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2012年8月30日 【 ガザ・栄養改善支援

ガザの「日常」

現地代表 金子 由佳
2012年9月 5日 更新

JVCのパレスチナ事業現地調整員としてエルサレムオフィスへ赴任して約一ヶ月、8月27日~29日までガザへ行った。来年度事業の計画を現地スタッフと確認するためだが、なにせ赴任して二回目のガザ入り、今回は一人で出張と言うこともあってとても緊張して、前日は何だか眠れなかった。

エルサレムからガザまではタクシーで飛ばして一時間半。ひまわりやオリーブの畑が広がる長閑な田舎道をいくと、突然要塞のような建物が見えてくる。イスラエルの検問所エレツだ。一見するとどこの国にもある国境の入り口。しかし昔は自由に出入りできたその土地と、ガザ内部の現状を思うと、その要塞が、監獄の入り口のように見えてくる。

何層もの頑丈な壁を通り過ぎ、イスラエルの出国手続を終えて中に入ると、緩衝地帯の長い長い渡り通路(全長1キロ以上)を徒歩で移動し、パレスチナ側のガザに入るための検問所にたどり着く。国際社会に承認されているパレスチナ自治政府母体のファタハと、ガザを制圧しているハマースの検問所があるのがいかにもパレスチナらしい。

それぞれ掘っ立て小屋のような検問所で比較的簡単な荷物チェックを受け外に出ると、ガザの事業実施パートナー団体AEI(Ard El-Insan:「人間の大地」)のスタッフ、アマルと、運転手のアブ・アドハムが待っていてくれていた。二人の笑顔を見つけると、昨晩からの緊張がうそのように消える。ガザにも仲間が待っている。そう思うと嬉しかった。

エレツから車で15分の場所にAEIの事務所がある。事務所までの道々車から見えるのは、タイやインドなどのアジアの喧騒に似た活気ある人々の生活。ボロボロながら元気に走り回る車、ロバや馬で荷物を運ぶ人々の姿、小さいながらもお店を開く人々の姿だ。

世界から隔離された特異な場所であるにもかかわらず、そこにはやはり普通の生活が溢れていて、道行く人は買い物をしたり、おしゃべりしたりしている。子どもたちも元気そうだ。小さいながら商店が並び、イスラエルやエジプトから運び込まれる物資もかつてより多いだろうか、八百屋にはデーツ(ナツメヤシ)や洋ナシ、トマト、マンゴー、ぶどうなどが豊富に並ぶ。

AEIの事務所でのミーティングでは、始終来年度事業実施予定地の話しに尽きた。事業実施予定エリアのジャバリヤ地区にあるビルナージャは、地域でも特に子どもたちの健康状態が悪い。事前に行った調査では、他の2地域、ベイト・ラヒヤとベイト・ハヌーンでそれぞれ7.5%と2.5%だった栄養失調初期症状の子どもの数が、ビルナージャでは12.5%と高く、また重度の栄養失調が前者二つの地域で0%であるにもかかわらず、2.5%もいた。

また子どもを持つ母親たちの栄養に関する知識も乏しく、前者の二つの地域で30%、27.5%の母親が栄養失調の症状についての知識を持っていた中、ビルナージャでは0%となり、地域での活動の必要性を知ることが出来る。知識が上がれば、子どもへの栄養改善対策も早くなる。貧しくて手にはいる物に限りがあっても、食べ合わせや調理方法で栄養の吸収率は格段に良くなる。2012年度事業に続き、2013年度事業も、事業地をガザ市からジャバリヤ地区ビルナージャへと変えて、母親グループを対象に、子どもの栄養改善に向けた教育セッション、調理実習などを行う予定だ。

ビルナージャには活発なCBO(Community based organizations:住民組織)があり、今回の出張ではそれらCBOや保育所、市役所にも立ち寄って話を聞いた。ビルナージャの現状をより多角的に知るためで、地域にある難民キャンプの様子や、総人口、地理は勿論、女性たちが何を求めているのかをCBOを通じて知るためである。CBOは現在様々な取り組みを行っている。美容サロン、スポーツセンター、図書館、保育所、伝統刺繍の授業や、イスラム教の授業も実施する。

2013年度事業予定地ビルナージャのお母さんと子どもたち2013年度事業予定地ビルナージャのお母さんと子どもたち

西洋諸国と違って女性が社会に出にくいように思うが、実際のところ女性は女性で活発に社会活動をしている。AEIとJVCは、こんなCBOや地域の女性と提携し、事業実施に向けて何らかの協力が出来ないかを模索する。既に活発に活動しているネットワークを活かさない手は無いし、地域と共に事業を行うことで、社会に連帯を作り出すのも大きな目的だ。

開始は2013年にもかかわらず、CBOのスタッフ、女性たちはとても協力的に興味を持ってくれる。ガザの人々と接していて、こういった瞬間がとっても楽しい。まるで他人のことなのに、それを他人ごととせず、地域や家族で協力しよう、そんな意思と、やさしさが伝わってくる。

今回、滞在初日の晩には、イスラエル軍のミサイル攻撃が二回あった。活動地区のジャバリヤにあるビルで、JVCの事務所からは距離にして3キロぐらいだろうか。二人けが人が出たという。ようやく眠れそうだった私は、12時過ぎにドゴーン、ドゴーンという地響きに似たミサイル音に飛び起きてしまった。攻撃が始まったのか?そんな恐怖で、一人で眠るのをとても怖いと感じた。

次の日、そのことをアマルに話すと「心配しないで」の一言。彼女たちにしてみると、そんな攻撃も日常の一部なのだ。もちろん、JVCの事務所は狙われないだろう。国連の職員が多く住むビル郡にも非常に近いから、イスラエルもそういったところには攻撃してこないし、意図して市民を狙い撃ちすることはほぼ無い。けれど、その攻撃の音といったら、やはり平和ボケした日本人の私にしてみると、恐怖以外の何者でもない。またそんな攻撃は日常的で、というか日常としてやり過ごさなければ生活できないガザの人々を思い、本当にショックを受けた。

ハマースがガザを武力制圧して5年、町の活気に見られる様に、物資供給の面では当時より現状は格段によくなっているだろうが、相変わらずイスラエルによる封鎖が続く中で、人々はガザ地区から出ることを許されない。また日常的なミサイル攻撃の中で、いつ一般市民も攻撃に巻き込まれるか分からない。ガザ内部の失業率は以前と変わらず高く、町に溢れる活気とは裏腹に、子どもの栄養状況も悪い。根本的な問題は何も解決されていないのだ。

今回の出張を通して、封鎖・占領と言う中でも力強く生きる人々共と連帯していきたい、また不条理なこの現状を日本にも伝えたい、改めてそんな思いを強くした。

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