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2016年11月24日

ガザでの不自由さをほんの少し体験して
思うこと

パレスチナ現地調整員 並木 麻衣
2016年11月24日 更新

11月15日火曜日、パレスチナの「独立記念日」の朝。起きてみると、インターネットが切れていた。仕方がない、後でカフェに行ってメールを受信しよう、と諦める。ここはJVCガザ事務所、国連スタッフたちも滞在する、ガザの中でも一等地のマンションの一室だ。世界10カ国で活動するJVCの事務所の中でも、唯一オーシャンビューを臨める場所だと思う。

浄化設備が整わないために少し塩の味がするシャワーを浴びてから、お気に入りのカフェ・レストランへ向かう。海岸を間近に眺められる、サラーム・レストランの1階。高いレストランが並ぶ海沿いでも、地元のガザっ子たちにとって敷居が比較的低めな店で、よく身なりのきれいなカップルや若者グループが水タバコを吸いに来ている。メニューを一通り眺めてから「カフェ・ラテをお願い」とウエイターに頼むと、「無いよ」とシンプルな一言が返ってきた。
 「じゃぁ、エスプレッソは?」「無い」「どうして?」「昨夜から、電気が来ないんだ。ガソリン式発電機を使って最低限の電気だけで回しているから、エスプレッソ・マシンに回す電気がない。お湯を湧かして作れる飲み物はあるよ」
 仕方がないので、ネスカフェ(インスタント・コーヒーで作るカフェオレ)を頼む。何かさっぱりしたものが食べたくて「フルーツ・サラダはある?」と頼んでみると、これまた「無いよ」の一言。オムレツもない。どうやら冷蔵庫もやられているらしく、食材をストックしていないとのこと。やむなく頼んだギリシャ風サラダは、何だか生ぬるかった。

ネットも弱い。幾つか入ってくる微弱なWi-Fiを切り替えながら、何とか東京事務所とのメールのやり取りをこなす。何とも不便だが、ここガザに暮らす友人たちに比べたら、ずっとずっとマシなのだろうと思う。何しろ私の行動範囲では、弱くてもまだ発電機の電力はあるのだから。

昨日の、車の中でのやり取りを思い出す。ガザ北部の事業地からの帰り道、パートナー団体「人間の大地」の保健師たちとの会話だ。「私たち、寝るのはとっても早いのよ。7時には寝ちゃうもの」と言っていたのは、36歳のワーキング・マザー、ハイファさん。電気がないからね、何もすることがないの、と笑う。
 ガザの中では、一日12時間から16時間は停電している。日本でも震災後は「計画停電」があったが、ここではそれが日常だ。しかも日本と違って、電気が届くかどうかは「出たところ勝負」。事前に知らされる計画は、全く当てにならない。

2014年のガザ戦争で発電所が破壊されてから、ガザではずっとこんな状態が続いている。パレスチナ支援NGOが形成している「EWASH」チームのレポートによれば、ガザ内の発電所が供給できるのは、ガザ全体の電力量のたった3割ほどだ。残り約1割の電気をエジプトから、約6割をイスラエルから購入して、人々は何とか暮らしている。それでも需要を半分も満たすことはできず、やむなくガザでは計画停電が実施されている。
 ハイファさんによれば、彼女が暮らすハンユーニスの一角では、早朝になると電気が来ることが多いらしい。そのため、電気がついた瞬間を察知しては早朝から洗濯機を回す。生活必需品となっている携帯を充電するのも、テレビを見るのも、電気が届いた時間に限られる。夜中に電気が届く地域では、人々はどうしても宵っ張りになってしまうらしい。過去には当たり前のように使えた電気が今では貴重なものとなり、人々の生活を振り回している。

 

問題なのは、彼らが「元から電気の無い生活を送っていたのではない」ということだ。ガザは電気も水も無い、絶対的な貧困地域であった訳ではない。確かに貧困地域は存在しているが、冷蔵庫も水道も一応はある。都市部では日本と同じように電化製品を使う暮らしを送ってきた。
 アフリカやアジアのスラムでは電気すら無いのだから、贅沢を言うな、と言われてしまうかもしれない。それでも、振り返ってみれば、私たち日本人はどうなのだろう。私たちは、彼らのように我慢できるのだろうか。
 しかも、ここで電気のある生活が「当たり前」ではなくなってしまったのは、度重なる戦争と非人道的なまでの封鎖という「政治の過ち」が原因だ。発電所再建のための建材を輸入できれば、そして燃料を運んでこられれば数年で解決する問題が、「軍事転用の恐れがあるから入れられない」といったイスラエル側やエジプト側の理由で先送りにされている。その皺寄せを負わされているのが、ハイファさんのような一般市民ということになる。

 この状況に関して私たちがすべきこと、言うべきことは一体何なのか......。そんなことを改めて考えながらネスカフェを飲んでいたら、プツリという音を立ててレストランの電気が切れた。照明とBGMが消える。そして少しの間が開いてから、幾つかの明かりが点灯する。BGMは諦めたのだろう、消えたままだ。
 レストランのマネージャーがやってきて、「全て順調ですか? 何か必要なものはありますか?」とはにかんだ笑顔で訊いてきた。電気の他はね、という言葉を飲み込んで、「満足よ」と答える。政治的な欠陥を補うように、ここでは人々が優しい。彼らの「当たり前」を、一緒に取り戻したいなあ......と思わせるのに十分な、人の温かさとたくましさ。ここガザにいる時だけでも、この不便さをほんの少しでいいから共有しておきたい。そう思う。

参考:現地だより「『戦後』のガザ:電力・下水処理に関するレポートをお届けします

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