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ジブラカと女性たち (2)

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2012年6月15日 更新

前号から続く)

ムルタ南地区の小学校の一角で行われた話し合いには、地区の住民リーダー、ジュマさんのほか7人が集まってくれました。どういうわけか女性が多く、先ほどまで一緒だったアシャさんも参加しています。

ムルタ南地区での話し合い。正面右が地区リーダーのジュマさんムルタ南地区での話し合い。正面右が地区リーダーのジュマさん

JVCスタッフが、予定している野菜作り研修と種子の配布について説明しました。

続いてジュマさんが、住民の大半は農業で生計を立てていること、昨年は紛争のため耕作ができず、家畜もいなくなり、支援を必要としていることを訴えました。

すると、いきなりアシャさんが立ち上がって、
「畑仕事はね、女のアタシたちがいなきゃできないんだよ」
と話し始めました。
女性が担っている役割がいかに重要か、女性が耕すジブラカ(家の周りの小さな畑)の作物がどれだけ生活を支えているか、自分の体験や実例を挙げての話が続きます。周りにいる女性たちはみな、うん、うん、とうなずいています。
いつまでたっても話が終わりそうにないので、ついにジュマさんが
「おいおいアシャ、いい加減にしないか。ほかの人が喋る時間がなくなってしまう」
と苦笑しながら制止したくらいでした。

話し合いを経て、主にジブラカで育てられる野菜やトウモロコシの種子は、すべて女性に配布をすることになりました。同時に、地区ごとに25人程度の女性に参加してもらって野菜作りの研修を行います。

「それはいいけど、誰が研修の講師をするの?」
事務所に戻ったあと、JVCスタッフの一人が言いました。実は講師はまだ決まっていません。
「州政府の農業省から専門家を呼べばいいだろう」
「でも、専門家の話なんて、お勉強っぽくて農家の女性たちが聞くかしら」
確かに、専門家の話は畑での作業の実際とは少し違うかも知れません。
「専門家に来てもらうとしても、もうひとり、もっと実地で役に立つ話ができる人がいるといいよね」
みんなしばらく考え込んでいましたが、ひとりが口を開きました。
「そうだ、適任者がいるじゃない」
「誰?」
「アシャさんよ。彼女に頼んでみたら?」

さて、研修の当日。JVCの活動地であるムルタを3地区、ハジェラナルを2地区に分けて、合計5地区でそれぞれ1日の研修が行われ、今日はムルタ西地区が会場です。

参加者の女性たちが集まってきました。何人かが、そこにいるアシャさんに気が付いたようです。
「アシャ、なんであんたがここにいるのよ。あんたの家はムルタ南地区でしょ。今日はムルタ西の研修よ」
JVCスタッフがあわてて説明をしました。アシャさんは研修の参加者として来ているのではなく、アドバイザーとして来ているのです。

研修を受ける女性たち。講師はザカリヤさん研修を受ける女性たち。講師はザカリヤさん

やがて研修が始まりました。講師は、農業省の技術普及部門から招いたザカリヤさんです。まず始めは、オクラの育て方と収穫方法。
「種まきから45日から60日で収穫が始まります。3日おきに成長したオクラの実を収穫するようにすれば、小さな実が次々に大きくなって、1ヶ月くらい収穫が続きますよ」
そして、オクラが大切な栄養素を含んでいることをザカリヤさんは説明してくれました。

アシーダ(右)とムラ(左)アシーダ(右)とムラ(左)

この地方では、オクラほど重要な野菜はありません。ソルガム(イネ科の作物)の粉から作る「アシーダ」という主食と、「ムラ」と呼ばれるネットリとしたオクラ煮込みが家庭料理の定番メニュー。「ムラ」には豆や乾燥肉を混ぜて味のバラエティを楽しみます。オクラは乾燥させて保存するので、1年中いつでも使うことができます。

続いて、トマトの話。ここでアシャさんが登場です。彼女は、自分の経験からトマトの苗床の上手な作り方、苗床からジブラカへの移植のタイミングなどを説明してくれます。

研修中に自分の体験を話すアシャさん研修中に自分の体験を話すアシャさん

「トマトの赤ちゃんがね、元気に葉っぱをだして、このくらいだね、このくらいの大きさになったらジブラカに移してやるといいよ」
と身振り手振りで話をするアシャさん。
「あんまり小さいうちに植えかえるとうまく育たないよ。私は昔、大失敗したことがあってね」
失敗談も交えた話を、みんな真剣に聞いていました。

研修は人数に制約があるため、各地区で選抜された25人の女性に行いました。実際に種子を受け取るのは、およそその5倍の人数です。
「みなさん、今日聞いた話を、参加できなかったほかの人にも伝えてくださいね」
とお願いして、研修は終了です。
「アシャ、今日はありがとうね」
ムルタ西地区の女性も、最後にはアシャさんにお礼を言っていました。

配布を待つ人々配布を待つ人々

さて、次は種子の配布です。研修が終わる頃には、会場にはジブラカを耕す女性たちが続々と詰めかけ、長い列を作って待っています。

配布するのは、トマト、オクラ、ウリ、トウモロコシ、ササゲ豆、落花生の6種類。今日は172人が対象です。5日間合計では、約600人の女性に配布することになります。

ひとりひとりが6種類の種を受け取ったひとりひとりが6種類の種を受け取った

「いやあ、配布作業は大変だったな。みんな疲れたろう」
配布を終えた帰りのクルマで、スタッフの一人がいいました。
「もうへとへと・・でも、研修が少しは役に立って、種が無事に育つといいわね」
「そうね。農業省のザカリヤさんも悪くはなかったけど、参加者の女性に聞いたら、アシャさんの話の方が役に立ったって言っていたわ」
「ホントか?みんな、それは農業省には内緒だぞ」
こうして、5日間の研修と配布は無事に終了することができました。

配布されたトウモロコシの種を、家の前のジブラカにまく配布されたトウモロコシの種を、家の前のジブラカにまく

【おことわり】
現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井が執筆したものです。

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