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日本 カンボジア

カンボジア:閉鎖完了!これまで本当にありがとうございました!

こんにちは。カンボジア事業現地代表の大村です。今日は最後の更新です。

JVCカンボジア事業は、2007年から少しずつ対象地域や対象者を変えながら、最後の事業地となったシェムリアップ東部のチークラエン郡で活動を続けてきました。継続した活動を通じて対象地域では食料確保手段や食料資源の多様化が見られ、JVCの実施する農業研修に意欲的な住民も多く、研修参加者の7割以上が食品加工や食用の多年生植物の栽培を開始するなど、一定の成果を得ていました。

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(毎回人気だった地元食材を使用した食品加工研修)

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(自給の強化を目的とした農業研修)

一方で、「実践ができているのは水が比較的容易に確保できる人」に限られており、水の確保が困難な住民にとって、家庭菜園や食品加工など生業強化のための研修を実施・提供しても実践が始められないなどの課題が一部残されていました。

そこで、2019年からは家庭菜園研修と並行して改めて水源の調査を実施し、それぞれ複数回にわたる村内会議を経て、ため池や井戸を掘削してきました。

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(掘削する場所を決める村内会議には毎回多くの住民が参加した)

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(完成したため池と近所の皆さん)

水源を増やすと同時に、既に家庭菜園が軌道に乗っており自家消費用のほかに外部への販売を希望している住民に対しては、村にいながら現金収入を得られるきっかけを提供してきました。

具体的にはシェムリアップ市街地の飲食店や、車で5時間程の首都プノンペンに工房を持つハーブティーブランドと提携し、野菜や加工品の生産、出荷をおこないました。2年間で葉物や香草、ハーブティー用のドライハーブの出荷までを住民自身の手で行えるようになり、その生産や出荷はJVCの活動終了後も続けられています。

詳細はこちらの記事をどうぞ
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2020年に新型コロナウィルスが流行し、卸先の飲食店が休業となった時には、住民自身で価格や品目を調整し地元での販売に切り替えるなど、外部状況の変化にしなやかに対応する姿もありました。

「菜園の野菜の売上が安心感につながる。これまでタイで出稼ぎ中の息子からの仕送りをあてにしていたが、今は依存せずに済んでいる(50代女性)」という声や、「野菜が売れるようになってからは、コロナで収入が安定しない娘に私が仕送りすることもある(40代女性)」という声が次々に聞かれるようになりました。

2021年、プロジェクト終了時に実施したインタビューでは、家庭菜園に取り組んだ世帯のすべてが「生産量があがった」と回答しました。研修参加前に平均約2種類だった生産品目は、約13種類になり、「寝て起きて食べるだけの暮らしより、今は食べ物があって収入もあって、農業のやり方を尋ねにくる人もいる。それが嬉しい」という女性や、「野菜が上手にできて、食べ物に困らないばかりか、販売までできるようになった。あそこの畑がすごいから見に行こう、という人も現れて、村の中で存在が認められていると感じます」と語る70代の男性の話を聞くと、JVCの活動が食(農)を基盤に村の有機的な繋がりの活発化に貢献した一面もあったように思います。

同じ場所BEFORE/AFTER:一念発起して空き地を耕し、ゼロから菜園にした事例

(同じ場所BEFORE/AFTER:一念発起して空き地を耕し、ゼロから菜園にした事例)

新型コロナウィルスの影響で出稼ぎから戻ってきた人の中には、「勤務先の休業が続き、やむなく村に戻ってきた。かつてJVCの研修で学んだ菜園づくりを再開し、野菜をつくることに成功した。昔学んだ技術が今、役に立っている」という人もいました。JVCが続けてきた研修技術や知識は、こうした非常時にいつでも取り出せるお守りのような存在にもなっています。

活動終了時、村の皆さんからは「JVCがいなくなっても、ここにJVCがいて、日本から支援してくれた人がたくさんいたことを伝え続けたい。そのためにも、まずは自分が実践を続けていく」という力強い言葉を聞くこともできました。

終了にあたっての声はこちらから

(終了にあたっての声はこちらから)

事業地出身のスタッフのポクは、JVCの農業関連書籍を引き継ぎ、長年の夢であったブックカフェを開店しました。「自分が小さい頃、本に触れる機会がなかった。子ども達が気軽に寄って、知識を得る場所を提供したい。自分がJVCで得た経験を次世代に還元したい」と語る姿は本当に頼もしいものでした。

 集落唯一のブックカフェ!

(集落唯一のブックカフェ!)

そして2021年3月、JVCは41年にわたるカンボジアでの活動を終了しました。当然ですがJVCの活動の区切りとは関係なく、現地の方々の暮らしは続いていきます。数年後に花開く活動成果があるかもしれないし、現時点で順調に見えることがうまくいかなくなることもあるかもしれません。今後も1人の人間として、お世話になったこの地域と繋がり続け、活動で関わった村の皆さんに定期的にコンタクトしていきたいと思っています。

東京本部からの異動で駐在員となり、図らずもカンボジア事業最後の駐在員となりました。日本から見ていた以上に、現地にはたくさんの涙や笑いがあり、そして、逆境を諦めることなく進む人びとの強さがありました。「JVCのおかげで人生に楽しいことが増えた。自分の力で子どもの教育費を出すことができるようになった」と語る女性が流した大粒の涙を忘れることができません。顔の見える関係を築くことができる小さなNGOだからこその活動が、今後もJVCにあることを願っています。

活動終了から約1年、2022年の2月に正式に現地行政とのやりとりを終え現地事務所を閉鎖し、私も日本に帰国しました。これまで長きにわたりカンボジア事業を応援してくださった方々に、改めてこの場を借りて御礼申し上げます。

またどこかでご縁があり、皆様にお目にかかれる日を楽しみにしています。本当にありがとうございました。

(大村真理子)

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