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治安悪化のもう一つの理由

JVCアフガニスタン現地代表 谷山 博史
2003年2月27日 更新

UNHCR襲撃事件の余波

先月の末、UNHCRの車両がホギャニ郡の幹線で襲撃を受け、武装警備員2名が死亡しました。この事件によって私たちの活動は大きな影響をうけました。JVCは巡回医療活動で週に一度ホギャニ郡のメムラという地域を廻っていますし、2月には伝統産婆のトレーニングを11村を対象に行う予定になっていました。しかしそれらは現在すべて中止せざるを得なくなっています。

1月28日UNHCRは2台の車でジャララバードからソルクロード、ホギャニ、シェルザッドを通ってヒサラク郡に向っていました。ホギャニ郡のメムラ付近で先頭を走っていたセキュリティーガードの車が車道に放置されている死体を発見。車を止めて確かめようと思ったところを何者かに発砲されました。セキュリティーガード2人は応戦しましたが、1人は即死、1人重症を負い病院に運ばれましたが死亡しました。この銃撃戦で襲撃犯を含めて6人が死亡したと伝えられています。事件に遭遇したHCRの後続車はすぐに引き返し、HCR側の犠牲者は雇われたセキュリティー・ガード2人だけでした。

この事件でUNはUN関係者のホギャニ郡、ヒサラク郡への移動を禁止しました。この通達が解除されるまでにはかなり時間がかかると予想されます。UNはその直前にホギャニ郡、ヒサラク郡への移動制限を条件付きで解除したばかりでした。UNがこの地域で高度の警戒を敷いているのは芥子栽培と関係があります。UNは、1月からナンガルハル県のシンワリ郡、アチン郡、ホギャニ郡、ロダット郡、ソルクロード郡などで芥子栽培の根絶キャンペーンが始まるため、これらの地域では治安が悪化する恐れがあるので警戒するように呼びかけています。別情報ではすでにホギャニ、アチン、シンワリでは、政府のキャンペーン担当官と農民の衝突が何度も起こっているようです。政府の方針を批判するリーダーが農民をけしかけているとも聞きます。

芥子栽培撲滅キャンペーンと治安の悪化

アフガニスタン産のアヘンは2002年に生産高世界1位に返り咲きました。タリバン時代に厳しく禁止されていたため2001年度作付け面積は7,600ヘクタールにまで減少しましたが、タリバンが駆逐されてから作付け面積が急増し、2002年は74,000ヘクタールに達しました。最近の国連(UNDCCP)の発表では2002年の生産量は3770トンに達したと報告しています。強制的な禁止が一時的な効果しかもたらさなかったということです。長い戦乱を生き抜いてきて、今でもいつ戦争になり、難民化しないとも限らない不安定な状況で、農民が少しでも確実な生活を保障を得ようと考えば、芥子栽培に走るのも理解できないことではありません。

アフガニスタンの芥子栽培の生産高の第二位を占めるのが私たちの活動地ナンガルハル県です。ナンガルハル県の県知事は芥子栽培撲滅キャンペーンによって3,200ヘクタール(全除去面積10,260ヘクター中)の芥子畑を除去したとその成果を誇っています。ナンガルハル県知事に限らずアフガン政府が芥子栽培撲滅に積極的なのは国際社会に向けてのアッピールです。アメリカはアヘンの流通がテロ組織の資金源になることを警戒し、イギリスなどのヨーロッパ諸国はアフガン製のアヘンがほとんどヨーロッパに流通していることから、自国での麻薬問題の解決をアフガンでの取り組みでアッピールしようとしている向きがあります。芥子栽培が生産農民の生活のレベルとかけ離れた政治的な問題になっているわけです。

巡回医療活動でホギャニ郡に行くときは芥子栽培について口にすることはタブーです。巡回医療チームのMtgで固く申し合わせていました。外部の人間が芥子について質問したりすれば政府や国連の手先と思われかねません。アフガニスタンでの援助活動が他の国と違って際立って難しいのは、人道援助の中立性が政治的な要因によって損なわれる危険が常につきまとうからです。芥子の問題に限らず、ホギャニ地域では米軍との関連が疑われると活動がしにくくなるのではないかと私は考えています。これは根深い問題です。

米軍の軍事作戦と治安の悪化

昨年12月の末ホギャニ郡のジルガ(評議会)の代表DR.ファロックと話をしているとき、彼は突然米軍への非難をはじめました。県知事が全県ジルガを召集した時の話です。会場に言ってみると知事と並んで米軍の大佐が陣取っていました。その大佐が突然ファロックにホギャニでの芥子の禁止は進んでいるかと聞きましたが、彼はそれには答えず、米軍が1カ月前にミムラに空爆して罪のない農民を殺したことを非難したそうです。彼によると、大佐は「ソーリー」と言うだけで何の補償も口にしなかったと言います。Dr.ファロックは最後に「ホギャニにはタリバンもアル・カイーダもいないんだよ」と付け加えて言いました。

