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「避難民」が出るのはなぜ?‐(1)イラク人の分裂を招く多国籍軍の駐留と制裁の傷跡

イラク事業現地調整員(ヨルダン駐在) 田村 幸恵
2007年10月 2日 更新

イラクでJVCが開始する食糧援助は、外国に逃げることもできず、また治安上、命が危なくなって避難した人々への援助である。2006年、シーア派聖廟を爆破してから、爆発的に避難民が増えている。なぜ避難民が出ているのか、今回はイラクにおける多国籍軍の「治安維持」の実態という側面から、考えてみたい。
 
イラク戦争直後、各国はこぞって復興支援のための援助を約束した。国連などの国際機関もイラクに入ったが、多国籍軍によるイラクの市民を巻き込む攻撃は後を絶たず、無法地帯と化した商店街や公的施設の略奪があった。国連事務所の爆破に始まった自動車爆弾テロ、民兵の市民への襲撃と民兵同士の争いはこの4年間ずっと続いている。しかし惨状の報道だけでは、イラクの現状が彼らの野蛮さや残酷さゆえではないことがわからない。
 
アンマンに逃れてきた人は、ほぼ90%繰り返し「多国籍軍は出て行ってほしい」という。多国籍軍は、略奪を放置し、監獄をあけて、間接的にイラク人に罪を犯したのだと彼らは訴える。また、民兵に武器を供与してイラクの治安の悪化を招いているのはアメリカ軍そのものであるし、アル‐カーイダを「狩る」といって、一般市民の不当逮捕や夜半の家宅侵入は日常茶飯事だという。そもそも多国籍軍が多くの混乱を引き起こしたのだ、というのがイラク人共通の見解だ。
そして、口をそろえてアル‐カーイダは戦後イラクに入ってきたという。

多国籍軍が国境警備を管理できず、戦時のどさくさにまぎれて武装集団が入ってきたことは元イラク軍人も確認している。たとえカーイダでなかったとしても、簡単に武装組織が侵入できる状態や略奪を放置した状態を作り出したことは確かだ。

また、多国籍軍の中でも米軍を中心に民兵に対する武器供与、無差別狙撃の証言は後を絶たない。戦後まもなくはシーア派民兵組織を中心に援助を続けていたと言われている。多国籍軍は、スンニ派であるカーイダ掃討を北部で行うためにシーアは民兵を利用したが、その暴虐が国内避難民を増やしている。さらに、北部ではカーイダを掃討するために米軍に協力する組織と協力を拒否する組織の間で紛争もあった。そこへ多国籍軍が市民を巻き添えに掃討作戦を行うため、さらに多国籍軍に対する反発は強まり、シーア派とスンニ派入り乱れての戦いにもなった。そしてこうした多国籍軍占領に反対するカーイダに志願する者も出てきてしまったのだ。

いったん武器を手にした者は、多国籍軍の掃討作戦後の治安が行き渡らない地域で略奪や家屋の占拠、公共施設の爆破によって日常生活を麻痺させている。取り締まる者などいない。

日本に住む私たちにとって、略奪や爆弾、民兵組織の横暴は異常に見えるかもしれない。けれども、バグダッドで診療を続ける医師にたずねると、「略奪や民兵の横暴は、長年続いた制裁の副産物の様なものだと思う。貧しい人々は肉どころか卵ひとつ、豆一袋買うお金もない。お金のために民兵組織に加入している。良いとはいえないが、栄養失調で子供がなくなるような状態でも一部の人が潤っていたことに比べてその是非を問えない。教育を満足に受けられなかった人々は外部からの情報を遮断されて、簡単に洗脳されるのも仕方がないかもしれない。私は医師だが、2004年までインターネットを知らなかった。一般の人々ならどうだと思いますか?」と問い返された。

多国籍軍駐留は、イラクに必要なのだろうか。武器供与や無差別の市民攻撃における協力要請によって人々の間に不信の芽を育てて分裂させ、首都の治安さえも回復できずに国内避難民を出しているのは多国籍軍の存在そのものである。


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