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「パレスチナに父はいないんだ」―エルサレム銃撃事件から今まで、現地で見えるもの―

パレスチナ現地代表 山村 順子
2017年8月18日 更新

こんにちは、話題沸騰のエルサレムに住み始めて5ヶ月目になりました、現地駐在員の山村です。こちらでは連日中東らしい暑さが続き、汗を大量にかきながら「ショーブ、ショーブ(暑い、暑い)」というのが挨拶代わりになっている毎日です。

旧市街ヘロデ門の前でお祈りの時間前に列をなすムスリムたち。旧市街ヘロデ門の前でお祈りの時間前に列をなすムスリムたち。

今から7月18日の金曜日(イスラム教徒にとっての礼拝日)の朝に起きた、エルサレム旧市街にあるアル=アクサー・モスクの敷地内での銃撃事件は、未だに現地に大きなインパクトを与えています。本事件はエルサレムに住む人たちだけでなく、パレスチナ・イスラエル全域に住む人たちに大きな衝撃を与え、今もパレスチナ各地でこの事件に起因した怒りの連鎖があとを断たず、近年でも群を抜いてエルサレムには緊張が高まっている状況です。特にこの事件のあとにヨルダンのアンマンで起きた、イスラエル人によるパレスチナ人青年射殺事件は、「アル=アクサー・モスクでの事件よりも許せない!」と言うパレスチナ人もいるほどで、彼らの燃え上がる怒りにさらなる油を注ぎました。ほどなくしてアル=アクサー・モスクに設置された金属探知機は撤去されたもの、パレスチナ人たちの怒りは未だ収まる気配がありません。
また、7月27日(木)にも同地区で大きな衝突があり、136人を越える負傷者が出ていると伝えられています。※注(1)やはり、自分たちの聖地をイスラエル当局にコントロールされる、ということは、パレスチナ人たちのプライドを深く傷つけ、暴力に走るきっかけを与えてしまっているのだと思います。ただ、暴力に走るケースだけでなく、大半のアラブ人たちは「イスラエルにコントロールされるアル=アクサー・モスクに入る」ことへの抗議として、モスクに入らずにモスクの前で、皆で祈るという行動をとっていました。これはパレスチナ人たちによると「非暴力の抵抗」だそうです。

事件が起きるたびにあちらこちらが通行止めになる旧市街付近。事件が起きるたびにあちらこちらが通行止めになる旧市街付近。

旧市街に住む30代の男性は言います。「どうして僕たちの聖地をコントロールしようとするんだ。これはパレスチナ全域のアラブ人に怒りをもたらす行為だ。怒ったパレスチナ人たちは何をするかわからない。断言するよ、絶対これが良くなることはない。ここ数年で一番良くない状況になる。イスラエルがこのままの姿勢でいるのであれば、状況はどんどん悪化する。彼らがバラを出せば僕らもバラを出すさ。でも、こんなことをされて黙っていることはできない。アルアクサには1日20万人ものムスリムがお祈りしにくることだってあるんだ。それを1人1人金属探知機で検査するなんて現実的じゃない。狂ってるよ。これがイスラエルのやり方なんだ」

また、パレスチナでは夏休みになると、学校で「サマーキャンプ」というものが開催されますが、私が訪れたJVCの事業地、ヒズマー(分離壁・検問所の近く)の学校の一室では、女生徒が2人でなにやら大きなキャンバスに油絵を描いていました。よく見ると、分離壁の一部が丸くくり抜かれており、その穴の奥にはそびえ立つアル=アクサー・モスクが見えます。その前でお祈りをしている複数のアラブ人のおじさんたち。「私たちのアル=アクサーは閉まらない(閉めさせない)」という想いを込めて描いたのよ、と笑顔で答えてくれました。(写真参照)

