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卒業生、転職に揺れる心情

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2010年9月22日 更新

一説に「人口50万人」とも言われるジュバですが、そんなに大きな都市とは思えないほど、行く先々で多くの知り合いに出会います。

バス乗り場の近くを歩いていたら、向こうからバイクの二人乗りで登場したのはJVCの車両整備・職業訓練プロジェクトで第1期研修生(2008年12月卒業)だったモモ。後ろに乗せているのは私の知らない女性だったので「また彼女を替えたのか!?」と思いきや、私の疑問を先読みしたモモは「親戚だよ、親戚」と弁明。とにかく、何ヶ月振りかの再会を喜んで「親戚」の彼女も一緒に昼食を食べにいきました。

「ところでモモ、運転手の仕事は続けてるのか?」と尋ねると、「今年の初めに辞めたよ。給料が払われないんじゃどうしようもない」とのこと。彼が勤務していたのは南部スーダン自治政府の水産省でしたが、他の公務員と同じく、給料の未配、遅配が続いていたようです。

「じゃあ、今は何してるんだ?」と聞くと、大きな魚をほおばりながら「山のふもとのビール工場、知ってるよね。あそこで働いてるんだ」

もう2年前になりますが、南アフリカ資本の飲料メーカーがジュバに進出。町外れの山のふもとに工場を建て、史上初の南部スーダン産ビールの生産が始まりました。その名も「ホワイト・ブル」(白い牡牛)。南部スーダンの幾つかの民族集団はウシを神聖視していますが、それにちなんだネーミングです。当時ジュバの話題をさらったこのビール、みんなワクワクして飲んでみましたが味はイマイチで、今ではほとんどのレストラン、バーから姿を消してしまいました。しかしビールはダメでも、同じメーカーのジュースは大ヒット。コーラなどの缶飲料が2スーダンポンドする中で、1ポンド(約35円)の瓶ジュースを発売したため、一気に人気商品になりました。

「そのジュースをね、瓶詰めする機械の操作員をしているんだ」というモモ。携帯電話のカメラで撮影した工場の動画を見せてくれました。コンベアに満載の空瓶が流れてきて、機械の注入口から次々にジュースが注がれていく・・・ただそれだけですが、モモは「どうだ。これがオレの仕事だ」という感じで自慢げな顔をしています。車両整備の研修で得た技術がこの仕事に生かされているのか、研修を実施した立場の私にとっては微妙なところですが、まあ、安定した職に就いたのだから本人にはとっては良いことに違いありません。

毎月の給料もきちんと払われているようで、以前だったら私にメシをたかっていたのに、平らげた魚料理と「親戚」の分の払いもモモは自分で済ませていきました。感心、感心。

余談ですが、南部スーダンの多くの人々は魚好きで、貴重なたんぱく源になっています。伝統的に、ナイル水系の川や湖沼では魚採りが盛んに行われてきました。ウシを神聖視する牧畜民(と一般に呼ばれている人々)も、川岸で家畜に水を飲ませると同時に魚採りをしていたのです。漁労は重要な生業であり、だからこそ自治政府にも「水産省」があるわけです。

研修生時代のモモ、成績はダメだが誰からも好かれるキャラクターだった研修生時代のモモ、成績はダメだが誰からも好かれるキャラクターだった

話を元に戻しましょう。卒業生の「今」です。

モモによれば、飲料工場では南アフリカから派遣された技術者のほかに約200人のスーダン人が働いており、ジュバではかなり大きな雇用の受け皿になっているようです。モモのほかにも、第1期卒業生のアバテ(機械操作員)、第2期卒業生のロクレ(運転手兼整備士)、合計3人の卒業生がここで働いていることが分かりました。

元JVC整備工場、現在のSCC整備工場に行ってみて驚きました。第1期卒業生のヤカニは1年半もこの整備工場で働いていたのですが、2ヶ月前に突如辞めたというのです。「別の仕事を見つけたらしい」と同僚たちは言います。

偶然にも数日後、ヤカニはふらっと整備工場にやってきました。「辞めたって聞いたからびっくりしたぞ。今何をしてるんだ?」と聞くと、「国際NGOの運転手兼整備士の職を見つけて、東エクアトリア州で働いている。今、最初の休暇でジュバに戻ってきたんだ」という答えが返ってきました。

「でも、せっかく整備士として腕を上げてきたのに、なんで工場を辞めちゃったんだ。NGOの運転手兼整備士は日常点検と簡単な整備の繰り返しだから、整備の腕は上がらないって分かってるじゃないか」と尋ねる私。

「そうだけど・・どうして転職したのかって、自分でもよく分からないんだ」と答えるヤカニ。

「分からない」と彼は言いますが、実は「スーダン人が経営するSCC工場より、国連や国際NGOに就職したい」という気持ちは彼だけでなく他の卒業生も持っています。「スーダン人の経営」に対する不安が若い世代には強くあるようです。

しかし、国際機関に就職すればハッピーなのかと言えば、必ずしもそうではありません。やはり第1期卒業生のジスマルは、SCC整備工場を退職してドイツ政府系の援助機関に就職しましたが、「SCC工場に復帰させてくれ」と工場長に泣きついてきたそうです。理由は「給料が安すぎる」。スーダン人整備士は「見習い」のような立場に置かれているため、「国際機関」のイメージとは裏腹に賃金は抑えられているようです。

しかし工場長は「一度は工場を袖にして出て行ったのだから、簡単に復帰を認めたら他の従業員に示しがつかない」と言って復帰を認めなかったそうです。

SCC整備工場で働いていた頃のヤカニ。細かいことにも良く気づく整備士だったSCC整備工場で働いていた頃のヤカニ。細かいことにも良く気づく整備士だった

スーダン人の工場で地道に経験を積むか、それとも外国の援助機関を渡り歩くか。社会が復興の過程にある中で卒業生たちの気持ちは揺れています。それでも、身に付けた技術を武器に就職のチャンスがある彼らは、仕事を見つける糸口すらない多くの若者よりも格段に有利な立場にあると言えるのでしょう。


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