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2013年11月11日 【 避難民向け住居への給水活動

ウォーターヤードは誰のもの(2)閑散とした給水所

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2013年11月11日 更新

(前回より続く)

ガルドゥッド地区のウォーターヤードガルドゥッド地区のウォーターヤード

最初に訪問したのはカドグリ市街の北東、ガルドゥッド地区にあるウォーターヤードです。この辺りは、今年5月に多くの避難民を受け入れJVCが支援物資を配布した地区でもあります。

「おお、でっかいウォーターヤードだなあ」
JVCスタッフのアドランとタイーブが、給水塔を見上げて感心しています。ここにウォーターヤードがあることは以前から知っていましたが、近くに来てみてみるとその大きさを実感します。

「タンクには1万ガロン(約4万リットル)の水が入るぞ」
ウォーターヤードの管理人らしい、年配の男性が出てきて教えてくれました。

「そうですか、やっぱり大きいですね・・あ、すみません、私たちJVCから来ました。今、ウォーターヤードのことを調べているのですが、少し話を聞かせてもらえますか?」
「ほお、そうかい。こっち来て、お茶でも飲んで行けよ」

管理人の男性は暇を持てあましているのか、ちょうどよい話し相手ができたと喜んでいるようです。というのも、ウォーターヤードは立派なのに、閑散としていて誰も利用している気配がないのです。

お茶をごちそうになりながら話を聞くと、2012年に外国の援助で建設されたこのウォーターヤードは、水公社が運営をしています。管理人は近辺の住民が請け負って水公社から手当を支給されています。

管理人さんに話を聞くタイーブ(左)管理人さんに話を聞くタイーブ(左)

「オレはね、月に300スーダンポンドもらってるんだ」
いや、管理人さんの手当の金額を聞いたわけじゃないのですが・・でも、参考になります。
「さっきから誰も、水を汲みに来ていないようなのですが・・」
タイーブは、それが気になって仕方ありません。

「そうだなあ、もうすぐ来るだろうよ」
「1日に何人くらいが来るのですか?」
「今はまだ雨季で少ないから、1日に20人か30人くらいだね」
「たったの30人?」
この辺りには、何百世帯という人々が住んでいるのです。

「だって、近所に手押しポンプの井戸があるからね。そっちは無料だし、みんなそっちに行くよ」
そうです。水公社が運営するウォーターヤードは有料なのです。
「家畜はどうですか?水を飲みに来ますか?」
「乾季には少し来るが、雨季はゼロだね。ロバの水売りは、1日10台くらい来るかなあ・・」
「じゃあ、給水タンクの水はあまり減りませんね。1日何回くらいポンプで汲み上げるのですか?」
「1回汲み上げれば、1週間はもつよ」
「いっ、1週間?」

これには驚きました。いくら水の使用量が少ない雨季とはいえ、1週間に一度しか汲み上げないのでは、せっかくの立派な施設が泣いています。
管理人さんにお礼を言って、ウォーターヤードを後にしました。近くにある手押しポンプ井戸をのぞいてみると、こちらは水汲みに来た主婦や子供でにぎわっています。

閑散としている給水所閑散としている給水所

他にも何か所か市内のウォーターヤードを訪ねましたが、状況は似たり寄ったりでした。水公社が運営するもの、また個人経営のものもありましたが、どこも「ポリタンク5個で1スーダンポンド」の料金を徴収しています。そして、周辺住民の利用はほんのわずか。主な利用者はロバの水売りや家畜を連れてくる牧畜民で、それも乾季に集中するようです。

「せっかくウォーターヤードを作っても、これじゃ意味がないな」
アドランは、そう思いました。

避難民向け住居の設置を中心となって担ったのは、州政府の社会開発省です。「生みの親」であるこの社会開発省に、JVCスタッフは相談に行ってみました。大臣の次官が快く応対してくれました。

「ですので、避難民向け住居に設置するウォーターヤードの運営を水公社に任せれば、生活用水を有料で利用することになります。手押しポンプ井戸では不足だからウォーターヤードを設置するのに、それが有料になったら住民はみな、混雑していても無料の手押しポンプ井戸に行ってしまいます」
アドランは、自分が見てきたカドグリ周辺のウォーターヤードの事情を説明しました。

「なので、住民がウォーターヤードを自分たちで運営して、利用料を無料、またはできるだけ安くするしかないように思います」
「いや、アドラン、話は分かるがちょっと待て」
と次官が話を遮りました。

「そうは言っても、やはり住民による運営は簡単ではないと思う。もういちど水公社に行って、運営は公社がやるけれども住民の利用料を無料にするように掛け合ってみようじゃないか。あそこの住民は全員が避難民だ。特別な配慮があって然るべきだろう」
次官はすぐに水公社に電話をして、局長との面会の約束を取り付けました。

翌日、社会開発省の次官と水公社の局長、それにJVCスタッフが水公社の応接室に集まりました。ふかふかのソファに座って世間話をすませると、次官が話を切り出しました。

「例のウォーターヤードの件だがね、あそこは、避難民の中でもとりわけ困っている人のために州政府と国連が作った特別な住宅だ。それを配慮して、生活用水の利用を無料にしてもらえないだろうか」
そう尋ねると、局長はにべもなく
「あなたも知っていると思うが、我々がウォーターヤードを運営する時には、料金を徴収することが州のルールで定められている。それを曲げるわけにはいかないんだ」
「では、何か手はないのか?」
「住民が自分たちで運営するしかないね。その上で、あなたがた社会開発省が住民に運営資金を補助するとか、できないのか」

逆に局長のほうが次官に切り返してきました。
「うーん、それも難しいな・・まあ、今回は仕方がないか」
なんと、次官はあっさりと引き下がってしまいました。

帰り道、見るからに落ち込んでいるアドランに
「そうがっかりするな。ウォーターヤードさえ完成すれば、誰かが助けてくれるさ」
と次官が声を掛けてきました。しかし、いったい誰が?
「次官、とにかく住民の皆さんと話をしようと思います」
「そうだな。それはいいな。その時は私も呼んでくれ」

こうして、結論は住民との話し合いに持ち込まれることになりました。

(続く)

【おことわり】
現在、JVC現地代表の今井をはじめNGO外国人スタッフが南コルドファン州に入ることは、スーダン政府により制限されています。このため、2012年1月以降の「現地便り」はカドグリの状況や活動の様子を、JVCスーダン人スタッフの報告に基づき今井(首都ハルツームに駐在)が執筆したものです。

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