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村人はカヤの外?

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2010年10月26日 更新

新規事業開始にともなう幾つかの手続きをハルツームで済ませ、9月中旬、久しぶりに南コルドファン州の州都カドグリに戻ってきました。さっそく、現地の協力団体であるNMIAD(ヌミアッド)スタッフのイブラヒムさんに会い、事業予定地であるメレ村の様子を尋ねてみます。

「ある国際NGOがね、井戸の修理をすることになったんだ。もう機材を運び入れているよ」と彼が言うので、私は少しびっくり。前回私が訪問した6月に「井戸が足りない」と言っていたこの村は(7月2日付「11本の井戸の謎」)、同時に「どこのNGOも村を支援してくれない」と嘆いていました。それがたった3ヶ月で、支援団体が現れて既に修理を始めたようです。

「前に村を訪問した時には、そんな話は全然聞かなかったけどな。急に決まったのかな」とつぶやく私に、イブラヒムさんは「その団体、予算が余ってたんじゃないのか」などと勝手なことを言っていますが、真相は分かりません。

メレ村も隣のウドゥ村も、私が初めて訪問した時に「いままで数々のNGOが調査と称して村に来ては同じような質問を繰り返していったが、ひとつとして戻ってこなかった」と不満を漏らしていました。ウドゥ村では「学校を建設する」と約束した団体が、その後姿を消してしまったことさえあります。メレ村も、井戸の件を国連機関に訴え続けていたのですが、全く反応がなかったといいます。

それが急転直下、メレ村には井戸の支援が入ることになったわけです。

村の人はきっと喜んでいるに違いありませんが、私は少し別のことを考えていました。村人にとって、NGOの支援とはある日突然に天から降ってくる幸運のようなものなのでしょうか。或いは、いつやってくるか分からない「白馬の王子様」なのか?この王子様はずいぶん気まぐれで、スポンサー(資金を提供する助成団体など)の都合で姿を現わしたり消したり、来るか来るかと期待をさせて来なかったり、これでは村にとってはありがたいのか迷惑なのか分かりません。

事業を始めるにあたり、南コルドファン州の幾つかの地域を調査のため訪れた私たちは、「井戸がない」「学校がない」と言いながら王子様を待ち詫びている村々の姿を目にしました。いつ来るとも分からない援助なんかアテにせず、自分たちで何とかすればいいとも言えますが(実際、ある牧畜民のグループは自分たちで資金を用意して井戸を掘削していた)、「隣の村には来たぞ」「次はウチかも知れない」となれば、なんとなく待っていたくなるのが人情かも知れません。

彼から見れば、調査のために立ち寄って期待させるだけに終わった私たちの訪問自体、いい迷惑だったのでしょう。

「王子様」にも言い分はあって、自分たちは常に国連機関や地方行政と調整をしながら、どこの地区に井戸が足りないから掘削するとか、どの地区に学校を建設するとかを決めている、財政状況などによって計画変更を余儀なくされることもあるけれど、可能な限り全体で調整しているんだ、と言うことになるでしょう。

しかし、こうした調整会議に村人が参加できるわけではありません。常に村人はカヤの外に置かれ、どこか知らないところで物事が決まっていくわけです。

私たちの新規事業を承認してもらうため、首都ハルツームの人道支援局や州政府、また国連スタッフなど多くの関係者と話をしてきましたが、不思議なのは、誰一人として「あなたは村人と話し合いましたか?」「村の人は活動計画に何と言っていますか?」と質問してきません。何か、「援助はよいもの」という暗黙の前提があって、別に事前に村人が知っていようがいまいが、いいことなんだから村も喜ぶはずだろう、と皆が疑問を持たずにいるように見えます。

しかし、先にも書いたように、世の中には「ありがた迷惑」ということもあるわけです。

南コルドファン州で実施した調査の一コマ南コルドファン州で実施した調査の一コマ

7月2日付の記事「11本の井戸の謎」で、これまで壊れた井戸が修理されることなく、次々に新しい井戸が掘削されていったことをご紹介しました。その後、この話を井戸掘削事業に詳しい友人にしたところ、次のような話を聞きました。

事業計画を立案する時に、「補修」よりも「新規掘削」のほうがラクなのは間違いない。「補修」の場合には、実際に現場に行って井戸の状態を確認しないことには、コストの見積もりや、そもそも補修が可能か不可能かさえ分からない。助成団体など資金提供者に説明する際に「補修可能かどうか分かりません」「いくらかかるか分かりません」では話にならないので、いっそ「全部新規掘削」にした方が費用の見積もりも立てやすく、資金提供者にも説明がしやすく、作業が進めやすい。

という話でした。もちろん、メレ村で井戸が補修されず新規にどんどん掘られていったのが実際にこのような理由なのかどうか、断言はできません。

しかし、最近よく言われる「アカウンタビリティ」(説明責任)とは、どうも資金提供者など援助する側に対するアカウンタビリティであって、村人に対する説明責任は一体どこに行ってしまったのか、と感じるのは私だけでしょうか。資金提供者に対しては「プロジェクトの計画はこうです。この地域で実施します。井戸は新規に何本掘ります。コストの見積もりはこうです」という説明責任が求められているのに、当事者である村には何も知らされないまま、ある日いきなり援助団体が「資金が取れたから井戸を掘ってあげるね」とやってくる。

本来なら、なぜこれまで井戸が補修されなかったのか、村人は補修方法のトレーニングを受けていたのか、補修のためのスペアパーツは揃っていたのか、それとも補修不可能な状態なのか・・・そういったことについて村人と話し合いがなされて始めて、井戸の補修や新規掘削が決められるべきでしょう。しかし、手間ヒマかけてそんなことをやっていては「援助する側」への説明責任が取れないようです。

メレ村で、壊れたまま放置されていた井戸メレ村で、壊れたまま放置されていた井戸

では、私たちの活動がどうかと言えば、「ほかの団体とは違いますよ。ちゃんと村人と話し合っていますよ」などと言える訳では決してなく、事業地や事業内容を選ぶ段階では、やはりJVCの判断で進めざるを得ません。最終的に事業に対する現地政府の許可が下りるまでは村に入ることも難しいため、村人は「日本の団体が支援活動を始める」ことは知っていても、まだ活動の詳細について十分な話し合いを持てていません。事業への最終的な許可は、今月中にも下りる見込みです。

私たちがメレ村、ウドゥ村で始めるのは、生活再建を通じて地域の安定を図る平和構築事業。詳しくは別の機会に譲りますが、村人の生活を改善する方法を「JVCが決める」のではなく、元々村にあるのに見過ごされている資源(森林や水、動植物などの自然資源、伝統的な技術や知恵)を村人と一緒に探しながら、それをどう活用して暮らしを豊かにしていくのかを一緒に考えていきます。ですから、村人がカヤの外に置かれてしまったら、そもそもこの活動は成立しません。

資金提供者やスーダン政府からは「JVCが実施するサービス内容を最初から明確にして欲しい」と渋い顔をされることもありますが(笑)、活動の趣旨は少しずつ理解していただけると思っています。


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