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ヘブロン:沈黙の中の現実

2007年7月20日 更新

ヘブロンは、パレスチナの町の「中」に入植者が住んでいる町です。この5つの入植地を含むイスラエル管理下におかれる地域は、“H2”エリアと呼ばれています。今日は、このH2エリアのツアーに参加してきました。このツアーは“Breaking the Silence”というイスラエルの団体によってオーガナイズされています。この日はイスラエル人も含む30人ほどが参加しました。

この通りも、数年前までは人で賑わっていたこの通りも、数年前までは人で賑わっていた

バスでキリアット・アルバという大きな入植地の中を抜けて、ヘブロン旧市街に入ります。旧市街の一部はH2エリアになっています。町に入り、周りの建物がアラブのものになった瞬間、とても異様な空気を感じました。全く人の気配がないのです。入り口が壊されてブロックを積まれた家や、横倒しになって錆びた子ども用の自転車、空っぽの鳥小屋が、もはやここに住人がいないことを語ります。「この地域に住んでいたパレスチナ人はほとんどここから出て行ったんです。直接的にも間接的にも“攻撃”されて、出て行かざるを得なかったんです」と、今日のツアーのガイドのミハエルさんが説明をします。

かつての卸売市場。後方には入植地が立つかつての卸売市場。後方には入植地が立つ

バスを降りて、かつての旧市街を歩きます。マーケットは全ての店が閉じられ、空っぽな空間に雑草が生い茂り、乾燥した静寂に支配されています。次第に寂れていったというのではなく、突如として住人をなくしてしまった空虚感があります。歩きながらミハエルさんが、つい7年ほど前に同じ場所で撮影された写真を見せてくれました。日常的なアラブのスーク(マーケット)の様子です。野菜や日用品などの露天が軒を連ね、人で賑わっています。今にも「1キロで5シェケル!」「2つで10シェケル!」という威勢のよい声が写真から聞こえてきそうで、今立っている場所と同じ場所とはとても信じられない光景です。

ある商店の閉ざされたドアを開けると、そこにはブロックが積まれ完全に入り口は塞がれていました。上を見上げると、新しい建物――入植地がその商店街の上にそびえ立っています。この場所に住んでいたパレスチナ人たちは、「この道を通ってはだめだ」「ここから先に入ってはいけない」「この土地と建物はユダヤ人のものだ」と次々と規制され、また所有物や庭の木々に火をつけられるなどの嫌がらせを受け、町を出ざるをえなかったそうです。2002年から2003年にかけて、外出禁止令が出たのは500日にもなりました。

街角で説明を聞いている間、私たちの周りに入植者たちが集まってきました。「ヘブロンはユダヤ人のものだ。後から来て乗っ取ったのはアラブ人だ」「よそ者は出て行け」と私たちの背中に向かって叫びます。私たちの横をずっとイスラエル警察の車がついて走り、後ろには入植者がついてくるという光景は、とても異様なものに感じられました。しかしこのイスラエル警察は、入植者の私たちに対する攻撃に備えたものだったのです。

ツアーの中で、H2エリアの端に位置する、あるパレスチナ人の家を訪問しました。この家のすぐ横の高台になっている家にも入植者が住んでいます。ゴミなどを投げられる、歩いていると蹴飛ばされたり唾を吐かれる、などの嫌がらせを日常的に受けているそうです。私たちが裏庭で話を聞いている時も、上方から石が飛んできました。そこに住むパレスチナの子どもたちは、学校への道のりですら攻撃を受けているそうです。しかし子どもたちは反撃することはできません。イスエラル警察は、入植者のパレスチナ人に対する攻撃は特に咎めないけれど、パレスチナ人による入植者への攻撃は罪とみなすとのことでした。この家の人が撮影したビデオを見て愕然としました。道を行くパレスチナ人を攻撃しているのは、大人というよりもむしろ子どもなのです。せいぜい小学生から中学生くらいの女の子までが、年配の女性に暴力をふるい、通学する子どもたちに石を投げているのです。

“Breaking the Silence”は、「沈黙を破る」という意味です。兵役中にヘブロンで任務に就いた元イスラエル兵たちが中心となって、「この“占領”は間違っている」とイスラエル社会に対して声を上げて立ち上がり、始まった団体です。ミハエルさんも、かつてはイスラエル軍に従事していました。彼の「ここで起こっていることの証言者になってほしい」というその語気の強さに、彼らなりの責任感を感じました。彼らの「伝える」という行動が、どれほどイスラエルの社会に訴える力を持っているのかはわかりません。しかし、彼らのような意識を持った人が圧倒的少数であるイスラエルにおいて、それはとても勇気が必要な行動なのだと思います。バスで隣の席に座っていたイスラエル人は、「ヘブロンで起こっている現実を見れば、誰もが“これはおかしい”という感覚を抱くに違いない。そう思うかもしれないけれど、不気味なくらいに僕たちは“見えない国民”なんだ」と言いました。

もちろん彼のように、このツアーに参加するようなイスラエル人もいます。しかし見たくないもの、否定したい現実に対して目を瞑ることは簡単です。沈黙に閉ざされた現実が、今この瞬間も、ヘブロンだけに限らずパレスチナのあらゆる所で起こっているのでしょう。ヘブロンでの一日は、私にこの地域の問題をあらためて突きつける日となりました。


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