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養蜂始めました。

パレスチナ現地代表 福田 直美
2010年1月30日 更新
春の到来。西岸の地はいっせいに緑になった春の到来。西岸の地はいっせいに緑になった

例年より暖かく、一足先に春が訪れたパレスチナ。「養蜂を始めるなら今がいい時季だよ」と友人に言われて、これまで挑戦したかったけれども二の足を踏んでいた蜂蜜作りを、とうとうスタートさせました。養蜂に興味を持ったのは1年以上前。友人の村で体験させてもらって以来、ミツバチたちの一生懸命働く健気さと養蜂の奥の深さにずっと、「いつかやってみたいなあ」と思って、時々養蜂プロジェクトのフォローアップに行く友人についていっては勉強させてもらっていたのです。よく晴れた週末。農具専門店で買い込んだマイ・防護服とグローブその他の道具を一式そろえてやる気満々でご機嫌な私。ナブルスの近くの村で友人の家族が持っている10箱以上の巣箱のうち、2つを私の分として分けてもらったのは先週のこと。ミツバチたちは元気に働いているかな?とワクワクしながらエルサレムからヨルダン川西岸北部のナブルスに向かいます。

道中、異常を感じて路肩に車を止めると、右の前輪がパンクしていました。路上でタイヤを交換するために、三角形の蛍光板の「危険」マークを車の後方に立て、ジャッキを取り出して車を持ち上げます。右側には巨大なオフラ入植地がすぐ目の前に見えます。この道路沿いには入植地を「守る」ようにフェンスがずっと立っており、100mほど先には監視塔が見えます。

すると、後ろから「助けが必要か?」の声が。振り返ると、軍用ジープが止まり2人の若いイスラエル兵が降りてきました。入植者もパレスチナ人も通るこの道路では軍用ジープはよく見かけますし、パレスチナの乗り合いタクシーに乗っていても兵士に止められてIDのチェックをされることもしばしば。イスラエルとエルサレムの住民(東エルサレムの住民も含む)の車のナンバー・プレートは黄色、そして西岸とガザのパレスチナ人の車は緑色。西岸内に住むユダヤ人入植者はもちろん黄色です。そして私が乗っていた車のナンバー・プレートも、エルサレムでの登録のため黄色でした。入植者が多く通るこの道路。この兵士たちはもしかしたら、「入植者が困っている」と思ってジープを止めたのかもしれません。

パンクしたタイヤを手早くスペア・タイヤに交換し、兵士は去っていきました。ナブルスに着きパレスチナ人の友人に起こった事を話すと、「緑のナンバー・プレートだったら兵士は止まらないよ。もし止まったとしたら、助けるどころかIDチェックをするか、5分以内に立ち去るようにと言うだけだろう」といいます。ここに向かう道中、新しいアウト・ポスト(新しい入植者がコンテナーなどを持ち込んで住み着く「前哨入植地」と呼ばれる入植地)をいくつも見かけました。この地域では今も、新しい入植地を作ろうと、もしくは入植地を拡大しようと、コンテナーを持ち込んで生活を始める入植者が後を絶たないそうです。

さて、無事に村に到着し、かわいいミツバチたちにまずは「こんにちは」と挨拶。箱を開けると、一生懸命働いている羽音が大きく、また先週増やしたばかりのフレームにもびっしりとミツバチが集まりよく働いているのがわかりました。先週よりも確実に増えています。セルの中に上半身を突っ込んで蜂蜜作りに勤しむミツバチは、何度見てもかわいいものです。多くのミツバチたちが、両足に花粉を団子状につけて巣箱に帰ってきます。冬の間は花が少ないので砂糖水などでミツバチたちに餌を与えることも必要なのですが、この数週間でアーモンドや野の花がだいぶ開いてきたのです。きっとミツバチたちも、働き甲斐があって楽しい時季なのでしょう。先週よりもさらに元気そうに見えるのはそのせいでしょうか。ミツバチの様子をきちんと観察して、彼らがより仕事をし易いようにケアをしてあげればどんどん増えていくのが、養蜂の面白いところなのです。

こんな絶景の中に住むミツバチたちは幸せ者こんな絶景の中に住むミツバチたちは幸せ者
ミツバチに挨拶。女王蜂はきちんといるでしょうか?ミツバチに挨拶。女王蜂はきちんといるでしょうか?

しかし、ミツバチはあと数十年で地球上からいなくなってしまう、という噂があります。世界各地で、多くのミツバチが「行方不明」になる事件が相次いでいるそうです。原因はまだ不明とされていますが、携帯電話の普及が著しいこのごろ。その電波がミツバチの生態に影響を与えているのが原因と言う人もいます。また、特定の農薬による被害だという声も聞きます。ミツバチがいなくなったら蜂蜜がとれなくなるだけではなく、ミツバチによる受粉が出来ないため農業にも影響が出てくるそうです。人間の「便利な生活」のために、働き者のミツバチたちの生態が変わってしまうことを考えると、ミツバチに対してとても申し訳ない気持ちになってしまいます。

帰り道、友人の家族と一緒に、すぐそばの畑でほうれん草を収穫しました。無農薬で育ったホウレン草は柔らかく甘く、大地の、春の味がします。春先の陽気の中、ヒツジやヤギを放牧しにやってきて、青草の上で寝そべっているおじさんたちもいて、とてものどかな空気が流れています。「パレスチナの人々はずっと、こうやって土地とともに生きてきたんだ」と思いながら少し先の丘に目をやると、そこにはイスラエル軍の軍用ジープが止まっています。あそこから、パレスチナ人の村を監視しているのです。せっかくの春の美しい光景も、入植地やイスラエル軍が目に入っては台無しですがそれ以上に、「もしも今、一緒にいるこの小さな女の子に向かって銃を向けられたら、いったいどうすればいいのだろう」という不安が頭をよぎります。すでにこの村の一部の土地は、入植地と壁の建設でイスラエルによって奪われてしまいました。ずっと土地とともに育ってきた人々の暮らしが、日々恐怖にさらされています。西岸の村々では、壁の建設に反対するデモンストレーションに対する攻撃や、最近では同じく壁の建設に反対する市民運動の団体"Stop the Wall"の活動もイスラエルから強い圧力を受けています。土地に居続け農業を続けていくこともまた、大切な「非暴力の抵抗運動」です。そして、土地を守るために私たちができることは何なのでしょうか。夕暮れ時の帰り道、大きな入植地の間にポツポツと見えるパレスチナ人の村の明かりを見ながらずっとそのことを考えていました。

私のミツバチたちの巣箱からは、入植地が目の前に見える私のミツバチたちの巣箱からは、入植地が目の前に見える

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