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ガザ:新事業開始 −地域で子どもたちの健康を守っていく取り組み−

パレスチナ現地代表 福田 直美
2011年2月20日 更新

これまでJVCはガザで、現地NGO「人間の大地」とともに、栄養失調になってしまった子どもの治療のための支援を行ってきました。厳しい封鎖により経済が壊滅状態に追い込まれ、一向に回復の兆しを見せないガザでは、貧困が直接子どもたちの健康に影響を与えています。この2月、国連機関が「ガザの失業率が45.4%にまで上がっている」と警鐘を鳴らしました。イスラエルが封鎖の“緩和”を発表した2010年6月以降の44.3%から、さらに上がっているのです。子どもたちが栄養失調状態になってしまう原因はまず、栄養価の高い食事をすることができない、つまり「それらを買うことができない」家庭の経済状況の悪化にあります。しかしこれまでの栄養失調児に対する支援を通して、私たちは、母親たちの栄養・衛生に関する知識が子どもたちの健康を守っていくということを実感してきました。そこで2011年からはガザ市内の3地域で、主に母親たちへの栄養・衛生に関する教育や幼稚園などを通して子どもたちに健康に対する意識向上のための教育を行うことで、地域レベルで子どもたちの栄養状態を改善し、栄養失調を「予防」する支援を行っていくことになりました。

この日、まず訪問したのは、ガザ市ザイトゥーン地区で行われていた、その地域の母親たちに対する貧血に関する講習です。「人間の大地」のトレーニングを受けた2人の「母親リーダー」と呼ばれるボランティアの女性が、食品群と栄養について話し、また貧血については、症状→原因→予防法、とわかりやすいように順番に説明します。参加した母親たちは、母親リーダーに「例えばこの食べ物はどこの食品群に入るの?」「その症状は子どもの年齢によって違うの?」など、次々と積極的に質問を投げます。途中、通りがかりの女子中学生も何人か顔を出して講習に加わりました。「早く学校に行きなさい!」と母親たちに怒られつつも、「こんな事は学校で教わらないから」と興味津々な様子でした。

「貧血の症状は目の下にも出るのよ」と説明する母親リーダー(中央、右)「貧血の症状は目の下にも出るのよ」と説明する母親リーダー(中央、右)

その後、別の2人の母親リーダーと合流し、彼女たちがこの地域で行っている家庭訪問に加わりました。訪問した家のお母さん、サウサンさんには5人の子どもがいます。母親リーダーたちは、まずサウサンさんから家族構成、経済状況、支援を受けているかなどを聞き取ります。そして「24時間リコール」と呼ばれる、過去24時間で子どもにいつ何を食べさせたかについての聞き取りを行いました。その後、この日はロワーンちゃん(2歳2ヶ月)とそのお兄さんのモハメド君(6歳)の身長・体重検査とヘモグロビン値検査を行いました。ロワーンちゃんのヘモグロビン値は10.1%です。11%以下を貧血の基準としているので、軽度の貧血と診断されましたが、一方で足などを見ると「くる病(子どもの軟骨化症)」の症状が出ています。しかしお母さんはそれを母親リーダーに指摘され説明されたこの時まで、ロワーンちゃんのくる病の症状に気がつきませんでした。また、モハメド君のヘモグロビン値は7.8%と重度の貧血でしたが、それも気づかなかったとのことです。母親リーダーたちはサウサンさんに、「ロワーンちゃんもモハメド君も、『人間の大地』でそれぞれ治療を受けるように」と紹介状を書いて渡しました。帰り際、「彼女のように、貧血やくる病の症状を知らないお母さんはたくさんいるの?」と母親リーダーに聞くと、「そうなの。だって誰もそのような教育は受けていないもの。でも一度しっかり学べば、症状を見つけて貧血などを早期に発見できるし、それ以前に予防だってできる」のだそうです。

ロワーンちゃんの血液を採取する母親リーダーたち(左、中央)ロワーンちゃんの血液を採取する母親リーダーたち(左、中央)

そして最後に、幼稚園の先生たちへの講習を見学しました。ガザ市の3地域、12箇所の幼稚園からそれぞれ2名の先生たちが参加しています。「教育」と言っても、相手は幼稚園児。栄養や衛生に関する知識そのものもですが、いかに子どもたちに栄養や衛生などについて興味を持たせ、わかりやすく理解させ、そして実践させるか、その「手法」も大切です。人形劇を作って演じたり、歌を使ったり、子どもたちと一緒に絵を描いたり・・・。参加した先生たちは「人形劇ができたら、うちの幼稚園に見に来てね!」と早くも盛り上がっていました。

半日で3箇所での活動を駆け足で見たこの日。何より驚いたのは、ボランティアで全ての活動を率いている母親リーダーたちの活躍ぶりと誇らしげな表情です。この日活動を見学させてもらった母親リーダーの一人は、「母親リーダーとしての仕事は本当に好きで、楽しんでやっているの。収入にはならないけれども、『自分たちの地域に貢献している』と感じることができるわ。昨日なんて家庭訪問の途中、道で子どもたちに『ドクトーラ(お医者さん)!』って呼ばれたのよ。私たちが家庭訪問で子どもたちの検査をしているのを知っているのね」と嬉しそうに教えてくれました。また、母親たちへの講習では、参加した母親の一人が「私もトレーニングを受けて来年は『母親リーダー』になりたいわ!」と“立候補”していました。

元気いっぱいの母親リーダーたちの活躍と、栄養・衛生に関する正しい知識を得た女性たちが子どもたちの健康を守っていく努力を、これからも応援しながら見守って行きたいと思います。


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