これには背景があります。昨年の7月、ホギャニ郡を拠点とする軍閥ハジ・ザマンが米軍とザマンのライバルであるパシャー人の将軍ハズラット・アリの攻撃を受けて駆逐されるという出来事がありました。ザマンはタリバンに対する戦争で米軍に協力して功を上げましたが、協力したはずの米軍に追い出されてしまったのです。米軍はタリバン掃討作戦を有利に展開するために軍閥を利用したり、放逐したりしていますが、それが地元民の疑心暗鬼と反感を生む原因になっています。そして本来軍事とは関係ないはずのNGOの人道活動までがそうした地元民の反発の対象になる危険性があるのです。(→下記の【注】を参照)

前回の報告では、これまで平和だったヌーリスタン県の治安が悪化し、外国人が入りにくくなったという報告をしました。妻の由子が1月はじめに2人のドイツ人の視察に同行しようとしたところ、UNから待ったがかかったという話です。その後の情報で、ヌーリスタンではやはり米軍による大規模な戦闘が行われていたことが分かりました。1月半ばのUNの情報では、米軍の軍事作戦によってヌーリスタンの治安が悪化しているとのことでした。特にUN関係者が米軍と行動する場合は最高度の警戒をするようにと呼びかけています。つまり米軍のおかげで逆に襲撃される危険が高まるということなのです。

米軍の新戦略PRTsの危険性

NGOの人道援助と軍事作戦との境界が曖昧になることで人道援助そのものが危態に瀕するということの最たる例が現在米軍が押し進めているPRTS(Provisional Rehabiritation Teams)の新戦略です。アメリカは軍事作戦が一向に成果が上がらないため米軍よる復興援助の実施と援助機関による人道援助の調整を任務とする PRT( Provincial Reconstruction Team)を全国8箇所に設置するという計画を立てたことは前回報告しました。すでにガルデイズとバーミアンで活動が始まっています。

この計画は米軍への地元民の反感をなだめると同時に直接の人道援助活動やNGO等との連携を通してより効果的な情報収集をすることが目的だと思われます。この計画は昨年12月にオスロー会議で合意された新たな援助調整システム (Consultative Group)を完全に無視しているため、復興支援の効果を高めるためというのが表向きの理由は完全に信憑性を欠いています。このままでいくと人道援助に携わるNGOの活動は軍活動と混同され攻撃の対象にもなりかねません。アフガニスタンで活動する77のNGOの連合体ACBARは、人道援助と軍事活動は明確に分けるべきだとして、PRTsを批判するポジッション・ペーパを発表しました。

(このポジションペーパーに関心のある方は、JVC調査研究担当の高橋までご連絡ください。電話番号:03-3834-2388、メール: k_tkhs@jca.apc.org です。なお、JVCは米軍のPRTs新戦略に関するシンポジウムを計画しています。この件についても高橋までお問い合わせください。)

【注】ハジ・ザマン派とハズラット・アリ派との戦闘と米軍の関与

ハジ・ザマンはナンガルハル県のホギャニを拠点とする軍閥で、ハジ・カジール前ナンガルハル県知事の政権を支えていたコマンダーの一人である。彼は今年の7月に同じくハジ・カジールのコマンダーの一人であったパシャイー人のハズラット・アリと米軍の攻撃を受けて国外に逃亡した。彼が米軍の攻撃の対象になったのは、アリカイーダとつながりがあるというのが表向きの理由であるが、真実のところはわからない。しかし、ハジ・ザマンとハズラット・アリがライバル関係にあったことはよく知られており、アル・カイーダの一味だという誹謗を受ければ米軍の掃討作戦の対象になることも事実である。

現在はハズラット・アリはナンガルハル県の軍と警察をほぼ完全に握っている。ハズラット・アリはナンガルハル県北部とラグマン県との県境にあるカシムンド地方の出身のパシャイー人である。パシャイー人は、東部地域の少数民族で、ナンガルハル県の人口比では1%にも満たない。このパシャイー人の軍閥がナンガルハル県の軍と警察を牛耳っていることに対して、人口の90%以上を占めるパシュトゥーン人の間には反感がある。パシュトゥーンの人間にパシャイーのことを聞くと、田舎出の教育のない連中が銃を手に勝手なことをしているという不満がもれる。彼らが力を持ちえているのは米軍が後ろ盾になっているからで、米軍がアフガニスタンから手を引けば、パシュトゥーの反発が形となって現れるかもしれない、と危惧する人もいる。

ではなぜハズラット・アリが米軍の後ろ盾を得ているのか。それは米軍がパシュトゥーを信頼していないからだといわれている。アル・カイーダとタリバンの残党はパシュトゥー人の森に逃れた手負いのトラであり、米軍から見ればパシュトゥーすべてが信頼のならない内通者だとみなされている可能性がある。だとすれば、米軍のアル・カイーダとタリバンの掃討作戦は信頼のならないパシュトゥーより少数民族のパシャイーを駒に使ったほうが安全である。そう米軍が考えても不思議なことではない。


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