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研修生の病気

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2009年6月18日 更新

研修生タバンは大きな身体に似合わず、どうも病気がちです。先日も体調を崩して3日ほど休んでいたと思ったら、フラフラになって整備工場にやってきました。
「あれ、ホントにタバンか?」私たちがそう思うほど、頬はこけ、まるで別人のようです。倒れこむように椅子に座ると、「クリニックでもらった薬を飲んでも、全然回復しない。もう薬代もない。胃の調子が悪くて何も食べられない」と訴えるタバン。どうにもならず、私たちのところに助けを求めに来たようです。

「ポリッジ(トウモロコシ粉のお粥)を作ったり、世話してくれる人は誰かいないのか」と尋ねると、両親はハルツームで生活しており、ジュバでは彼と弟だけの生活、弟は仕事があるので世話はできない、とのことです。

「すぐ病院に連れて行こう」とスタッフで話したのですが、「どこに連れていくか」でひと悶着。
「ジュバ・ティーチング・ホスピタルに連れていこう」と言う私に、総務担当のフォエベさんが「あの病院に行ったってダメだ。長い行列でさんざん待たされた挙句、たいした治療が受けられない」と異論を唱えると、「でも、本人がローカルクリニックじゃダメだと言っているんだから、ティーチング・ホスピタルに行くしかないだろう」とサイモン工場長。結局、※ティーチング・ホスピタルに連れていくことになりました。

(註:ティーチング・ホスピタルとはその名の通り、医師・看護師養成を兼ねた医療施設で、「北」側には各州に1ヶ所おかれている。南部スーダンでは唯一最大の総合公立病院。他方、庶民が日常的に使うのは近所にあるローカルクリニック。マラリアなどに罹患した場合、みなクリニックに通う。ティーチング・ホスピタルの医師が「副業」として個人医院を開業していることもあり、その場合には病院勤務終了後の夕方から医院での診療が始まる。)

幸いなことにタバンの弟に連絡がつき、タバンと弟をクルマに乗せてティーチング・ホスピタルに行くと、いつもの通りの混雑です。順番待ちの列に入った2人を残して、とりあえず整備工場に戻りました。

1日の仕事が終わった後、整備士のアニャマ(ウガンダ人)、ジェフリー(ケニア人)と3人で病院に様子を見に行きました。受付で入院患者の名簿を見せてもらうと、タバンは診察を受けてそのまま入院していました。
薄暗い病室に入ると、左右にずらりと患者用のベッドが並び、ベッドの合間には付き添いの人たちがマットを敷いて休息を取っています。タバンを見つけると、昼間と同じ服のままベッドに横たわっていました。病院が提供しているのは蚊帳付きのベッドだけで、病院服もなければ毛布もありません。「枕が欲しい。それと、病院にいる間の着替えが欲しい」と言うタバン。すでに夕方6時だったのでそれは翌日に買うとして、食事は?

「ここでは食事は出ないんだ」と言うので、「じゃあ何か買ってくる」と病室の外に出て看護師さんに「食べ物はどこで買えますか?」と尋ねると「知らない」との答え。ほかの人に聞きながら、やっと病院の片隅にある売店を見つけましたが、「食べ物は全部なくなったよ」。

一緒にいるアニャマとジェフリーは「この病院は入院患者用の食堂もないのか」と唖然としています。「ウガンダの国立病院では、食堂は24時間いつでも開いているぞ」「ケニアもそうだ」と言う彼ら。「患者さんたちは、食事をどうしているんだろう?」「世話している家族が持ってきているに違いない」
ということで、私たち3人はクルマを走らせて遠くのマーケットまでタバンのリクエストによる「ドド」(ほうれん草のような葉を煮込んだもの)を買いに出掛けたのでした。

検査の結果、タバンの病気はマラリア+急性の下痢で、5日間の入院ののちに退院となりました。退院の日、弟が私のところにやって来て「病院から家に帰るのにクルマを出してくれないか」と言うので、「申し訳ないが今日は整備工場でクルマを使う予定がある。バスを使って帰宅して欲しい」と答えました。入院する時は緊急なのでクルマを提供しますが、回復した時には自分たちで家に帰って欲しい、というのが私の気持ちです。しかし弟は「バスに乗るカネもない」と言います。仕方がないので、タバンの研修生手当から交通費を前借りしてもらうことにしました。

今回の病気で、タバンが支払った医療費は合計214スーダンポンド(以下ポンドと表記。214ポンドは約8千円)。ティーチング・ホスピタルの診療費は無料なので、この金額は全部薬代です。1ヶ月の研修生手当が200ポンドですから、214ポンドは相当の高額になります。

研修生たちは、毎月の手当から40ポンドずつ、「メディカルファンド」という積み立てをしています。「メディカルファンド」にも2種類あり、40ポンドのうち30ポンドは個人積立金、10ポンドは共同基金として積み立てられます。個人積立金は、病気になった時に、個人が残高の範囲で引き出して治療費として使うことができます。他方、共同基金は研修生全体に属するお金で、研修生の誰かが大病を患って1週間以上入院し、治療費が高額になった場合に引き出すことができるお金です。

今回のタバンのケースで共同基金からの支出を認めるかどうか、研修生全員の話し合いを持ちました。「タバンの入院は1週間に満たないが、前後の自宅療養期間を入れれば1週間以上になる。みんなどう考えるか」と私が尋ねると、研修生のイペが「基金は病気になった研修生がちゃんと治療を受けて早く復帰するためにあるんだから、こういう時に使わないといけない」と答えて、みんなも納得。治療費は、全額基金から出ることになりました。

翌週、タバンはついに復帰。やせこけた顔も、元通りとはいきませんがかなり回復してきました。「体調が戻るまで無理はするなよ」と言う整備士たちに「何言ってんだよ。少しは手伝わせてくれよ」というタバン。笑い声が、久し振りに戻ってきました。

 ■退院後、仲間たちに顔を見せに戻ってきたタバン(右) ■退院後、仲間たちに顔を見せに戻ってきたタバン(右)

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