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【イエメンレポート】身分を証明するものがないと何が起きるのか?

身分を証明するものがないと何が起きるのか?

この記事を見てくださっている方のほとんどが、戸籍のほか、パスポートや運転免許証など、何かしら自身の身分を証明するものを持っているのではないでしょうか。

私たちが活動するイエメンでは、8年もの間続く紛争の影響で、自らの存在を証明する書類を所持することができず、苦しい立場に置かれている人たちが大勢います。紛争下で、着の身着のまま逃げるしかないような状況において、証明書を持って逃げることができる人の方が少ないでしょう。

公的な証明書がないばかりに、避難先での援助を受けられず、子どもたちは教育を受けることができなかったり、辛い状況が続いています。

先日、私たちの頼もしいパートナーである現地NGO・NMOのメンバーが、今回の支援対象となる方々に、避難当時の様子や現在置かれている状況を直接伺いましたので、その一部をご紹介します。

バスマさん(40歳)

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3年前、住んでいた家が砲弾の直撃を受けました。所持していた家畜をすべて売り払い、自分と家族の安全のために、夫と5人の子どもたちとともに、避難民キャンプに避難してきました。

紛争の影響で、公的な証明書を取得できていません。登録所は遠く、身分証明書の手続きには時間もかかり、お金もかかります。しかし、身分証明書がないと、援助物資を受け取ることができず、県をまたいだ移動もできないのです。また、出生登録証がないと子どもたちは学校に通うことができず、教育を受けることもできません。

もしも身分証明書があれば、移動の制限はなくなり、物資援助を受けられるなど、自分や家族の権利が守られます。また、子ども達の学校への入学など、生活の様々なことがスムーズになるでしょう。何より、子どもたちに大きなチャンスを与えることができます。

イティダールさん(35歳)

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5年前、戦闘や地雷のある地域から、何とか避難民キャンプに逃れました。その時に、唯一の収入源であった家畜を失いました。夫は精神病を患っており、行方不明になりました。

今は自分1人で、4人の子どもを育てています。

身の回りの書類は、避難の際に家に残してきてしまいました。出生登録書がどのくらい重要なのか理解していなかったのと、夫の病気の影響で、子ども達が生まれた時に登録に行くことは出来ませんでした。

身分を証明するものがないことで、援助機関からの現金給付を受けられないだけでなく、心細さや疎外感を感じています。子どもたちは学校に通えず、教育を続けることができません。出生登録書を取得して、子どもたちが学校に通えるようになることを願っています。

イッサームさん(19歳)

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自宅が砲撃を受けました。

安全な場所を求めてその場を離れざるを得ず、3年前、16歳の時にここに逃れてきました。身分証明書は、発行にお金がかかるのと、手続きの困難さから、自分も家族も持っていません。

身分証明書がないと、仕事に就くことが難しいです。支援団体から現金給付を受けることもできないし、県をまたいだ移動もできません。

私にとって身分証明書は、家族を養うためにどうしても必要なものであり、また、私たちの基本的な権利を守ってくれるものです。

 

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このようにイエメンの活動地では、自らの身分を証明できないことで、教育のほか、避難先で生きるために必要な支援さえ受けられないのです。

「人間らしい生活ができない状況である」と言っていいでしょう。

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