また、ガザの人たちはこの状況をどのように見ているのかも気になって、ガザ在住のパレスチナ人たちに聞いてみたところ、次のような答えが返ってきました。

「アル=アクサーのために闘っているのはエルサレムのパレスチナ人だけよ。私たちもエルサレムに行くことができないし、他のイスラーム諸国も助けない。そしてアル=アクサーがこんな状態なので、だんだん世界のイスラーム教徒たちはアル=アクサーを大事な存在として認識しなくなくなっているのよ。イスラエルにコントロールされているイスラム教の聖地なんておかしいでしょう。それがとても悲しいわ。こうしてアラブがどんどん分断されていってしまう。特に産油国は大国に忠実な飼い犬のようになってしまっている。同胞であるはずなのにパレスチナ、シリアなど困っているアラブ諸国のために何もしない。自分たちだけリッチになっている。きちんとイスラームの教えに従う人がどんどんいなくなっているように感じるわ。本当のイスラームはどこへ行ったのかしら」(50代女性)

「ヨルダンで起きた事件は本当に許せないものだった。イスラエルのニュース、欧米のニュースはパレスチナ人の若者による"スタビング"が最初にあって、それに対してイスラエル人が射殺したというけれど、目撃者はイスラエル人しかいないんだ。その情報だけを信じろと言っても難しい。そもそも、若いヨルダン人たちを殺すことはないと思う。足を撃てばいいじゃないか。なぜ何度も急所を撃って殺さないといけないんだ。人間として許せることではない。彼らイスラエル人は常に"憎しみ"と"恐怖"に支配されている。あまりに臆病なんだ。彼らのマインドは本当に良くない。いいイスラエル人がいることももちろん知っているのだけど、今回の事件は本当に許されることではない・・・」(50代男性)
このスタビングがあったかどうかに関する見方に関してですが、私がインタビューをしたパレスチナ人たちは全員、「若いアラブ人は何もしてないのに殺されたんだ!」と声を揃えて言っていました。「海外の大手のニュース記事を見たら最初にスタビングがあった、というような書き方をされていたけど、スタビングが本当はなかった、という情報はどこで知ったの?」ととあるエルサレム在住のアラブ人の中年男性に聞いてみると、「SNSでそう流れているよ。ニュースはまだ見ていない」との返事。思い返せば世代を問わず、日々、facebook等様々なSNSを用いてパレスチナ人どうしで情報交換しているのを目にします。そもそも、目撃者がイスラエル人しかいなかった、という時点でアラブ人たちはその人の証言を疑い出します。「証拠がないのよ。こんな状況でどうやって彼の言うことを信じたらいいって言うの?」と。

こういった状況が続くと、パレスチナ人たちは一層孤独感を深めるのではないか、と心配になります。「パレスチナには父がいないんだ。僕らを守ってくれるオーソリティ(権威)なんて世界中どこに行ってもない。例えば日本人は外国にいたって日本大使館が日本人を守ろうとするだろう?パレスチナは国として存在できていないから、なんの保障もないまま僕らは生きていかなきゃならないんだよ。これが現実さ」(20代男性)

これは、かつて2008年の戦争の前後にイスラエル兵によって酷い攻撃を受けた一家の長男が笑顔で語ってくれた言葉でした。一番下の妹をこよなく可愛がっている優しい兄の顔を持つ彼は、近々結婚するそうです。希望に満ちたはずの20代の若者が、「自分たちを守るものはなにもない」という感覚を持たねばならない、というのはどういうことなのだろう・・・と彼の家がかつてイスラエル兵に占拠され、ぐちゃぐちゃに荒らされた際の写真を見ながら、しばらく掛ける言葉が見つかりませんでした。
せめてもの救いは、その家族が皆とても人間的に素晴らしく、団結力があり、人に対する優しさを忘れていないことでした。彼らに対して私たちは何ができるのか―。こうしてニュースにもならない、そして声もあげられない沢山の人たちの想いがあることを常に心にとめ、活動を続けていこうと思います。

パレスチナでの支援活動、パレスチナからの発信は、市民の皆様からのご寄付に支えられています。郵便局やクレジットカードなどで、ぜひご協力ください。現在は、特にガザ地区での子ども栄養失調予防事業のための資金が足りない状況にあります。現地のためにお預かりし、大切に使わせていただきます。
※寄付はこちらからお願いします。入力画面で募金先を「パレスチナ」にご指定ください。


※注(1)APF通信による

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