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ミシュミシュとオリーブ

2009年6月 7日 更新

「久しぶり!いい時季に来たよ」と、日本から戻ったばかりの私を笑顔で迎えてくれたのは、ベツレヘムにあるオリーブ細工工場のおじさん。挨拶もそこそこに、おじさんが庭に下りて木からもぎってきてくれたのは、ミシュミシュ(アプリコット)。一般によく見るものはオレンジ色をしたものが多いのですが、ベツレヘム地域では白っぽい色をしたものが採れ、人々は「ミシュミシュ・バラディ(地元産)」と呼び、こちらの方がおいしいと好みます。確かに甘さが違う気がします。

またこのミシュミシュは種が食べられることも特徴。生なのにアーモンドに似た香ばしさと甘さがやみつきになります。庭の木のミシュミシュを食べつくす勢いで、会話も弾みます。

ミシュミシュ・バラディミシュミシュ・バラディ

「ミシュミシュが食べられるのは一週間だからね。しかもミシュミシュ・バラディは、隔年しか実がならないって言われているんだ。ベスト・タイミングだね」と、おじさんは繰り返し、5歳になる息子とミシュミシュを頬張りながら嬉しそうに言います。そう、食べられる期間が短いミシュミシュ。そのためパレスチナでは、「ブクラ・フィル・ミシュミシュ」(明日はアプリコットにある)という言い回しがあります。「明日何があるかわからない」という意味ですが、前向きな思いを込めて言うことが多いようです。

ミシュミシュを頬張るおじさんと息子ミシュミシュを頬張るおじさんと息子

さて、このおじさんは、アーユス仏教国際協力ネットワーク様の協力で、ベイト・ジブリン難民キャンプの女性グループが作っている「平和念珠」のオリーブの玉を作ってくれています。このおじさんが仕入れるオリーブの木で作る玉は年輪の模様がきれいに出ており、なかなか手に入りにくいのです。

聞けば、ナブルスやジェニン(西岸の北部)から仕入れているとのこと。ベツレヘム周辺では多くのオリーブ職人がいることから木の値段が高騰していますが、北部からは手に入るそうです。また、樹齢の高いオリーブも多いことから、年輪の模様がきれいなのだそうです。

西岸では、ユダヤ人入植地の拡大に伴い、パレスチナ人の土地が没収され、そこに生えている木々が切り倒されることも少なくありません。切り倒されようとする樹齢何百年という立派なオリーブの木にしがみついて泣き叫ぶ女性の写真は、土地を守ろうとするパレスチナ人の象徴にもなっています。

最近では、イスラエル政府によるアウトポスト(コンテナーやバラック小屋などで住み着く入植地で、ここから入植地が出来たり拡大したりし、イスラエルの法律でも違法とされている)の強制撤退に対し、入植者がパレスチナ人の土地に火を放つという事件も起きました。おじさんが買っているのは、西岸北部で切り倒されたオリーブの木。「抜かれたり切り倒されたりしたならば、こうやって使っていくことができる。でも、燃やされちゃったら、オリーブの木が泣くよね」とおじさんは言います。

おじさんの作ったオリーブの玉は、主にベツレヘム市内のオリーブ細工専門店で売られているのですが、仕事は特に第二次インティファーダ以降、芳しくありません。壁の建設の影響もあって観光客がぐんと減り、ここ数年はまた増えたものの、教会の中では数十人という規模のグループの観光客をたくさん見かけても、通りでは全く観光客を見ないのです。

「ベツレヘムに来る人たちは、大型バスで来て教会に直行。人々の暮らしを見ずに、イスラエルの旅行代理店と契約しているお土産やさんに連れて行かれて終わり。個人で細々とやってきた伝統技術を持つお店には、全く人が入らない」そうです。

一緒にいた、女性グループのメンバーも、「観光客は自分たちのバスが難民キャンプの横を通って行くなんて知らないのよ。もちろん、分離壁のすぐ横で私たちがどんな生活をしているかもね」と言います。かつては多くのお土産やさんが軒を連ねていたであろう、教会の横の通り。今開いているお店や工場は数えるほどになっています。おじさんの仕事も、減るわけです。

工場の様子工場の様子

例えばオリーブの玉を2,000個作ってもらうと、その値段は120NIS(約3,000円)。材料費、電気代その他を差し引くと、おじさんの収入となるのは50NISほど(約1,200円)。これには約4時間の仕事を要します。お念珠を1つ作るのに、約20個の玉が必要なので、100個分。毎日依頼できる仕事ではありません。

それでも、「例えば今週はお土産やさんからの仕事もあるし、だいたい一日150NISの収入がある。こういった仕事は単発なので、いつ入るかわからないけれど、いい仕事を続けて仕事を得ていきたいよ」と言います。中学生と幼稚園の息子がいます。一番上の男の子は高校を中退せざるを得なかったそうで、なんとか2人の息子にはしっかり教育を受けさせたいと願っています。「オリーブ職人には英語も話せる人が多いから、パレスチナを去った人も多いよ。でもオリーブの木がなかったらこの伝統は続けられない。パレスチナのオリーブは特別なんだよ」と、ミシュミシュを頬張りながら、笑顔で言ってくれました。

床のタイルは伝統ある家の証。眺めの良いテラスの下にはミシュミシュの木床のタイルは伝統ある家の証。眺めの良いテラスの下にはミシュミシュの木

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