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2016年4月18日

南スーダンはどうなっているのか?
-自衛隊「駆け付け警護」の議論に思うこと(1)

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2016年5月17日 更新

「駆け付け警護」など、自衛隊への新たな任務の付与を可能にする安全保障法制が3月29日に施行されました。

その前後、日本の新聞社や雑誌社から、メールや国際電話で私に取材がありました。南スーダンの国連平和維持活動(PKO)に派遣されている自衛隊が、任務拡大の最初の対象になると予想されるため、南スーダンの現在の状況はどうなのかという質問です。

「いま、南スーダンでは内戦がますます激しくなって、たいへん危険な状態になっているのではないかと思うのですが...」
記者さんは、だいたいそう尋ねてこられます。
「いや、そんなこともないですよ」
私がそう答えると、
「ええっ?」
皆さん、ここで面食らうというか、少々驚かれるようです。
「そっ、そうなんですか?」

日本の国会論議の中で政府は、南スーダンは内戦状態ではなく、首都ジュバの治安は安定しているといった見解を示しながら、自衛隊の任務拡大には問題がないと答えています。一方で野党は、南スーダンはまさに内戦状態であって状況は悪化しているとして、任務拡大は危険だと主張しています。

私に取材をしてくる新聞・雑誌の多くは安全保障法制に批判的な立場を取っているので、私から「南スーダンはこんなに危ないんだ」という情報を得ようとして連絡をくださるわけですが、そこで少し「拍子抜け」の答えを聞くわけです。

もちろん、私としても「南スーダンの情勢は安定しています」と言うつもりは毛頭ありません。情勢は不安定この上ないのです。しかし、内戦が激しくなっているかというと少し違います。昨年8月に和平が合意されて以降、それが履行されているとは言い難いのですが、少なくとも当事者間での大規模な戦闘は回避される傾向にあります。

今回の「スーダン日記」では、私が取材に答えてもスペースの関係で紙面には掲載されることがない南スーダンの情勢や、自衛隊の任務拡大に関する日本での議論について思うことを少し書いてみたいと思います。

なお、私は南スーダンではなく隣国のスーダンに駐在しており、南スーダンには昨年12月に出張しています。この記事は、出張時に耳にした情報や、インターネット上のニュース、国連や南スーダンNGO関係者からの報告を元に執筆していることをご了解ください。

和平合意の締結後、遅れる統一政府の樹立

南スーダンの内戦は、独立してからまだ2年しか経っていない2013年12月に始まりました。

当事者は、大統領サルバ・キールを中心とする政府及び政府軍と、それに対抗する元副大統領リアク・マチャル率いる反政府勢力(以下、反政府派)です。政権内部の権力闘争がエスカレートしたこの内戦は、主要な民族グループ間、特に大統領の出身民族であるディンカと元副大統領の出身民族ヌエルとの敵対感情を煽ることとなり、双方の武装グループが互いに相手側の居住地・集落を襲撃するなど、多くの惨劇を生み出しました。何万人もの命が奪われ、2百万人以上が家を追われて難民・避難民となっています。

昨年8月、周辺国や国際社会からの強い圧力を受けて和平合意が成立しました。その後しばらくは各地で戦闘が収まらず「やっぱりダメか」と思われましたが、一転して12月には戦闘が下火になり、反政府派の代表団が首都ジュバを訪問。現政府と反政府派による統一政府の樹立に向けて、閣僚ポストの配分などの折衝が始まりました。

しかし、2月から3月にかけて統一政府樹立の動きは停滞し、和平合意は破綻の危機に瀕します。
その理由のひとつは、和平合意の成立後に現政府が決定した「南スーダン28州への分割」です。そしてもうひとつの理由は、和平合意に示された「首都ジュバの非武装化」が進まないことです。

28州分割が大きな障害に

元来、南スーダンの国土は10州から構成されています。それを再分割して28州にするとは、統一政府ができる前にそんな重要なことを現政府が勝手に決められる訳はありません。反政府派は猛反発、国際社会からも批判の声が上がりました。

