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援助する側、される側

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2010年7月20日 更新

前回の記事でご紹介した通り、苦労してタロディ郡にたどり着いたのはよいのですが、私が到着したのは郡役場があるタロディの町。事業候補地の村々は、ここから更に足を延ばさなくてはなりません。

「雨季の今は道路が冠水しており、クルマで行くのは難しい。トラクターを探してみよう」と言うのは、私たちの協力団体である地元NGO「ムバディルーン」のスタッフ、バグダディさん。「スタッフ」と言っても常勤ではなく、自分の仕事を持ちながら必要な時にNGOの業務に携わる非常勤スタッフです。「先祖がイラクのバグダッドからやってきたのが名前の由来」というバグダディさんは、タロディ高校の地理教師をしていましたが、なんと、最近校長先生に昇進したのだそうです。

「校長先生、今日は学校に行かなくていいの?」とからかうと、「学校は試験が終わって今は休暇中さ」とのこと。早速、私たちはトラクターを探しに町の中心、市場に出かけました。

この地域では、トラクターは畑を耕作するだけでなく、或いはそれ以上に輸送手段として重要です。持ち主をたずねて歩きましたが、みな「もう客を乗せて村に行ってしまったよ」という答え。やはり引っ張りだこのようです。

「仕方がない、バイクで行こう」とバグダディさん。なるほど、バイクなら途中で泥水にはまっても、人間が押していくことができます。さっそく運転手付きで2台を調達し、目指す村に向けて出発しました。

こじんまりしたタロディの市場こじんまりしたタロディの市場

タロディ郡は、南コルドファン州の南東、ヌバ山地の南端からナイル川に向かって続く平原地帯に位置しています。行政の中心地、タロディの町はヌバの山々を背後にちょうど平原が始まる場所にあります。

町を出たバイクは、しばらく山裾に沿って走ります。岩だらけの山肌からは、たくさんの水が湧き出して、幾重もの流れを作っています。水をたっぷり含んだ大地は緑のじゅうたんに覆われ、木々の新緑が目にも鮮やかです。

バオバブの実。種をかじると、口の中に酸味が広がるバオバブの実。種をかじると、口の中に酸味が広がる

バオバブの林に囲まれた村にさしかかりました。乾季には葉を落とすバオバブも、今は若葉を繁らせ大きな木陰を作っています。バオバブはその昔、人々が村に植えて育てたのだと聞きました。実を食用やジュースにするほか、葉は料理に使い、樹皮を剥いでロープを作るなど、とても生活に役立つ木です。

バオバブの村を過ぎて道を左に折れ、こんどは山を背にして走ります。草をはむヤギの群れを見ながらしばらく走ると、一面冠水した湿地帯に出ました。バイクはタイヤを泥に取られ、なかなか前に進むことができません。仕方なく、私とバグダディさんはバイクを降りて歩くことにしました。運転手は泥道の中バイクを押していきます。

泥道をゆくバイク。粘土質の土にタイヤを取られてなかなか前進しない泥道をゆくバイク。粘土質の土にタイヤを取られてなかなか前進しない

そんな湿地帯を泥だらけになって30分以上も進むと、左手に堤防が見えてきました。バイクで堤防の上に上がると、小さなダム貯水池がありました。「家畜の飲料水のために州政府が作ったんだ。近くの村人もこの水を飲んでいるみたいだけどね」とバグダディさん。でも、家畜の姿はなく貯水池の周囲は閑散としています。「今は雨季だから、牧畜民は家畜を連れて北の方に移動したのさ。11月頃の乾期になるとまた戻ってきて、ウシやラクダが幾らでも見られるぞ」

ダム貯水池にて。バイクの後部座席はバグダディさんダム貯水池にて。バイクの後部座席はバグダディさん

貯水池を通り過ぎると、今日の目的地、モロ村が見えてきました。この村で、主として井戸や学校など社会インフラの状態を把握するのが今回の訪問目的です。

村の周囲は草が芽吹いて一面の緑。耕作シーズンが始まり、鍬を手にした人々は畑仕事に忙しそうです。集会所で、村のリーダーに会いました。

村の集会所にて村の集会所にて

250家族が住むというこの村のリーダー、オマールさんは「乾期には水が確保できずに困っている」と切り出しました。3〜4月には貯水池が干上がり、住民もその家畜も飲料水に事欠くと言います。井戸はありますが、3本のうち1本は壊れており、残り2本のうち1本は乾期にはやはり干上がるそうです。「だから村人は45分歩いて隣の村から水を汲んでくることもある」とオマールさん。「壊れた井戸は修理できないのですか?」と尋ねると、これは元々ユニセフが掘削したもので、壊れた井戸を見に来たユニセフ職員は「修理は無理」と言い残して帰ったそうです。技術的に無理なのか、資金的に無理なのか、それはよく分かりません。

