2月に事務所を開設して活動を開始したあと、忙しさにかまけて「現地便り」を書かずにいるうち、あっという間に3ヶ月が過ぎてしまいました。
読者の皆さま、たいへんに申し訳ありません。
さて、その「活動」ですが、これは説明をするのにちょっと工夫が要ります。
いまご覧いただいているホームページでは、スーダン事業の概要として「内戦終結後のスーダンで、平和の定着と人々の生活再建を支える」と紹介され、「住民間の平和構築・信頼醸成活動」となっています。いやはや、堅苦しい表現・・。「平和構築って何?」って聞いてみたくなります。
この地域、南コルドファン州では2002年に停戦合意がなされ、それまで敵同士だった政府与党の国民会議党(NCP)と反政府勢力のスーダン人民解放運動(SPLM)とが共同で州の統治を行うことになりました。知事がNCPなら副知事はSPLM(2年ごとに入れ替わる)、州議会の議席や州大臣のイスも一定の比率で両者が分け合う仕組みです。(先日、州知事・議会選挙が実施され、その結果をもってこの仕組みは終わる予定)
しかし停戦がなされても、政治レベルでの両者の対立がなくなったわけではありません。それどころか以前にも増して、各地域ではそれぞれが影響力を拡大しようと競いあっています。村には政府軍、反政府軍の元兵士が戻ってきています。いや、「元」兵士ではなく、武器を手にしたまま「いざとなったら戦う」構えで戻って来ている人たちもいます。多くの避難民も戻ってきました。そういう複雑な状況の中で、両者の勢力争いが続いています。
この争いがエスカレートして、時には武力による衝突も起きています。私たちが活動するウドゥ村、メレ村でも、2009年にそうした事件が起こりました。
私たちの活動は、こうした紛争の調停をするわけではありません。そう簡単に調停できるものでもありません。私たちは、一応は衝突が収まった状況において村人の生活再建を支援します。その中で、異なる政治グループ、帰還民、元兵士等の様々な住民がお互いに対話する場、協働する機会を作り、村人が相互の信頼を取り戻すきっかけを提供したいと考えています。
ということで、まずは生活再建の支援ですが、「村づくりのお手伝い」と言った方が分かりやすいかも知れません。
援助団体が村々をまわると、住民からは「内戦のせいで、うちの村には井戸もない、学校もない、診療所もない」と「ないないづくし」の話が出て、「ところで何をくれるの?」といった展開になりがちです。そうではなく、私たちは住民と一緒に村を歩いて「そこにあるもの」を再発見する作業から始めます。森林資源や水源、伝統的な知恵や技術、共同作業の仕組みなどです。そして、その再発見を契機にして始まる村人の動きに期待し、それに働きかけて、生活改善活動につなげていこうとしています。
説明ばかり長くなりました。
いよいよ、ウドゥ村での活動開始です。まず始めにJVCの活動を村人に説明して了解を得なくてはなりません。
「わかった。それじゃあ、ウムダ(村長)をはじめ各集落のシエハ(リーダー)や各グループのリーダーを集めよう」
訪問した私たちに村の世話役、ハッサンさんが言いました。「若者グループ、女性グループ、ダンスグループ、学校委員会、ほかにあれも、これも・・全部で27人だな」
2日後、村のモスクで集まりが持たれました。参加者27人のはずが、数えたら70人ほども来ています。関心が高いというか、物珍しいというか、まあ悪いことではありません。ほかに、野次馬の子供たちが窓の外にへばりついています。
「それでは始めます」
ハッサンさんが進行役になって集会が始まりました。JVCの活動について説明し、先に述べた「再発見」のための村歩きを行いたいと伝えると、早速シエハらしき人物から質問。
「井戸は掘らないのか?」
すると、呼応してほかのシエハも次々に立ちあがり発言を始めました。
「うちの集落は水汲みに行って帰って3時間もかかる。どうしてくれる?」
「そうだそうだ。でも、うちの集落のほうが井戸から遠いぞ」
「何言ってるんだ。いちばん遠いのはこっちだ。こっちのほうが深刻だ」
だんだん騒然となってきました。なかには「井戸を掘るのが活動を許可する条件だ」と言う人もいます。「これは困った」と思って私が何か言おうとすると、その前にハッサンさんが立ち上がって話を始めました。みんな黙って聞いています。終わると拍手が沸き上がりました。
「いま、何て言ったんですか?」アラビア語の分からない私が小声で尋ねると、「アフリカのことわざを言ったのさ。この団体(JVC)はきっと、魚をくれるのではなく、魚獲りの仕方を教えてくれるんだろうってね」
「それで?」
「とにかく、活動開始はOKだよ」
やがて、女性たちが腕を振り上げて歌い始めました。歌が始まると集会は終わりです。活動が承認されたことに、ともかくもホッとした私でした。
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