では、どうして28州に分割したのでしょうか?
きちんとした理由は説明されていないのですが、現地のNGO関係者は「大統領派のディンカ民族に有利になるように、民族別の線引きで国土を分割し直した」と分析しています。端的な言い方になりますが、ほぼディンカ一色の地域は州として一括りにする。ほぼヌエル一色の場所も同様。しかし両者が入り組み、混ざり合っているような地域では、必ず州内でディンカが多数派になるような形で線引きをします。つまり、実際の居住地域よりもやや広い地域が政治的な意味で「ディンカの州」になるわけです。これはヌエルだけではなく他の民族グループに対しても同じで(南スーダンには数十の民族グループがあるとされます)、非ディンカのグループは、より狭い土地に押し込められることになります。

批判が高まる中、和平合意の仲介役である周辺国連合は、南スーダン政府に対して「28州分割案の実施を凍結しなさい」と勧告。政府はこれを受け入れる姿勢を示しましたが、しかし口先だけでした。実際には、各州の知事を任命するなど28州制は着々と実行に移されていきました。

当然ながら反政府派の反発は強く、代表団をジュバから引き揚げるなどの対抗策に出て、統一政府樹立の動きはストップします。

新たな対立と紛争地域の拡大

この28州分割は、先に述べたように、ヌエル民族にとってだけではなく、他の非ディンカのグループにとっても不利となるものでした。そのため、反政府派(元副大統領派)だけではなく各地域の民族グループがディンカに対抗。いくつかの地域では武力衝突が発生し、紛争は拡散していきます。

その顕著な例が、アッパーナイル州です。
南スーダンの北東部に位置し、ナイル川が南北を貫くアッパーナイル州には、ディンカ、ヌエル、シルックという三つの民族グループと他の少数のグループが居住しています。28州分割において、この州は3分割されました。ナイル川の西岸がシルック、東岸はディンカ、そして南側はヌエル。しかし、シルックはナイル東岸にも相当数が居住しているのです。それにも関わらず、その土地はディンカ多数派の州に組み入れられてしまいます。そして、新しいディンカ多数派の州では、ディンカ民族以外を公務員から排除する、土地所有の権利も制限するなどの動きが出始めました。

シルックの女性。国境を越えスーダンに逃れて難民となった人々をJVCの活動地、南コルドファン州にて撮影。シルックの女性。国境を越えスーダンに逃れて難民となった人々をJVCの活動地、南コルドファン州にて撮影。

これにシルックが反発しないはずはありません。
シルックを中心とした武装グループは、政府そして反政府派からも独立した勢力として、28州への反対を掲げて動きを活発化させていきます。シルックとディンカとの対立は深まり、そんな折に発生したのが、アッパーナイル州の州都マラカルにおける国連の避難民保護施設への武装襲撃事件でした。

マラカル避難民保護施設への襲撃、その時PKO部隊は

2月17日に起きた襲撃事件は、PKO部隊が戦闘に巻き込まれたケースとして日本のマスコミでも大きく取り上げられたようです。

事件が起きたのは、国連が設置したPoC(Protection of Civilians)と呼ばれる避難民保護施設の内部です。戦火により家を追われた人々、あるいは他の民族グループからの襲撃を恐れて自宅に戻れない人々を保護する施設で、シルック、ディンカ、ヌエルなどの人々が生活していました。

詳しい経緯は分からないものの、発端は、施設内のディンカのグループが斧などを手にシルックを襲撃したことのようです。殺戮、放火が行われる中、シルック側も反撃。さらに争いはエスカレートし、施設の外部から銃火器が持ち込まれ、武装したグループも入り込み、最後は政府軍の一部までもが施設内に入り込んで襲撃に加わり、多くの犠牲者が出ました。

ショッキングだったのは、この襲撃が国連施設の内部で起き、市民を保護するはずの施設が戦場と化したことです。もちろん、そこにはPKO部隊が駐留していました。PKO部隊はなぜ事態を防げなかったのか、いったい何をしていたのか、批判と疑問が沸き上がりました。

PKO部隊の対応の詳細についてはハッキリした情報がありませんが、少なくとも威嚇射撃(空に向かって撃つ)を行い、事態の沈静化のために催涙ガスを撃ち込んでいます。そして戦闘の場面からは離れ、隣接する国連の建物に向かって逃げた避難民の保護にあたっていたようです。

この事件ほどの規模ではないにせよ、南スーダンのPKO部隊が、武装したグループによる衝突や襲撃、あるいはその未遂に遭遇することは珍しくなくなっています。それは軽武装した避難民や住民の場合もあれば、もう少し本格的な武装グループの場合もあるでしょう。市民保護の任務に当たる以上、こうした事態に対処することは避けられなくなっています。

次回に続く)

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