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アフガン・レポート 第二部 政治プロセスの進展

JVCアフガニスタン現地代表 谷山 博史
2003年12月 2日 更新

武装解除プログラムの開始

治安の悪化で援助団体の活動が停滞している一方で、アフガニスタンの政治状況は急展開を見せている。まず9月の半ばには日本と国連のイニシアティブで準備がすすめられていたDDR(武装解除・動員解除・社会復帰プログラム)が正式にスタートした。これは当初6月に予定されていたが、国防省の改革が遅れたために延期になった。国防省自体がタジク人の軍閥の巣窟と考えられていたからである。例えば北部で絶え間ない抗争を繰り返しているウズベク人勢力とタジク人勢力の関係を例にとると、国防省がタジク人を中心とするパンジシール派に牛耳られている以上、国防省が実施することになっているDDRをウズベク人勢力のドスタム将軍が受け入れるとは考えられないからである。国防省の改革では、不十分だとの批判はあるものの、副大臣や師団レベルの司令官の大幅な入れ替えが行われた。

DDRは手始めに比較的情勢の安定している北部のクンドゥーズ県でスタートした。今月から南東部のパクティア県の県都ガルデーズに広げられ、このあとマザリ・シャリフやカンダハルなど主だった6つの都市に順次拡大していく。但しこれはあくまで試行段階と位置付けられている。予定では3年間の内に10万人の兵士の武装解除,動員解除を行うことになっているが、本格的に動き出すのは来年の夏、選挙の後になるといわれている。今回先行的に行われる武装解除で軍閥の私兵から回収する武器の目標は6,000丁である。

ちなみに、DDRプログラムで武装解除の対象としているのは軍閥に私的に雇用・動員されている不正規の兵士である。ある程度組織化された軍の私兵が対象であって組織化されていない武装集団、一般民からの武器回収は対象になっていない。もちろんアフガニスタンとの国境沿いのトライバル・エリアと呼ばれるパキスタン領内の自治区に居住するパシュトゥー人も対象ではない。タリバンやアルカイーダはこのトライバル・エリアから越境して米軍やアフガン軍を攻撃していることから、この地域が「テロリスト」の拠点になっていると考えられている。しかもトライバルエリアには150万から200万の武装したパシュトゥー人がいると言われている。このことは銘記しておく必要がある。

ISAFの地方展開

一方政府や国連、NGOが要請しつづけていたISAFの地方展開もここにきてやっと現実のものになった。これまでISAF治安支援活動はカブールに止まっており、地方での治安の悪化は放って置かれたといっていい。ISAFはボン和平協定に基づいて国連の承認のもとに設置され、6ヶ月ごとにイギリス、トルコ、ドイツ・オランダと指揮権が移り変わってきたが、8月からはNATOの指揮下に入ることになった。2年近くもの間アメリカを初めISAFを構成する各国が財政負担と兵員の危険を理由に地方展開に消極的だったのが、NATOへの指揮権委譲をきっかけに一気に話が進んだのである。ISAFの地方展開の最初の地域も比較的治安のいいクンドゥーズからである。

後でもう一度触れることになるが、熱望されていたISAFの地方展開も、実はその人数や任務が明確になっていない。総数は2,000人とも10,000人とも言われているが、これはISAFを構成する各国がどれだけの兵士を送るかにかかっている。しかし、危険な任務になることが分かっているため、カナダやオーストラリアはいち早く防御線をしいて、これ以上の兵員は派遣しないと表明している。また、任務形態については、マザリ・シャリフに展開しているイギリスのPRT(ISAFとは指揮系統をことにする連合軍の民生支援部隊で国連の管轄の外にある)が軍閥間の停戦交渉や武装解除に一定の成果を収めつつあると思われていることから、PRTタイプの任務形態になる可能性がある。

選挙の前提としてのDDRとISAFの地方展開

DDRとISAFの地方展開は、来年6月に予定されている国政選挙に密接に関連している。ボン会議で日程が決められた国政選挙は自由・公正な選挙を目指しているわけであるが、現在のように軍閥が私兵を動員して思い思いに地方を支配している状況では軍閥に有利は選挙は行われても、自由で公正な選挙は望むべくもない。したがって選挙の前提としてDDRプログラムによって軍閥の私兵を解体しようということになった。

しかし、軍閥が中央政権の意に従わず住民支配を欲しいままにしていると批判される一方、良かれ悪しかれ実際に地方の軍と警察を掌握し、曲がりなりにも支配地域の治安を実効的に維持しているのも事実である。軍閥を解体したあとに一体誰が物盗り、強盗、「テロ」から人々を守ってくれるのか。これはDDRのもっとも難しい課題である。今アメリカとイギリスの支援で創設されつつある新国軍、ドイツの支援で整備が進められている新国家警察、どちらも選挙までには間に合わない。そこでアメリカが考案したPRT(連合軍の民生部門が主な都市に派遣され復興援助と間接的な治安支援活動を行うというもの)が導入され、ついでISAFの地方展開が実施される運びになったのである。

憲法制定とロヤ・ジルガ(国民大会議)

選挙は新憲法に基づいて実施される。新しい憲法の草案はカルザイ大統領に任命された憲法起草委員会によって3月に第一次案が起草され、その後パブリック・コメントという民意反映作業のプロセスを経てこのつい先ごろ(11月3日)初めて公表された。このプロセスも2転3転し、民意が反映される仕組みになっていない(草案の内容が知らされずにコメントが求められるなど)と批判されているが、曲がりなりにも形になった。このプロセスが2ヶ月遅れたために、憲法草案を承認するために召集される憲法制定ロヤ・ジルガも2ヵ月遅れの12月10日に開かれることになる。混乱が予想されるロヤ・ジルガの選出とロヤ・ジルガでの憲法審議が無事に済めば、いよいよ正式な民主政権を選出する選挙へと進んでいくことになる。

県知事の更迭

さらにもう一つ、アフガニスタンの政治状況を説明するに当たって触れなければならないのは、カルザイ大統領による地方の知事と軍司令官、県警察長官の入れ替えである。カンダハル、バダクシャン、ヌーリスタン、クナール各県でカルザイは知事や軍・警察の責任者を更迭した。ドスタム将軍とアッタ・ムハマッド将軍の抗争が耐えないシベルガン県とバルク県でも実力者の聞こえの高い両県知事や配下の司令官が解任された。さらにJVCの足元のナンガルハル県でも3役が表向き更迭された。

カルザイ大統領はアメリカの後ろ盾を得て大統領に従わない軍閥の勢力を削ぐという危険な賭けにでているようだ。中央でも、カルザイのライバルで北部同盟の国防相から新政権の国防相に横滑りして軍の実権を握っているタジク勢力のファーヒム将軍のカブールの土地収用問題に関わるスキャンダルが明るみに出るや、追い落としにかかっているという情報もある。カルザイは来年の選挙とその後の新政権で実権を握る布石を敷いているのである。

これまで述べたような政治状況を見ると新しい国づくりが着実に進んでいるように見えなくもない。しかし一方で第一部(アフガン・レポート第一部「歯止めのかからない治安の悪化」)で述べたように治安の状況は悪化の一途をたどっている。問題は複雑に絡み合っている。治安の悪化は既定の政治プロセスを強引に進めようとしている結果ともいえる一方、治安問題の解決には既定の政治プロセスを強行するしかなく、治安の悪化はその過程としての止むを得ない一時的な現象と考えることもできる。しかし、このプロセスがいかに多くの問題を孕(はら)んでいるかは知っておく必要がある。次回第三部ではこのことを書きたいと思う。


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