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2013年10月28日

2年3ヶ月ぶりのカドグリ(1)

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2013年10月28日 更新

国連機の翼の下に、緑の大地がぐんぐん近づいてきます。

乾燥したハルツーム周辺の上空からは決して見ることのできない、雨をいっぱいに吸い込んだ一面の緑。その中に散りばめられた小さな沼や池が、雲間から差し込む太陽にキラキラと輝いています。

南コルドファンに、戻ってきました。

2011年6月に市街戦の中を退避してから2年3ヶ月、私にとってやっと巡ってきたチャンスです。紛争が始まって以来、NGOの外国人職員が南コルドファン州に足を踏み入れることを頑なに拒んでいたスーダン政府が態度を軟化させ、たった1日だけですが国連・NGOの訪問団として州都カドグリを訪れることが許されたのです。

訪問団は私を含めて24人。ハルツームの国連関係者、国際NGOの現地代表、そしてスーダン政府関係者です。

着陸すると、滑走路脇にはたくさんの人々が出迎えにきています。タラップを降りて握手の列を抜け、駐車場から用意されたクルマに乗り込みました。ひょっとしてJVCカドグリ事務所のスタッフが来ているのでは・・・と思って周囲を見渡しましたが、JVCがレンタルしている赤い軽自動車は見当たりません。

訪問団の一行は、ブルーの国連マークが入った白の四輪駆動車に分乗してカドグリ市内へと向かいます。州政府や現地NGOの車両も加わって、20台以上の四輪駆動車がコンボイ(車列)を組んで田園風景の中を颯爽と飛ばしていきます。

車内にいる私の携帯に電話が入りました。JVCスタッフのアドランです。
「やあ、アドラン。こっちは空港から市内に向かっているところだ。いま、どこにいる?JVC事務所?」
「いやいや、コンボイと一緒に走っている」
「コンボイの中?でもJVCのクルマは見かけなかったぞ?おかしいな・・じゃ、市内に着いたら会おう」

電話を切って、私は車窓を流れる風景に目をやりました。

草ぶき屋根の家々の間に青々と茂るソルガム(主食用の穀物)、牧畜民が住むドーム型のテント、井戸の手押しポンプにぶら下がってはしゃぐ子供たち、牧草地に向かうウシの群れ・・・何もかもが、紛争が始まる前と同じように見えます。ところどころに見え隠れする、避難民らしい人々が住むビニールシートの小屋を除いては。

コンボイが速度を落として市内へと入っていきます。そこには見慣れた光景が広がって・・でも、あれ、少し違います。

「こんなところに信号があったっけ?」

私がカドグリにいた2年前、初めての信号機が設置されましたが数日間点灯しただけで止まってしまいました。ところが、いまはなんと3基の信号が設置され、しかもきちんと動いているのです。

驚いたのはそれだけではありません。町の入口に架かる橋は立派な改修工事がなされ、下を流れる川は護岸工事がなされています。ほかにも、歩道が整備されていたり街灯が設置されたり、カドグリは発展しているのです。

この「現地便り」を以前からお読みの方は、2年前の市街戦や、それ以降もたびたび砲撃を受けたカドグリの町は、さぞや「荒れている」と思っていらっしゃるかも知れません。でも、町は少しばかり「発展」していたのです。州内での紛争が長く続く中で、政府は「州都は政府が完全に掌握している」「町の治安には何も問題はない」という宣伝を国内で繰り返してきましたが、開発資金を投じて町を発展させて見せるのも、そうした宣伝の一環と考えれば理解できます。

コンボイは州政府庁舎に到着しました。ここでも多くの人が出迎えに出ています。中庭でクルマを降りると、私は多く友人、知り合いに出会いました。州政府の係官、人道支援局の担当官、現地NGOのスタッフ、そのうちの多くはまさに2年3か月ぶりの再会です。

しかし同時に、もはやここカドグリでは会うことのできない人たちも少なくありません。紛争以前の州政府では、現在は反政府勢力となったSPLM-Nのメンバーやそれに近い人たちがたくさん働いていました。NGOでもそうです。しかし紛争を機に、そうした人たちはカドグリを追われ、姿を消しました。SPLA-N支配地域に逃れた人も多いことでしょう。カドグリが表面的には以前と変わらないように見えても、それは決して同じカドグリではないのです。

人々の中に、JVCスタッフのアドランとタイーブの姿を見つけました。

「やあ、ついにやって来たぞ」
「ようこそカドグリへ。空港で会えなくてごめんなさい」
「少し見渡したんだけど、赤いクルマは見なかったぞ。コンボイの中にいたのか?」

と言うと、タイーブは近くに停めてあるクルマを指さして
「今日のクルマはこれだよ」
「えっ、これが?」
それは白い車体の、立派な四輪駆動車です。

「別の援助団体で働いている知り合いに頼んで、今日1日だけ、ウチの赤いクルマと交換して使わせてもらっているんだ」
「はあ?」
「だってさ、あの赤いクルマでコンボイに入るのは、恥ずかしいだろ」

確かに、国連マークを付けた四輪駆動車の車列に赤の軽自動車が1台だけ混ざっているのは、普段着でパーティに来てしまったような恥ずかしさです。

大笑いしながら、私たちは州政府庁舎に入っていきました。ここで州知事との会合が持たれます。

これが「いつもの」JVCレンタカーこれが「いつもの」JVCレンタカー

(つづく)

【おことわり】
現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井(首都ハルツームに駐在)が執筆したものです。

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