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2016年4月18日

南スーダンはどうなっているのか?
-自衛隊「駆け付け警護」の議論に思うこと(2)

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2016年5月17日 更新

前回より続く)

秒読みに入った統一政府の樹立

統一政府樹立の障害となった二つの大きな理由のうち、28州分割については前回に書きました。

もうひとつの理由は首都ジュバ「非武装化」の遅れです。といっても完全に非武装にするという意味ではなく、和平合意によれば、政府軍がジュバから25キロ圏外に撤退し、それに代わって、政府と反政府派の双方の兵士によって構成される「首都警備隊」が配置され、治安維持にあたることになっています。

しかし、3月になっても政府軍のジュバからの撤退が完了しません。反政府派は「これでは統一政府には参加できない」と言い続けてきました。

こうして、本来は1月が期限だった統一政府の樹立は遅れに遅れ、3月も後半になると「和平合意は既に破綻したのでは」という声も聞かれるようになりました。

しかし、4月に入って事態が動きました。
28州の問題が解決されたわけでなく、政府軍の撤退も完全には終わっていないようですが、反政府派は「首都警備隊」を構成する部隊をジュバに派遣。そして、リーダーである元副大統領リアク・マチャルのジュバ入りがついに秒読みに入っています。

ジュバ到着後、リアク・マチャルは副大統領としての職務を開始し、これをもって統一政府が動き出すことになります。

自衛隊が任務を拡大したら...

このように、南スーダンの情勢は「落ち着いている」訳ではないものの、「内戦が激化している」とも言えません。内戦の当事者である現政府と反政府派との間では統一政府の成立が見込まれ、小規模な衝突こそあっても、両者の本格的な武力衝突は統一政府が破綻しない限り考えられないでしょう。舞台は既に、戦場から首都での政治的な駆け引きに移っています。 しかし一方で、28州分割に反発するそれ以外の武装グループが各地で勢力を持ち、政府軍との衝突も起きています。以前に比べて紛争地域は拡散しています。

そして何よりも、和平合意にも関わらず、各民族グループの間での敵対意識、憎しみは和らいでいません。200万人を超える難民・避難民の大半は、戦闘が収束しても、「敵対」する民族グループからの襲撃を恐れて今も自宅には戻れないのです。そして残念ながら、国連の保護施設の中でさえ決して安全ではないことをマラカルの事件は物語っています。

これまでの話から、「やはり自衛隊が南スーダンで活動するのは危険すぎる」と感じられる方が多いと思います。任務拡大に伴って避難民保護施設の警備などを担当するようになれば、マラカルのような事態に直面するかも知れません。自衛隊が、相手が武装した避難民・住民なのか、施設に入り込んだ民兵なのか、さらには政府軍なのかも判別できないまま発砲せざると得ない事態に追い込まれることはあり得ます。

「危険」「危険でない」ではなく、今の南スーダンに対して日本に何ができるのか?

自衛隊には一発も撃たせず、ひとりも殺させず、そして自衛隊員をひとりも死なせない。
自衛隊の任務拡大、あるいは自衛隊派遣そのものに反対するこうした主張は、日本の国内の議論としては当然のものだろうと思います。

しかし、私のように現地での生活が長くなると(それでも決して現地の人々と同じ目線に立つことはできないのですが)、いったい現地の人々にとってはどうなのだろう、と考えてしまいます。

日本人にとってではなく、南スーダンの人々にとって、日本の自衛隊が一発も撃たず一人も殺さないことが、何か特別な意味を持つのでしょうか。そんなこととは関係なく、現地では毎日数え切れないほどの弾薬が使われ、そして多くの命が失われているのです。

平和憲法の意味を積極的に受け止めるならば、それは単に自衛隊を派遣しないということではなく、日本は「武力の行使」以外のどのような方法で、南スーダンのような内戦や紛争の解決に貢献できるのか。いや解決とまで言わないまでも、現状を少しでも良くするために何ができるのか、それを考えることではないでしょうか。

南スーダンが「危険」「危険でない」の議論が国会でされましたが、日本に何ができるかを考えるなら、その国の現状をもっと注意深く見ていかなくてはなりません。まがりなりにも和平が合意され、辛うじて統一政府が樹立されそうですが、新政府の組織的・財政的基盤はあまりに脆弱です。何よりも、統一政府を構成する両者のリーダーである大統領サルバ・キールと副大統領リアク・マチャルは互いに会話すらしないと言われ、当事者同士の不信感は全く解消していません。これでは、国民に和解を呼びかけることもできないでしょう。28州分割の問題も、今後の大きな火種です。

