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スーダン

【スーダン】戦闘勃発から1000日を経て ーカドグリの包囲が遂に解除ー

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JVCが長年活動を実施している南コルドファン州カドグリは、一貫して国軍が支配を守っていましたが、周囲は即応支援部隊(RSF)などの武装勢力に包囲され、他の都市とつなぐ幹線道路が封鎖。物資不足と物価高騰により、住民の生活は過酷を極めていました

情勢の悪化と退避

2025年の年末にはRSFが西コルドファン州全域を掌握し、隣接するカドグリもいつ陥落するのかという不安から、毎日のように何百人単位で市民も避難をするようになっていました。極めつけには、カドグリで国連平和維持活動(PKO)に従事する国連アビエイ暫定治安部隊(UNISFA)の基地にもドローン攻撃があり、6名のバングラデシュ兵士が犠牲になりました。

UNISFAも撤退を決定しましたが、安全だと思われていたPKO基地への攻撃は衝撃的で、JVCカドグリ事務所の現地職員も国連や他のNGO団体職員とともに国連機での退避を余儀なくされました。現地職員のイスマイルは語ります。

現地職員・イスマイル

「カドグリから南スーダンのワーウ、そしてマラカルまでは国連機で移動し、そこからは陸路でレンクを経由し(スーダン南部の都市)コスティまで辿り着きました。戦闘後、家族は離散しており、母はコスティ、妻子はハルツーム、姉は武装勢力のいる地域に。警察官である兄弟やその家族は公務員のためカドグリから退避することが認められていません。戦争は人々を引き裂き、家族や地域を分断します。避難の手続きや調整をしてくれたJVCには心から感謝しています。

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コスティでイスマイルと33か月ぶりに再会した副代表のモナは、次のように振り返りました。

「スーダンの戦争が勃発してから、既に1000日が経ちました。影響を受けた人々にとってはとても長い時間です。家族は全てを置き去りにし、子どもたちは普通の生活を奪われました。私は人道支援従事者ですが、私も逃げなければなりませんでした。ある夜、RSFは私の家を襲い、全ての物を奪い、学位や幼少期の思い出の品まで燃やし、料理の燃料として使ってしまいました。まるで戦争が、私が誰であるか、地域のためにしてきた全ての活動を消し去ろうとしているかのようでした。


JVCはカドグリでは2010年から活動しており、教育や給水支援、生計向上、子どもたちの保護など、脆弱な立場に置かれた住民への支援を行ってきました。しかし、状況はあまりにも危険になり、一時的に撤退せざるを得ませんでした。プロジェクトを止めることは単なる業務の終了ではなく、長年築いてきた友人たちを見捨てるような、個人的な痛みを伴う決断でした。私は、支援を約束していたあの子どもたちを残して去るのが本当に悲しかったです。

昨年来日したモナ(写真中央)、JVC事務所にて職員やボランティアさんたちと

例えば、アルノーマンという少年は、足を失ったにもかかわらず毎日学校に通い、確かな決意を持っていました。そしてムサブという少年は、地域の農家を助けるために農業技師になることを夢見ていました。


母親たちは私たちがもたらした変化にどれだけ感謝しているかを伝えてくれました。しかし戦争は家を奪い、思い出を奪い、子どもたちの未来さえも奪っていきます。1000日が過ぎた今、ただ待つことはさらに苦しみを増すだけです。学校に通えない子どもたちの未来は、失われる危険にさらされています。


この状況を憂う私たちは沈黙してはいけません。どこから始めればいいのか?と大きすぎるニーズや不正義を前に立ち尽くすこともありますが、戦争を止め、学校や生活の基礎が戻り、子どもたちが夢と尊厳を取り戻せるよう支援を届けることが急務です。」

それでも支援の手をとめない

こうした厳しい状況下、退避する住民が続出する中でも、私たちは子どもたちが学校に通い続けていることを確認しました。しかし、子どもたちの手にはノートやペンがありません。そこで私たちはカドグリに残ったスタッフと協力し、緊急的に2校で文房具の支援を行いました。JVCが運営してきた補習校から正規の学校に進学した子どもたちの顔もあります。改めて、カドグリの人々の強さ、教育に対する強い意思を目撃したのです。

教室に入ってきた先生たちに元気よく挨拶す子どもたちの様子

ノートとペンを受け取る児童

ついにカドグリ包囲解除

2月3日、スーダン国軍はカドグリに入城し、2年以上にも渡った包囲を解除しました。RSFからのドローン攻撃は続いていますが、今後、幹線道路が開通し、物資や支援物資が届くことが予想されます。


カドグリではスムード(صمود)=「忍耐の精神」が強いことで知られています。何度も戦争を経験し、戦闘・避難・食糧不足など過酷な環境下においても、住民は踏ん張って生き抜く不屈の精神を持っています。


しかし、いつまで市民が戦闘によって苦しみ続けなければいけないのでしょうか。真の意味で人々が解放され、歩み出す一歩に、私たちは寄り添い続けていきます。

上空から見た雨季のカドグリ

参考文献

執筆者プロフィール

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今中航

京都府出身。大学でアラビア語を専攻し、在学中にイエメンに留学。留学中に「アラブの春」と総称される民主化運動が始まり、ライフラインが脆弱化し、国が混乱に陥っていく様を目の当たりにする。卒業後は途上国・新興国の根幹を支えられるようなインフラ支援に携わりたいとの思いで、メーカーにて発電プラント事業を担当。退職後、現地の人々により近い距離で可能性が広がることに尽力したいという思いが大きくなり、2018年JVCに入職し、以降スーダンに駐在。イエメン事業立上げに参画し、2022年よりイエメン事業担当も務める。

●スタッフインタビュー「JVCの中の人を知ろう!~今中航さん編~」

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