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蛇壁(へびかべ)

パレスチナ現地代表 小林 和香子
2004年1月 8日 更新

パレスチナの北西部の村には至るところに「ぬり壁」ならぬ、「蛇壁」という妖怪が出現しているらしい。この妖怪は、村々の中を縦横無尽に横切り、豊かな水源や畑、病院や学校までも食い荒らしている。今のところ長さは約150キロメートル、高さは数メートルから8メートル、幅は数十メートルから100メートルもある。この巨大な「蛇壁」は毎日成長していて、今年中には300キロメートルを越すとも言われている。

妖怪「へびかべ」妖怪「へびかべ」

この「蛇壁」の絵を書いたのは、ツルカレム地区の村に住むアフメット君(12歳)。お父さんのファエズさんの話では、特に絵が好きだったわけではないアフメット君が、カルキリア地区の「壁」が出来あがった半年程前から、「壁」に関する絵ばかりを書くようになったそうです。12歳の子どもにとっては、ある日突如として現れ、自分の家族の土地を奪い、移動の自由を奪い、生活の糧を奪ったこの「壁」は、まさしく「妖怪」なのでしょう。

アフメット君の家は、持っていた土地の70%が「壁」により奪われ、残る30%の土地にも容易に行くことは出来ません。この地域のほとんどの人と同様、農業が生活の糧だったこの家族にとって、土地を失うことは失業であり、貧困の始まりです。今はまだ多少の蓄えがあるので、何とかなりますが、この先どうやって生活していけるかはわからないと言います。この「壁」は、家の窓からも一望出来ます。家の背後は見渡す限りが「壁」になっているのです。

ツルカレム周辺地図 緑:停戦ライン、黒:壁ツルカレム周辺地図 緑:停戦ライン、黒:壁

お父さんのファエズさんは、農業関係のNGOのスタッフでもあります。彼が今力を入れているのは、突然土地を失い現金収入を失い、大学生の子どもの授業料を払えなくなった農家のための奨学金集めです。このように厳しい状況に置かれていても、または置かれているからこそ、子どもの教育だけは犠牲にしたくないと願う村の人々の期待を両肩に背負い、各国の団体に奨学金の寄付を呼びかけています。しかし、今後子どもの教育費が支払えなくなる家庭が急増するのは必至で、彼の戦いは長く厳しいものになりそうです。


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