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ガルトゥング中東和平構想

パレスチナ現地代表 小林 和香子
2006年12月 5日 更新
ヨハン・ガルトゥング教授ヨハン・ガルトゥング教授

12月5日、テルアビブ大学とパレスチナ・イスラエル・ジャーナルの共催で、ヨハン・ガルトゥング教授を招いた公開討論「イスラエル・パレスチナ和平は可能か?前進するための提案」が開催されたので覗いてきました。会場となったテルアビブ大学の教室は、学生や学者、近所のおじさん風の人や、外国人と、幅広い層の観客でまたたくまに満員となりました。

ガルトゥング教授は世界的な平和学者でオスロ平和研究所の創設者でもあります。近年ガルトゥング教授が紛争解決に不可欠と唱えているのが、「トランセンド(超越する)」という理論です。トランセンドとは簡単にいうと、二者の間の対立がある場合、二者の必要とする利益を再検討した上で、既存の解決方法を越えて、視野を広げて新たな解決方法を見出すことにあります。ガルトゥング教授が例に出すのは、夫婦が夏休みの旅行先について対立している問題を解決するというものです。夫は山に行きたいが妻は海に行きたいと主張して譲らない。しかし、その理由を聞き出すと、夫は自然の中で歩きたく、妻は温かいところでリラックスしたいというものだった。それなら、山のふもとの湖のほとりに旅行すれば、二人のニーズは満たされるという解決案が生まれる。
 ガルトゥング教授は、兼ねてからイスラエル・パレスチナ紛争の解決の道筋をたびたび提案してきましたが、今回の提案はまさにトランセンドしたものでした。

ガルトゥング教授はまず、イスラエルとパレスチナの文化的背景に基づいたイデオロギーそれぞれ3つを持ち出し(イスラエル:ハード・シオニズム、ソフト・シオニズム、国家システム。パレスチナ:イスラム主義、オスマン的構想、国家システム)それらを掛け合わせた9つのパターンが紛争解決に導くかを分析した上で、イスラエルの国家システムとパレスチナの国家システムによる二国家解決案が最も可能性があるものであるとするものの、その弱点について指摘しました。それは、現状では力の不均衡があり、パレスチナが要求する国際法(国連決議194,242,338)に基づいた解決を、イスラエルが合意できないだろう。パレスチナの要求する3つの権利、すなわち主権の権利、エルサレムを首都とする権利、難民の帰還権の認知が実現されなければ、平和的解決はもたらされず、イスラエルが要求する国家安全は保障されない。
 ここで、ガルトゥング教授は、イスラエルがユダヤ国家であり続けることは出来ないことも指摘しました。

では、どうやって平和的な解決をもたらすのか。ガルトゥング教授は、イスラエル・パレスチナの紛争は、二国家だけでは解決できないとし、双方の利益を達成するために、より多くの国を巻き込んだ構想を提案します。その構想はヨーロッパ共同体に倣った、中東共同体。戦後、ヨーロッパがドイツを共同体に組み込んだように、イスラエルもパレスチナに対する謝罪を経て、隣接する5つの国全て(エジプト、ヨルダン、レバノン、シリア、パレスチナ)と水平的な関係を結ぶこと。そうすることによって、イスラエルは自国の安全を脅かすことなく、パレスチナの諸権利を認め、近隣諸国の一員となることが出来ると唱えます。
 ガルトゥング教授は、さらに、イスラム教、キリスト教、ユダヤ教に通じる平和と対話の教えがあることを示し、中東共同体の可能性を強調しました。

ガルトゥング教授の提示した和平構想は、現状において国際法に基づいた二国家解決の実現が難しいという前提から発想されています。
 イスラエルによる「安全」という理由のもとに進められる西岸(エルサレムを含む)における入植地建設の継続や、それらを取り囲む壁の建設は、二国家解決案の実現を脅かしているという考えです。この考えは、国連や国際司法裁判所の勧告的意見、そして多くの学者に共通するものです。オスロ和平プロセスの間は、和平プロセスや合意内容を批判すること自体が、和平に反対していると見做される風潮がありましたが、最近では、学者・有識者の間で、過去の和平合意・プロセスを再評価し、新しい和平のあり方を考える機運が高まっているのです。
 そしてその中には、二国家解決案そのものに疑問を唱え、新しい枠組みの解決案を提案するものも少なくありません。
 ガルトゥング教授の構想はこのような代替案の中でも極めてトランセンドしたもので、発想の転換のあり方を提示したという意味で極めてインパクトのある提案と受け止めました。


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