壊れた井戸。ユニセフからは修理不能と言われた壊れた井戸。ユニセフからは修理不能と言われた

村には小さな診療所がありましたが、閉鎖されているようです。「薬がないから全然役に立たないのさ。病気になったら診療所ではなくタロディの町まで行くよ」と村人が説明してくれました。以前は、ある国際NGOが提供してくれる薬品があったのだそうですが、そのNGOが2009年に国外追放処分(註)を受け、薬の供給はストップしたのだそうです。

診療所には誰もおらず、扉も閉じられていた診療所には誰もおらず、扉も閉じられていた

学校を見せてもらいました。他の多くの村々と同じように、草葺の仮設教室が並んでいます。「新しい校舎をCDF(Community Development Fund。欧米の政府開発援助の資金を利用してスーダンの復興開発を実施する機関)が建設してくれることになっているんだ」とオマールさん。「ほら、こうして村では建設資材も集めているんだ」と、学校の脇に積まれた砂や石を指差して見せてくれました。

「いつ頃に工事が始まるんですか?」と尋ねると「もう長い間待っているのだが、いつになっても始まらない。先月、CDFスタッフが村にやってきて建設予定地を見ていったけど、私たちには何も言わずに帰って行った」

学校建設用の資材。後ろに見えるのは現在の校舎学校建設用の資材。後ろに見えるのは現在の校舎

本当はもっと先の村まで足を延ばしたかったのですが、村人によると「この先の川が増水しており、渡るのは無理」だそうです。私たちもバイクの運転手も泥道でへとへとに疲れていたこともあり、元の道を引き返すことにしました。

その夜、タロディの町の路上喫茶でお茶を飲んでいると、たまたまCDFのスタッフと出会いました。モロ村の学校建設について村で聞いた話をして「いったいどうなっちゃったんでしょうね?」と水を向けると、彼が言うには「あの村には問題があるんだ。村人が自分たちで資材を集めることが建設の条件になっているが、彼らが集めた資材はほんのわずかで、条件を満たしていない。だから工事は保留になっている」とのこと。

「でも、リーダーは何の説明も受けていないって言っていましたよ」と尋ねると、「さあ、それは俺にも分からないなあ・・」

事態の真相は不明ですが、いずれにせよ、学校建設がどう進展しているのか、何故ストップしているのか、「当事者」の村人はよく分かっていないようです。学校だけでなく、井戸の修理にせよ、診療所の運営にせよ、すべて「援助団体まかせ」になっていて、援助団体がいなくなったら村は何もできず、そのまま放置されているようにも見えます。

こうした事例はこの村だけに限りません。前々回の記事(「11本の井戸の謎」)で紹介したケースでも、多数の壊れた井戸が放置されており、村人は「修理の仕方を教わっていない」「壊れても援助団体は来てくれない」と言っていました。ひとつの問題として、内戦後にこの地域で実施された援助が「緊急支援」の位置付けだったため、井戸や診療所を作ることだけに資金が投入され、村人が継続的に補修や運営をしていくための研修や体制づくりが軽視されたという事実があります。もうひとつの問題として、村人自身の側にも「援助を待っていればよい」という受け身の意識、或いは当事者意識の欠如のようなものが見受けられるのも確かです。

大量の援助がこうした意識を植え付けてしまった、とも言えますが、それとも、本当は井戸や学校や診療所はそれほど深刻な問題ではないから放置しているのでしょうか?

援助する側の問題、そして援助される側の問題。色々と考えさせられる、タロディ郡訪問でした。

村からの帰り道、泥だらけになったバイクを小川で洗濯村からの帰り道、泥だらけになったバイクを小川で洗濯

:昨年3月、国際刑事裁判所(ICC)が「ダルフールにおける人道に反する罪」等によりスーダンのアル=バシール大統領に逮捕状を発布。それに反発したスーダン政府はダルフールで活動する欧米NGO13団体の国外追放を決定した。これにより、13団体はダルフールのみならず南コルドファンを含む他の地域(南部は除く)からも撤退を余儀なくされた。


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