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2013年9月16日

ラマダン、種は間に合うのか

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2013年9月17日 更新

前回から続く

ティロ村近くの避難民向け住居での種子の配布は、8月6日に実施することになりました。いえ、なんとしてでも8月6日に終わらせなければなりません。
なぜか?

それは、その翌日にはラマダン(断食月)が明け、イードと呼ばれるイスラムの祝祭日に入ってしまうからです。この日を逃したら、配布は1週間以上も遅れてしまいます。そもそもギリギリのタイミングでの配布計画ですから、それ以上の遅れは許されません。

種子の調達先は、南コルドファン州のおとなり、北コルドファン州の州都エル=オベイドにある種苗会社です。8月3日、トラックで出荷したとの連絡が入りました。

エル=オベイドからカドグリまで約300キロ。バスならば5時間の道のりです。しかしトラックは事情が違います。ここは政府軍と反政府軍との紛争が続く戦地。道路上には何か所もの検問所が設けられ、トラックは停車させられて積荷の検査が行われます。不審物がないかどうか、軍・警察が目を光らせているのです。

それに加えて、トラックにはJVCの種子だけでなく様々な荷が混載されています。各駅停車のように沿道の町で停車しては、積荷を降ろしていくのです。

8月5日。翌日の配布に向けて、避難民向け住居の人々への連絡も済ませ、準備はすべて整いました。あとは種の到着を待つだけ・・・しかし午後になってもトラックはカドグリに到着しません。

「いったいトラックはどこを走ってるんだ?」
 ハルツームから電話を掛ける私も焦っています。

「午前中にクウェーク(カドグリから40キロ)に到着したんだけど・・その後は運転手の携帯電話がつながらないんだよ」
電話口で答えるのは、カドグリ事務所スタッフのタイーブ。彼の呑気な感じに私は少しムッとしましたが、ここは、じっと待つしかないようです。

夕方になり、やっと運転手に連絡が取れました。
「いま、カドグリの手前の検問所に入ったって」
「そうか。じゃ、もうすぐ到着だな」

そして7時頃。
「トラックが町の広場に着いた」
「よし、じゃあすぐに荷下ろしだっ」
と意気込む私に、

「ちょ、ちょっと待ってくれよ。その前に食事を取らないと・・」
忘れていました。
ラマダン中ですから、JVCスタッフも運転手も、早朝から何も食べていないのです。

7時を過ぎるとちょうど日没。1日の断食が解かれ、人々が集まってイフタールと呼ばれる食事を取る時間が訪れます。私がいる首都ハルツームでも、モスクから流れる声を合図に、クルマの流れが途絶え、町はつかの間の凪のように静まりました。

待つこと約1時間。午後8時過ぎに作業再開です。積み下ろしのため、トラックを広場からJVC事務所に移動させなくてはなりません。

ところが、
「こりゃダメだ。トラックが立ち往生しちゃったよ。今朝の雨で事務所の前の道がぬかるんでいて・・それに暗くてよく見えないし」

タイーブの話では、あたりはもう真っ暗。そして月明かりは・・いや、月明かりなんてあるわけありません。新月に始まり新月に終わるラマダン。今は終わりの直前ですから、月は暗いのです。

「道路がずぶずぶで、オレの靴まで泥だらけで台無しだ・・・今夜はあきらめて引き返したほうがいいって運転手が言っているけど、どうする?」
「わかった。荷下ろしは、明日の朝にしよう」
「よし、わかった」

そして、配布当日の朝。
事務所周辺の道路はまだ相当にぬかるんでいます。
「事務所での荷下ろしは無理だ。広場に停めてあるトラックから、JVCがレンタルした小型トラックに直接荷物を積み替えて、そのまま配布場所に向かうことにする」
それはいい考えです。タイーブも、なかなか機転が利くものです。
「今から配布場所に向かうぞ」

あっという間に人々が配布場所に集まってきたあっという間に人々が配布場所に集まってきた
ソルガムの袋を開けて配布準備をするスタッフ。なぜかJVCのロゴが逆・・ソルガムの袋を開けて配布準備をするスタッフ。なぜかJVCのロゴが逆・・

なんとか、ラマダンが明ける前の配布に間に合いました。
配布場所となった避難民向け住居の一室では、人々が列を作って種子を受け取っていきます。主食用のソルガムとトウモロコシ。ペースト状にして調理する落花生。オクラは貴重な栄養源です。そして、生野菜として食べることもできるウリ。計5種類の種子を配ります。

空き家になっている住居の中で配布が行われた空き家になっている住居の中で配布が行われた

避難民向け住居230世帯のうち、214世帯への配布が終了しました。残り16世帯は、まだ入居していないようです。
配布を終えたタイーブが一息ついていると、住居棟の向こう側で畑仕事をしている人々の姿が目に入りました。

「えっ・・まさか?」
思わず近づいてみると、主婦たちが今受け取った種の袋をそのまま畑に持ちこんで、種まきをしているでありませんか。

配布から約10日後の訪問、作物が芽を出した配布から約10日後の訪問、作物が芽を出した

「雨が降って土が柔らかくなっているからね。ちょうどいいのさ」
長い柄のついたショベルを手にした主婦が教えてくれました。タイーブの靴を台無しにした雨も、ここでは恵みの雨です。
それにしても、配布場所からそのまま畑に直行なんて、予想もしていませんでした。

「みんな、種を待っていたんだ・・」
そう思うと、うれしくなります。タイーブは満足して、避難民向け住居を後にしました。
いよいよ明日でラマダンは明け、1週間にわたる祝日です!

(終わり)

【おことわり】
現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井(首都ハルツームに駐在)が執筆したものです。

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