非軍事面でPKOに貢献する可能性も

統一政府を支えて、この国を立て直すために、日本にできることは少なくないと思います。リーダーの二人に直接和解を話しかける外交チャネルを日本は持っているのではないでしょうか。日本が主導して今年ケニアで開催されるTICAD(アフリカ開発会議)の場を活用しても良いかもしれません。欧米や中国と比較して日本は「中立的」というイメージを持たれているのですから、それを活かすべきです。

PKOについても、最近のPKOの任務は、停戦監視や市民保護だけでなく、内戦後の国づくりにおける法律や行政、警察機構の整備、兵士の武装・動員解除、復興支援など、実に多岐にわたっています。南スーダンにおいては内戦の勃発とともに市民保護に活動の重点が置かれていますが、統一政府が成立すれば、国家の再建と平和の定着に向けた活動が再びPKOの任務に大きく位置づけられるでしょう。

日本は、こうしたPKOの非軍事面での活動のための文民の派遣で貢献できるはずです。文民警察官の派遣という選択肢もあります。私は以前、インド人のPKO文民警察官と同じ宿舎で生活していたことがありますが(よくカレーをご馳走になった)、彼は現地の警察官への人権教育などを行っていました。社会の治安回復のためには、人々の間での和解の促進とともに、人権や非暴力の考えを理解した警察官の存在も重要ではないでしょうか。

PKO参加=自衛隊の部隊派遣というイメージがありますが、自衛隊の任務を拡大し武器使用基準を緩和することではなく、もっと別の方法でPKOを通じた南スーダンの平和構築に貢献する道筋があること、むしろそのほうが日本ならではの貢献ができるであろうことを多くの人に知って欲しいと思います。

最後になりましたが、私たちNGOには現地で何ができるのでしょうか。

国と国との間の協力とは別に、南スーダンの人びとの命を守り、和解や地域社会の再建に向けて直接に支援を行うのが私たちの役割です。現に欧米を中心とする多くのNGOが活動を行っていますが、残念ながら、日本のNGOの活動は非常に限られています。昨年10月の記事(「南スーダンの首都、ジュバを訪問して(4)-誰を「駆け付け警護」するのか?-」)にも書きましたが、日本政府は治安状況を理由に日本人NGO職員の現地への渡航を厳しく制限しており、活動が非常にやりづらいものになっているのが実情です。

そうした中、JVCは隣国スーダンにおいて、国境を越えて逃れてきた南スーダン難民に以下のような支援を行っています。

南スーダン難民へのJVCの支援

現在、スーダンの南コルドファン州で、南スーダンからの難民に対する支援を行っています。対象としている難民は、本文中にも登場するシルックの人々。2013年の内戦勃発以降、故郷のアッパーナイル州から戦火を逃れてスーダン国境を越え、グレイドという村で草ぶきの家を作って生活を送る約百世帯が対象です。南スーダン難民とグレイド村の住民の両方が使うことのできる給水施設を国際機関(国際移住機関:IOM)が設置し、JVCはその利用・運営方法や衛生管理についての啓発・研修活動を行っています。

シルック難民が生活する地区シルック難民が生活する地区
難民と地元住民を対象に、寸劇と音楽、スピーチで衛生管理の大切さを伝える難民と地元住民を対象に、寸劇と音楽、スピーチで衛生管理の大切さを伝える

(次回「スーダン日記」では、昨年12月の出張時に見た首都ジュバの様子などをご報告します)

お知らせ:一時帰国する今井の「出前報告会」はいかがでしょうか?

「スーダン日記」執筆者、今井は1年に3回程度のペースで日本に一時帰国しています。その機会に、皆さんのご近所、学校、サークルの集まりなどに今井を呼んで、「出前報告会」はいかがでしょうか。セミナーや学校の授業からお茶を飲みながらの懇談まで、南スーダン情勢とPKO、紛争地での人道支援、スーダンの生活文化などをお話しさせていただきます。日時や費用、また首都圏以外への出張についても、まずはご相談ください。
メール:info@ngo-jvc.net  電話:03-3834-2388

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