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「神様からの贈り物」:お数珠づくりの家族から

パレスチナ現地代表 福田 直美
2010年1月26日 更新

パレスチナで見かける光景に、「ああ、昔はきっと日本もこうだったんだな」と思うことがあります。例えば、小学生くらいの子どもが乳児の弟や妹を抱きかかえて歩いている時。例えば、近所のお母さんが“悪さ”をしたよその家の子どもを叱っている時。ベツレヘムのベイト・ジブリン難民キャンプに住むタマームさんの家族は、私に「家族」というものを改めて考えさせてくれる家族です。

お数珠をつくるタマームさん。その技術は完璧! お数珠をつくるタマームさん。その技術は完璧!

タマームさんには4人の息子、1人の娘がいます。唯一の女の子であるアンワールちゃんは8歳ですが、実はこの子は養子としてタマームさんの家族にやってきました。8年前、ご主人が清掃員として働いていた病院に、緊急に手術が必要な妊婦さんが運ばれてきたそうです。何の病気であったかはわからないそうなのですが、元気に生まれた赤ちゃんを残してその赤ちゃんのお母さんは他界してしまいました。病院に駆けつけたその赤ちゃんのお父さんは、その場にちょうどいたタマームさんの旦那さんにお願いをしたそうです。「この子を養子として引き取ってくれないか」。タマームさんの家族は決して裕福ではありませんが、タマームさんとご主人は、「これも神様からの贈り物」とその場で養子として引き取ることを決めたそうです。「そんなことってあるんだね」と驚くと、「日本ではないの?」と逆に聞かれてしまいました。家族、社会のつながりが希薄化していると言われる現代ですが、考えてみれば昔はこんなことも日本でも起こりえたのかな、と考えさせられます。

タマームさんは昨年12月から、アーユス仏教国際協力ネットワーク様の協力で作っている「平和念珠」の製作に関わり始めました。新しいメンバーを探していた時、女性グループのリーダーは「以前刺繍製品の製作で関わっていて、病気が原因でやめてしまったけれども再開したいといっているメンバーがいるの」と、タマームさんを紹介してくれたのです。実は彼女は2003年に刺繍のプロジェクトを始めた時の初期メンバー。しかしその2年後、扁桃腺の病気を患って仕事をやめざるを得ませんでした。

家の中に残る、2002年の軍事侵攻時の爪跡(ドアの上、右側)家の中に残る、2002年の軍事侵攻時の爪跡(ドアの上、右側)

タマームさんの旦那さんは以前、イスラエルで塗装の仕事をしていましたが2004年に壁が建設されて以来、仕事に行くことができなくなりました。今はヨルダン川西岸地区で日雇いの仕事をしていますが、仕事を見つけるのは容易ではなく「ここ1ヶ月は仕事がない」そうです。また、旦那さんは目の病気を患っています。第二次インティファーダが始まりベツレヘムに軍事侵攻があった2002年、タマームさんの家も外からの砲撃を浴びました。家族全員が家の中にいたそうで、今もその砲撃や銃弾の跡が家の中にも残っています。旦那さんの目の状態はこの事件以来悪化しているそうで、高度な手術が必要な状態なのですが、その治療費はありません。
タマームさんは、働くことが難しい旦那さんの代わりにUNRWA(国連パレスチナ難民救済事業機関)の雇用創出のプログラムに応募し施設の掃除などの仕事を得ましたが、この2年で2回(最初は1ヶ月間、2度目は3ヶ月間)のチャンスしかありませんでした。お数珠の製作で得られる収入は、頭に腫瘍がある息子さんの検査費用とタマームさんの病気の治療のための薬代、それから食費など日々の生活費に充てています。現在、15歳の息子2人を含む5人の子どもを育てており、「子どもたちは今はUNRWAの学校に行っているから学費はかからないけれども、子どもたちを大学に行かせたいからそれまでには何とかしなきゃ」とタマームさんは言います。旦那さん、息子さん、そしてタマームさん自身も病を患い、経済的に厳しい状況でありながら、その笑顔は穏やかなやさしさがあふれていました。

 タマームさんと子どもたち。居間にはいつも笑顔があふれている タマームさんと子どもたち。居間にはいつも笑顔があふれている

15歳になる息子のハリール君は将来は医師に、同じく15歳のオダイ君はデザイナーになりたいといいます。8歳のアンワールちゃんは、英語の先生になりたいそうです。「神様からの贈り物」としてこの家族のメンバーになったアンワールちゃんの名前は、「光」という意味。その名前の通り、光のように家族に明るい笑顔を与えています。「外から見れば『貧しいのならば子どもをそんなに生まなければいいのに』と思われるかもしれないけれども、『子どもはお金を持って生まれてくる』と言われているのよ」とタマームさんは言います。これはパレスチナではよく聞く言葉で、上の子どもが大きくなって就職して下の子どもの学費などを払っていることもよくあります。タマームさんの家族を見ていると、一人ひとりの子どもが家族にとってかけがえのない宝であることが感じられます。そして、パレスチナのこういった光景は、私に家族というものを改めて考えさせてくれるのです。


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