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2012年12月 9日 【 2012年11月ガザ状況

停戦後のガザより(3)

11月9日からのガザ・イスラエル情勢について【9】
現地代表 金子 由佳
2012年12月14日 更新

11月21日に結ばれたガザ紛争の停戦合意から2週間以上が過ぎました。停戦後、それまで毎月行われていたイスラエル軍による暗殺も起きておらず、またガザ側からのイスラエルへのミサイル発射もなく、現地は急速に平常な状態に戻っています。そして、この間パレスチナの国連オブザーバー国家承認という歴史的瞬間もありました。しかし、ガザの人々に降りかかる目の前の問題が消えるわけではありません。私は停戦後2回ガザに入りましたが、被害の全容が明らかになってきているので、お伝えします。

国連人道問題調整事務所(OCHA)12月5日発表の報告書によると、ガザ地区全土で、家の全壊/ほぼ全壊が450棟、死者数158人(市民103人)、負傷者数1,399人ということがわかっています。また、現在も何らかの理由で自宅に戻れずにいる域内避難民数は3,000人で、交戦中一時は1万人と言われていた域内避難民の数が大分減ったと分かる反面、家屋破壊によって、未だに家に帰れない人がいることもわかります。家の修繕費用が無く、途方に暮れている人、経営する店などが破壊され職を失った人、一家の大黒柱を空爆で失った人も多く、現地では寒い冬を迎えて厳しい状況に置かれている人がいます。

ガザ地区の総人口160万人のうち、8割が難民と言われていますが、彼らの生活を支える、国連人道問題調整事務所(UNOCHA)によると、家屋破壊からの復興等に必要とされている緊急資金は現在1,300万USドル(約10.4億円)で、来年度前半に必要とされている復興資金は6,000万ドル(約48億円)と言われています。その予算規模を見ても、今回の空爆が、たった8日間であるにもかかわらず、どれだけ多くの物質的、人的、精神的破壊もたらしたのかをうかがい知ることができます。また、難民以外で被害を受けた人は、UNRWAからの支援も受けられず、ガザの政府からも補償金が下りるかも確証がない状態です。

表1:2012年ガザ攻撃によるガザ地区全体における被害状況
死者数負傷者数全壊またはほぼ全壊の家屋数域内避難民数今年中に復興のために必要とされる資金来年度前半に必要とされている復興資金
158人
(市民103人)
1,399人450棟3,000人1,300万ドル
(10.4億円)
6,000万ドル
(約48億円)

※OCHA:11月26日、12月5日報告書より抜粋

特に、今回の戦争被害は物質的なものにとどまらず、ガザの人々の精神状態に深く及んでいます。2008年~2009年に行われたガザ攻撃の際の死者数は今回の10倍になりますが、使われた火薬の量は今回のガザ紛争の方がはるかに多い、3倍と言われ、それだけ爆音も大きく、人々の心に強い恐怖心を植え付けたと考えられています。また、前回と違い今回はテレビやラジオの通信機器が途切れることなく事実を伝えていたため、自分の身の回りで起きている悲劇がまざまざと放映され、その分恐怖が増したと訴えている人もいます。現在でも多くの子どもが眠れない夜を過ごし、大人でも、食事がとれなくなる、トイレに行けなくなる、叫ぶなどのパニック状態が続く、集中できず憂鬱状態が続くなどの不調を訴える人が後を絶ちません。

私は停戦直後からガザに入り、現地パートナーNGOのArd El Insan (AEI:人間の大地)スタッフ8名および、共に活動を続けてきたボランティア40人のうち約半数の17人から聞き取り調査を行いました。加えて、2012年度に子どもの栄養失調予防事業を行っているガザ市3地区のゼイゥーン、トゥッファーハ、ジャバリヤでの被害状況を把握するとともに、今年度事業の活動について今後も活動できるのか協議を重ねてきました。その結果、これら3地区の対象エリアで全壊となった家の数は153棟に上り、また受益者の家庭で亡くなった方は16人(13世帯)に上ることが明らかになりました。事業を主体的に支えて活動しているボランティアさんたちの多くも、自宅の窓や屋根に被害を受けて、修繕がままならない人が多く、また中には目の前で近所の人が吹き飛ばされてバラバラになったのを目撃した人もいました。

表2:JVC 2012年度事業地、ガザ市3地区での被害状況
シャジャイヤゼイトゥーントゥッファーハ合計
全壊家屋数20棟90棟43棟153棟
死者数5人(5世帯)9人(6世帯)2人(2世帯)16人(13世帯)

※関係者からの聞き取り調査詳細結果報告書はこちらからダウンロード(PDF,674kB)できます。また、地域の地図はこちらからダウンロード(PDF,201kB)できます。

しかし一方、停戦直後から受益者宅を訪問し、安否確認を繰り返してきたスタッフとボランティアさんがいることもわかりました。自身も大きな精神的負担を抱えながら、近所の受益者宅を回り、人々を気遣う姿勢、停戦を祝う姿勢は、スタッフの優しさと信念、また心の強さに裏付けされ、また、今まで行ってきた活動が、既に地域の営みの一つとなり、スタッフやボランティアさんにとっても、また受益者にとっても、なくてはならないものとなっているのではないかと感じました。

事実、スタッフやボランティアさんの多くから、「日常に戻ることが何よりも求められている。なぜなら空爆という非日常と、それによってもたらされた精神的苦痛から抜け出すことは、日常を取り戻すことによってのみ可能だからだ」という意見が多く、ガザの人々全員が精神的ストレスで苦しむ今だからこそ、地域ぐるみで活動を再開し、日常に戻る動きが必要であることが分かりました。JVCは今まで地道に活動を続けてきた現地の人々の成果を無にするような今回の一連の暴力を強く非難する一方で、このようなスタッフ・ボランティアさんたちの意志、地域ぐるみの動きを引き続き支えていきたいと強く思っています。

攻撃前の活動に完全に戻るまでには少し時間がかかりますが、出来る人からできる分の活動を再開し、それら活動とその上に成り立つ人々の絆から見えてくるニーズに必要に応じて対応することが求められています。JVCスタッフは引き続きガザを訪問し、現地の人たちと共に活動を続けていきます。

聞き取りに集まってくれた地域のボランティアさんと、AEIスタッフたち。晴れたので、シャジャイヤの公園に集まって実施しました。パソコン入力をしているのは現地事業調整員の金子。聞き取りに集まってくれた地域のボランティアさんと、AEIスタッフたち。晴れたので、シャジャイヤの公園に集まって実施しました。パソコン入力をしているのは現地事業調整員の金子。
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