2013年2月の記事一覧
(前号から続く)
ムルタ中地区のシエハ(住民リーダー)、ジブリルさんの家は幹線道路の近くにありました。ブロック塀で囲まれた庭には鉢植えの植物が並び、門の脇に植えられた木には真っ赤な花が咲き乱れています。
トチャ集落のシエハ、トゥトゥさんを迎えて、奥さんがソルガムや落花生、ササゲ豆を炒めた特製のおやつをふるまってくれました。
「さっそくだけどジブリルさん、共同菜園のことなんだが」
トゥトゥさんがそう話し始めると、ジブリルさんが
「その話なら、菜園委員会のメンバーを呼んで一緒に相談したほうがいいな」
と言って、委員会の中心メンバーであるルドワンさんを呼びに行かせてくれました。
しばらくの間、おしゃべりとおやつを楽しんでいると、ルドワンさんがやってきました。彼は菜園予定地の地主のひとりでもあり、土地のことをよく知っています。
(前号から続く)
乾季になってバオバブの大木はすっかり葉を落としているのに、それでも木陰には村人が集まって、いつものようにおしゃべりを楽しんでいます。ここは、ムルタ村の中でも最も東寄り、丘陵地の懐に抱かれたトチャと呼ばれる集落です。
人々は、元々はカドグリから南に20キロほど離れた山中のトチャ村に住み、その一部がこの地域に移り住んだと言われます。今でも集落の中ではトチャの言葉が飛び交っています。避難民が多く住むムルタ北地区の訪問(前号、前々号の記事)を終えてから数日後、JVCスタッフはこのトチャ集落を訪れました。
バオバブの木の脇でクルマを降りると、スタッフは村人に挨拶をしました。
「こんにちは、JVCです。シエハのトゥトゥさんはいますか?」
集落を束ねるリーダーは、この地域では「シエハ」と呼ばれます。トゥトゥさんはここトチャ集落のシエハです。
やがて、トゥトゥさんがやってきました。「ジャラビーヤ」と呼ばれる白いガウン状の服を着て、日除けのために麦藁帽をかぶっています。
「おお、JVCか。まあ、座りなさい」
周りの人たちも一緒に車座になって話が始まりました。
(前号から続く)
ウドゥ村出身者の一角を離れ、しばらく歩くとまた何軒か草ぶき屋根の家が並んでいます。その間を抜けると、土壁のしっかりした家の脇に、ありあわせの材料で作った小屋が立っていました。木材の骨組みに、大きな麻袋やビニール袋を広げて天井にしています。避難民の一家が住んでいるのでしょうか。
「こんにちは。誰かいますか?」
返事がありません。もう一度大きな声で「こんにちは」と叫ぶと、裏手から人の声がしました。
そちらに回ってみると、庭を駆け回る子供たちの傍らで、母親らしい女性がヤギの世話をしています。片隅では、おばあさんなのでしょうか、年配の女性が腰かけてくつろいでいます。ひょうたんで飲んでいるのは、ソルガム酒(穀物から作る醸造酒、アルコール度は低い)でしょう。
住民集会での話し合いを経て、ムルタ村での共同菜園プロジェクト(乾季の野菜作り)が動き出しました。まずは村の各地区で「菜園委員会」のメンバーが選ばれ、「委員会」が中心になって参加希望者の登録と、その人たちへの菜園用地の割り当てが行われることになります。
しかし、果たしてどのくらいの村人が参加を希望するのでしょうか?また、今回の紛争で故郷を追われムルタ村に滞在している避難民は、共同菜園にうまく参加することができるのでしょうか?
そうした不安を抱えながら、JVCスタッフは避難民が多く住んでいる集落に足を運んでみました。そこはムルタ村の北地区の端、中地区との境界に近いあたりです。