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【スタッフのひとりごと・伊藤解子】コーヒーの発祥地・イエメンで嗜むシャイ

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モカコーヒーの名前の由来は、コーヒー豆の輸出港として栄えたイエメンの街「モカ」。コーヒー好きと自認しつつ、イエメン事業に関わるまで知らなかった豆知識。昔、エチオピア原産のコーヒーノキがイエメンへ渡りました。深夜までお祈りするイスラム教徒の間で覚醒作用がある飲み物として広まり、さらにアラブ世界、欧州へ輸出されたのです。元から生産量が少なかった上に、現在では紛争のため流通が困難になり、生産者も減って、日本でもこだわりカフェでしかお目にかかれない希少品・イエメンコーヒー。

いよいよイエメン出張。現地でお目にかかるコーヒーに期待は高まるばかり。けれど、ホテルの朝食では インスタント・コーヒー。訪問先で振る舞われるのはスパイス入りアデン・ティー。「食後はシャイ (ミルクティ)だよね」 というアデンの人々。主な滞在先アデンはイギリス領だったため、インドの影響から紅茶の方が好まれていました。それはそれで乾燥気候の中を歩き回った身体に染み入るおいしさで、迷わずスパイスを購入して帰国。

振り返ればカフェで何気に飲んだあれがイエメン・コーヒーだったのか。自分が大袈裟に構えていただけで、現地では普通に流通していたようです。

月日は流れ、東京のイエメン大使館へ。すると、事前に大使自ら調合されたというスパイス入りコーヒーが目の前に。「美味しいでしょう?」と自信たっぷりの大使に見守られながら一口。かつて期待した通りのシチュエーションでいただいたコーヒーは、「日本からの支援は大歓迎!」という大使の笑顔とセットでイエメン・コーヒー初体験の思い出の味となりました。

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イラスト・かじの倫子

執筆者:伊藤解子

北海道出身。 大学卒業後、英国大学院留学、東南アジアでの民間企業勤務を経て1999年に教育協力NGOの東京事務所に入職。 カンボジア、ラオス、タイ、ビルマ/ミャンマー難民キャンプ、アフガニスタンでの教育支援、国内外の緊急救援、教育協力NGOネットワーク(JNNE)での政策提言・調査研究業務に携わる。 カンボジア、パキスタン現地駐在、東京事務所海外事業課長、ラオス事務所長を経て2013年に退職。 以後、主に二国間援助機関による東南アジア、南アジア、中東、アフリカでのODA事業評価に従事。 2018年よりJVC理事。 2020年7月より現職。

※この記事は『Trial & Error 2023年秋号 No.354』発行年:2023.10.20に掲載されたものです。Trial & Error』は、会員の方向けに年3回発行しているアジア、中東、アフリカなどでの活動や国内活動を知ることができる会報誌です。ぜひご覧ください。

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