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ヌバ山地の旅(スーダン旅日記その3・後編)

JVCスーダン現地代表 今井 高樹
2009年10月 1日 更新

スーダン旅日記
南コルドファン州ヌバ山地の訪問記(後編)です。


ヌバ山地に戻る日、カドグリの町で朝一番の乗合自動車(小型トラック)に乗り込み出発したまではよかったのですが、郊外の川が増水していて渡れません。ヌバ山地に戻るには何本かの川を渡らなければなりませんが、どの川にも橋がないのです。やむなくトラックは予定の道路を離れ、橋のある場所まで2時間をかけて迂回。やっと渡ったと思ったら、今度はタイヤがパンク。運転手は「近くの村で修理をしてくる」と言ったきり、いつまでたっても戻ってきません。やがて、土砂降りの雨が降り始めました。荷台の乗客たちはビニールシートの陰で寄り添うようにしていますが、かなり濡れているようです。

やっと小降りになったのは2時間後でした。

雨で濡れた身体を温めようと、乗客たちは小枝を集めて焚火の支度を始めました。濡れた枝にやっとのことで火がつくと、こんどは女性たちがお茶の準備です。家財道具一式が入っているかのような特大のカバンからヤカンを取り出し、近くの水たまりから汲んだ雨水でお湯を沸かし始めました。お湯が沸くと紅茶の葉と砂糖をたっぷり入れて、はい、できあがり。これまたカバンから取り出したカップに注いで、みんなに配ってくれます。なんという状況対応力!冷え切った身体が、熱いお茶でホカホカと温まっていくのが分かります。

お茶を飲みながら、乗客のひとりサディク・ムハンマドさんと話をしました。「このあたりには満足な道路もない。雨季になると、本当に移動が大変なんだ」と言う彼は、ヌバ山地の出身。今はSPLM(スーダン人民解放運動)のメンバーとして地元の行政官をしているそうです(註)。

「内戦中はハルツームに逃れていたけど、今は家族とヌバに戻ってきた。やっぱり故郷がいちばんさ」イスラム教徒のムハンマドさんは、お茶が終わると、まだ濡れている地面に布を敷き礼拝を始めました。イスラム教徒とキリスト教徒が混在するヌバ山地では、ムハンマドさんのように多くのイスラム教徒がSPLMのメンバーとなっています。スーダン内戦を「イスラム教の北部ハルツーム政府と、キリスト教の南部SPLMの争い」とする見方がありますが、宗教が対立軸ではなかったことは、ヌバ山地で多くのイスラム教徒がSPLMに合流したことからも分かります。

夕方近くなってもまだ運転手は戻ってきません。ほかのクルマが通れば乗せてもらえる可能性がありますが、待っている数時間の間に1台のクルマも通っていないのです。一体どうしたものかと考えていると、遠くから何やら大きな音が聞こえていました。エンジンの音です。

やがて現れたのは、鈴なりの人を乗せた大型トラクター2台。驚いたことに、これが地元の交通手段のようです。「このトラクターで近くの村までいけるぞ」とムハンマドさんが教えてくれます。なんとか頼み込んで乗せてもらうことになりました。

ゆっくり、ゆっくり亀のように進むトラクター。しかし、雨でドロドロになった道路状況では頼もしい存在です。普通のクルマでは泥にハマって身動きできなくなってしまうでしょう。近くの村、ハムラに到着したのはほとんど暗くなる頃でした。

アシーダを口にする今井にはしゃぐ村人。アシーダを口にする今井にはしゃぐ村人。

翌朝、宿泊したロッジで朝食を取っていると、集まっていた地元の人たちが「アシーダを食べてみないか」と言ってきました。アシーダは、ソルガム(モロコシ)の粉をお湯で練った食べ物で、ここではそれにサワーミルクを掛けて食べます。私が住む南部スーダンのジュバ周辺とは、全く違う食べ物です。ウシ牧畜に重きを置く彼らの生活では、ミルクは貴重な栄養源なのでしょう。恐る恐る食べてみた「サワーミルク掛けアシーダ」は、適度な酸味があってなかなかの美味でした。

「上手だねえ!」というと、はにかんでしまった粘土細工作者。一人でうつむいて熱心に土をこねくり回している男の子が、そこかしこに点在していた。「上手だねえ!」というと、はにかんでしまった粘土細工作者。一人でうつむいて熱心に土をこねくり回している男の子が、そこかしこに点在していた。

村の中を散歩すると、子供たちが泥をこねて何かを作っています。いったい何? 近寄ってみると、粘土細工のウシでした。強い粘土質を持つこの地域の土は、粘土遊びには最適でしょう。そして子供たちにとって、ウシは最も身近なものです。家畜の世話は子供たちの仕事なのです。

村の周りにはソルガムの畑が広がり、その向こうに遊牧系の民族グループであるバッガーラの人々のテントが目に留まります。彼らは家畜に与える草や水を求めて、或いは家畜の病気の原因となるハエの発生を避けて、シーズン毎に長い距離を移動します。このあたりは、農耕と牧畜を併せて営む人々と、家畜とともに移動する人々とが共存する地域のようです。

村に戻ると、私たちが頼んだクルマが到着していました。道路状況の悪さから、私たちはヌバ山地の飛行場に戻るのはあきらめ、カドグリに引き返して首都ハルツーム経由でジュバに戻ることにしたのでした。
長くて短い、ヌバの旅でした。

(註)SPLM(スーダン人民解放運動)
内戦を戦った南部スーダン反政府勢力の政治組織。和平協定に従い、現在の南部スーダン自治政府はSPLMが掌握している。ヌバ山地にはSPLMが実効支配を続ける地域があり、ムハンマドさんはそこで行政官をしている。


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