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緊急支援スタッフ、カドグリへ

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2012年1月 5日 更新

6月に戦闘が始まって以来、南コルドファン州は敵対する陣営によってふたつの地域に分割されてしまいました。政府軍が掌握する地域と、反政府軍であるスーダン人民解放軍(SPLA-N)の影響下にある地域です。

州都カドグリをはじめ主要な町は、激しい市街戦の末に政府軍が制圧。カドグリから首都ハルツームに向かって北に延びる物資の補給路は、政府軍が厳戒態勢を敷いて守っています。

一方で、SPLM-Nは「ヌバ山地」と呼ばれる丘陵地帯を広く掌握。私たちの従来の活動地であるエル=ブラム郡、タロディ郡の村々もこの中にあります。

両軍ともに、相手の侵攻を防ぐために地雷を埋設する一方、勢力範囲を広げようと各地で衝突を繰り返しています。政府軍の地上部隊が到達できないSPLM-N支配地域の丘陵部では、空軍による爆撃が続けられています。

治安が比較的落ち着いたカドグリには、戦闘が行われている村落部から1万人を超える避難民が押し寄せてきています。多くの人々が学校や広場で寝泊まりをし、生活物資は支援に頼らざるを得ません。しかしながら、避難民に対する支援活動は困難を極めています。

まず、私も含めて国連やNGOの外国人スタッフは、政府から「情勢が不安定」を理由に南コルドファン州への立ち入りが許可されていません。現地での活動が認められているのはスーダン人だけですが、スーダン人スタッフを現地に配置するのも容易ではありません。

戦闘が始まって以来、各団体のスーダン人スタッフのほとんどは事務所があるカドグリから退避しました。ハルツームに退避したスタッフもいれば、州内の別の場所に避難して連絡が途絶えたスタッフも少なくありません。JVCのたった一人のスタッフも、やはり6月の戦闘の後は連絡が途絶えています。

このようにスタッフが減少した上、いったんハルツームに退避したスタッフを再度カドグリに戻すことも、そう簡単ではありません。なぜなら、カドグリに至る道路沿いには政府軍・警察による何重もの検問が張られ、国連や国際NGOなど「外国団体」で活動をしてきたスタッフほど「SPLA-Nメンバー」と疑われて拘束されやすいのです。政府には「内戦中から今日まで、外国団体はSPLAを支援してきた」という警戒心があるからです(しかし具体的な証拠が示されたことはない)。

実際、国連や国際NGOのスーダン人スタッフが軍・警察に拘束される事件も起きています。私たちNGOの側からすると、カドグリにスタッフを送り出そうにも、果たして安全が確保できるのかどうか判断に迷います。

そして結果的には、ほとんどの国際NGOがカドグリ周辺での活動を再開できずにいるのです。

緊急支援スタッフ

さて、いったいどうしたものか。

JVCとして避難民支援を実施したいものの、現地にスタッフは誰もいません。誰かを臨時スタッフとしてカドグリに配置しなくては話になりません。

ひとりなら、アテがあります。私たちの協力団体NMIAD(ヌミアッド)のボランティアで、これまでJVCと行動をともにしてきたイルアミンです。彼女はハルツームに避難した後、ほどなくカドグリの自宅に戻り、ボランティアとして避難民支援の手伝いをしています。

しかし、彼女ひとりでは荷が重すぎます。もうひとり必要だ、と考えていると、ユヌスさんの顔が思い浮かびました。そう、元々カドグリ市民で、ハルツームに避難した後もカドグリとの往復をしているユヌスさんなら、何の問題もなくカドグリに入れるはずです。

(ユヌスさんについては、前回記事「カドグリ市街戦の夜(1) (2) (3)」をご参照ください)

ユヌスさんのハルツームでの住まいは、町の中心からバスに乗って青ナイル川を渡り、さらに30分ほど走った場所にありました。カドグリの本宅とは別に、南コルドファンやダルフールの出身者が多いこの地区に小さな家を持っています。

私の姿を見つけて子どもたちが走ってきました。カドグリでは、よく一緒に自転車で遊んだ仲です。子どもに招かれて家に入ると、ユヌスさんと奥さんが待っていました。

「なかなか、いい家じゃないですか」と言う私に、奥さんは「カドグリの家に比べたら狭くて使いにくい」と少し不満そうです。子どもは5人。幼い1人を除いて4人が小学校に通っています。カドグリからの避難後、みなハルツームの学校に転校しました。

「こっちの学校もいいけど、早くカドグリの学校に戻りたい」と言うのは、2年生になる次男。「どうして?」と尋ねると、「友達があっちにいるから」

私はユヌスさんにあらためて、緊急支援のためJVCの臨時スタッフとして働いてくれるようお願いしました。

「もちろん、そのつもりさ。喜んでカドグリに行くよ」
二つ返事で承諾してくれました。

この緊急支援については、現地の調整役である州の人道支援局から「新たに到着した避難民に食料を配布して欲しい」と要請されています。私たちは、カドグリの市場で調達する食料の内容や量、配布方法について話し合いました。

「そうだ、このカメラを持って行って配布の様子を撮影して下さい」

私がバッグからデジカメを取り出すと、ユヌスさんは微妙に困った顔をしました。

「使ったこと、ありますか?」

「...うーん、始めてだ」

「じゃあ、ちょっと練習してみましょう」

ということでユヌスさんがレンズをあちこちに向けていると、早速子どもたちが集まってきました。 はい、ポーズ。

sudan1112271.jpg

「おお、なかなかよく撮れてるじゃないですか」

「そうか、そうか」そう笑うユヌスさんを見て、家族から引き離してカドグリに派遣するのが、少し申し訳なく思えてきました。

「ユヌスさん、しばらく家族と離れ離れになってしまいますが...」

「おお、そんなこと気にすることないさ。大事な活動だって、みんな分かってくれているよ。それに、どのみち1月には家族でカドグリに戻ろうと思っているんだ。小学校の新学期が始まる前にね」

その数日後の11月18日、朝7時のバスでユヌスさんはカドグリへと旅立っていきました。

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