の佐野です。

今回のレポートでは、南アフリカの現地スタッフのドゥドゥさんに聞き取った、スカウトとカッブプログラムの進捗状況をご報告したいと思います。

菜園づくりケアボランティア・保護者のケアの質を向上させる訓練についてもレポートをお届けしていますので、進捗報告を是非ご覧ください!

「Drop-In Center」(DIC、こどもケアセンター)について

JVCは、「子どものケアを中心として南アフリカの社会的な悪循環を変えたい」という思いから設立された、リンポポ州の「Drop-In Center」(DIC、こどもケアセンター)という団体と連携しています。

リンポポ州は、南アフリカの中でも特に医療・教育ケアの面で、取り残されている人々が多いとされる州です。

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(ケアセンターで給食を食べる子供達)

その中でDICは、5−24歳の孤児・脆弱な青少年を対象とし、将来困難に直面しても生きていくための道を自ら切り開く力をもてるように、ライフスキル、性教育や社会教育等を提供する団体です。

このビジョンを達成できるよう、JVCはケアボランティアと保護者のケアの質を向上させるための訓練、スカウト活動、カッブプログラムと菜園づくりを含む、様々な啓発活動を行っています。

DICのスカウト・カッブプログラムとは?

日本でも実施されている「スカウト」のプログラムを南アフリカの子どもを取り巻く社会状況と課題に合わせてアレンジされた内容で、子供の年齢に合わせて内容や目的が定められていたり、野外でゲームを通じてチームワークやリーダーシップの育成をするプログラムも行っています。

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キャンプ形式の青少年リーダーシップ研修での様子)

併せて、「人を助ける大切さを教えること」を目的として地域活動も行っています。

センターの子ども達は地域内で一人暮らしするお年寄りの元を訪れ、掃除を手伝い、彼らが定期的にケアされているかを確認したり、小さな子どものいる施設に行き遊んであげたり、地域の汚れている場所の清掃活動を行ったりしています。

プログラムの目的

このプログラムの大きな目的は、彼らに必要なライフスキルを身につけること」

ここでいうライフスキルとは、自分自身を支える力、周りの人と支え合う力や自信をつけ、嫌なことをはっきりと断る力のことを指しています。

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(ケアセンターでの授業の様子)

このスキルを必要とする背景として、南アフリカでは、エイズ感染、食糧問題、アルコール・ドラッグ依存、虐待、10代の妊娠などの様々な社会問題があります。

これらの問題から子どもたちを守り、楽しい生活を送ってもらうこともこのスカウト・カッブプログラムを行う目的の一つです。

活動の様子

2022年4月からJVC主導で始まったスカウト・カッブプログラムは、現在でも毎週木曜と金曜に実施されています。

2022年の7月には青少年約120名を対象とした、5日間のリーダーシップ・ライフスキル研修が実施されました。

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(キャンプ形式の青少年リーダーシップ研修での様子)

ここでは「スカウト」のルールや野外での調理を通じてのチームワークビルディング、子どもの権利や責任についての学びが盛り込まれたゲーム、男女に分かれての性教育・ライフスキル研修を行いました。

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(スカウトプログラムでの様子)

研修後には一部の青少年が、合同で研修に参加をした他団体の青少年らとWhatsAppグループを作り、情報交換しながら勉強を教え合ったり、これをグループに参加していない他の青少年と共有をして勉強をサポートし合うなど、彼ら自身による積極的な取り組みが見られています。

またDICでも日常的に青少年らによる「勉強会」が開催されています。

さらにDICでスカウト・カッブプログラムの実施を導入するようになって以来、それまでケアボランティアに対して反抗的だった子が素直になったり、学校を休みがちだった子が日々通うようになったり、喧嘩ばかりしていた子がそれを止めるなど、青少年らの態度・行動のポジティブな変化もありました。

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(円になって並び、真剣に話を聞く子供達)

スカウト・カッブプログラムはこのような変化と同時に、新たな発見をもたらしました。

例えばプログラムの研修中に子どもが家庭の事情をケアボランティアに打ち明けたり、センターの子どもが新たにDICに連れてきた友人が孤児であることが判明したりすることがあります。

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(スカウトプログラムでの様子)

またプログラム活動としてゲームを行うなかで文字が書けない青少年を特定し、家庭訪問等のフォローアップをすることで保護者からのネグレクトを止めるなど、DIC内外で子ども達が抱える課題を確認し対応することが、より一層できるようになりました。

 

子ども達の保護者からも、

「研修から帰ってきた子どもたちが、家の手伝いを率先して行うようになった」

「服装に気を付けるようになった」

「寝坊と学校の遅刻がなくなった」

「宿題や読書をするようになった」

など、プログラム後の子どもたちの行動の変化について活発なコメントが出されました。

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(ケアセンターで活動プログラムに取り組む子どもたちの様子)

さらにプログラムの質の維持と向上のために、毎月1回、研修機関KTD(他NGO団体)がDICを訪問する形でスカウト・カッブプログラムのモニタリングを実施しています。

JVCとしてもケアボランティアとともにプログラム内容を検討し、定期的にモニタリングを実施しています。

このような活動の中で2022年10月末時点ではすでに、新しく通い始めた子ども含め約150名(うち約60名が青少年)がスカウト・カッブプログラムに継続的に通うようになりました。

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(スカウトのTシャツを着て、嬉しそうに並ぶ子供達)

そして2022年12月の研修機関KTDによるモニタリングでは、37人の子どもがテストを受け、一部のグループは銅賞、グループ全体では銀賞を貰うことができました。

KTDは、「このプログラム開始後6か月以内にこの賞を取ったグループは他にいない、この達成度に感動した。」と話し、子どもたちの行動や態度の変化にも喜んでいました。

 

インタビューの中でも現地スタッフのドゥドゥさんから、

活動によって子ども達の関係性が良くなってきているのを感じます。お互い気にかけて、支え合う様子が見られるようになりました。また良い変化は子ども達だけではありません。

DICのケアボランティアにも大きな進展がありました。

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(ケアセンターのケアボランティアの様子)

彼らはよりプログラム運営に関心を持つようになり、準備だけでなく、子どもに教えられるような情報を探してきたり、DICでの活動を向上させるために一生懸命頑張っています

今度の南アフリカでの休日には、子ども達が一人で家にいる代わりに何かアクティビティをして時間を過ごしてはどうだろうかとの提案もありました。」

というお話があり、このプログラムの恩恵の大きさを改めて実感しました。

編集後記

私にはあまり馴染みのない言葉である「スカウト・カッブプログラム」が、南アフリカでは子ども達の行動変化や成長にこんなにも影響するものだということに驚きました。

写真からも彼らが活動を心から楽しんでいるのが伝わってきます。

これからDICの子どもたちがどんなことをして、何を学んでいくのか、今後のさらなる活動レポートが楽しみです!!

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