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2016年8月14日

ガザのトンネル
‐イブラヒムの死について

パレスチナ現地代表 金子 由佳
2016年8月16日 更新

8月9日、ガザ市シュジャイヤで掘られていたトンネルが崩壊して、作業に携わっていた8人が怪我をしたというニュースが流れました。また13日には同じように作業に携わっていた1人がトンネル内で感電死したというニュース(リンクはこちら)がありました。こうしたトンネル崩壊や掘削による事故はガザでは度々起こり、封鎖以降関連の事故で亡くなった人は、2014年までに400人に上ると言われています。

ガザのトンネルの種類は2つあります。1つ目は、ガザの封鎖された経済を支える目的で、物資を密輸するためにエジプト国境に作られたトンネル。もう1つはイスラエルとのゲリラ戦に備えて、ガザの軍人たちがガザ全域に掘った軍事用のトンネルです。それぞれの数は数百とも数千ともいわれています。

2013年、エジプトのムルシ政権が倒れて以降、エジプトはガザを冷遇、エジプト国境に掘られた密輸用のトンネルは、エジプト軍によってほぼ破壊され、今ではほとんど残っていないと言われています。その影響でガザ経済は益々冷え込んでいます。また、後者のトンネルは、2014年のイスラエルのガザ攻撃の理由とされ、攻撃の際に同じく数多く壊されたと言われていますが、未だに新しいトンネルの掘削作業は各地で続いていると言われています。こうした中、イスラエルはガザを囲う壁を、地下数十メートルまで伸ばし、一切のトンネルがイスラエルに届かないように予防措置に踏み切ったという話もあります。

ガザは2007年に封鎖されて以降、誰一人イスラエルかエジプトの許可なく域外にでることはできません。それに加えて、壁が地下にまで伸ばされるのだとしたら、トンネルからイスラエル側に出る事も出来ず、軍事的にそうしたトンネルが一体どれほど意味を成すのか。

いや、或いは確かにゲリラ戦には有効かもしれませんが、市民が住む町の下にこうしたトンネルを掘ると言うこと自体、ガザの軍部が民間人を盾にしているとも思え、私は到底賛成もできません。「ガザの市民の間で、ガザの安定と平和を願う声が高い中、矛盾するようなこうしたトンネル掘削を、何故軍は続けるのだろう?」と、よく疑問に思います。

先々週、知人の遠い親戚であった25歳のイブラヒムがトンネルの落盤によって亡くなりました。イブラヒムは奥さんと子どもの3人家族、ささやかながら温かい家庭を持っていたそうです。彼はトンネル掘削作業員の先頭にいて、落盤が起きた時、彼のお兄さんを含む他の作業員は何とか助け出されましたが、彼はあまりに奥に進んでいたために助かりませんでした。実際、彼が地中から発見されたのは落盤から2時間も経った後だったそうです。窒息死する瞬間までの数十秒、彼はどれ程長く感じただろうか・・・何を想っただろうか・・・と考えると、本当に胸が詰まります。

気さくで温厚な性格の彼は、近所の人にも家族にもとても好かれていたそうです。しかし、何故温厚な彼が軍事トンネルなど掘っていたのか?と私が問うと、知人は、「彼に仕事が無かったからだ」と言いました。イブラヒムの給料は月々200㌦(2万円ぐらい)、そんな安い給料で、危険が伴う作業を続けていました。「好き好んで軍事用のトンネルを掘っていたわけではない」と。

ガザの失業率は常に4割を超えています。大学を出たとしてもまっとうな仕事に着ける人は殆ど居ないと言えます。そうした経済不安の中、男性たち(特に既婚男性)は、家族を支えなければならない使命感が強くあり、何としてでも仕事を探そうとする傾向があります。男性が家族を支えるというのはアラブ社会では一般的な発想で、また、そうした背景の中でガザの封鎖が続き、戦争が度々起きて、ガザの各政党の軍事部への就職は、ガザの名誉と家庭を支える格好の就職先になるわけです。

この様な男性の心理を利用しているのか、ガザの軍部も第2、第3のイブラヒムを求めて人を雇い続け、若い男性の多くが、危険の伴う軍事部への就職に流れていきます。イスラエルの封鎖も非難されるべきですが、こうした経済的、政治的な困窮を見越して若い男性を求め続けるガザの軍部にも非常に問題があります。イブラヒムの死を忘れないために、ガザの政府も軍事的な闘いと言う道を捨てて、福祉の充実に舵を切る時期に来ていると私は感じます。 

イブラヒムの死を追悼するポスター(ご家族に危険が及ばないように写真をぼかしています)イブラヒムの死を追悼するポスター(ご家族に危険が及ばないように写真をぼかしています)

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