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イスラエル軍侵攻とガザの人々の生活 3

パレスチナ現地調整員 藤屋 リカ
2006年7月 4日 更新

今あるのは人の力
昨日、7月2日、ガザ内の燃料が底をつき始めていました。「人間の大地」ハンユニスセンターの代表のハナンによると「ガゾリンスタンドに長蛇の列ができていました。一部の地区では乗り合いタクシーさえほとんど走っていなかったようです」とのことです。そのような状況でしたが、ハンユニスセンターでは新しく採用された看護師ラダはセンターに無事やってきて、即働き始めました。
イスラエル側とガザを結ぶ物流検問所は一時的に開き、燃料も補充されたようで、今日3日は少し落ち着いたとのことです。

「人間の大地」の総責任者のイテダルは、ガザセンターやハンユニスセンターにやってくる栄養失調児や母親のことと共に、スタッフのことをとても心配しています。
「人間の大地」のスタッフは危機的な状況下において、最も弱い立場にある人々にサービスを提供しています。最悪の経済状況で家に子どもに食べさせる栄養価の高い材料など無いので、栄養失調児を抱える母親は爆音が響く中でも子どもを連れてセンターに続けてきます。
しかし「スタッフもまたこの状況の被害者」なのです。橋が破壊されたり、燃料不足で一部の地区では乗り合いタクシーが止まったりで、一時的に仕事に来られなかったスタッフもいます。爆撃の恐怖から母親から離れられなくなった子どもを連れてくるスタッフもいます。続く砲撃やソニックブームの悪影響は子どもだけでなく大人にとってもあります。家に帰れば、水や電気の限られた不自由な生活を強いられ、仕事に出かける前には水や食料の心配をしなければなりません。

2004年、イスラエル軍がラファに侵攻し大規模な家屋破壊があった後、「人間の大地」はその地域に根ざした機動性を活かして、国際NGOと共同で様々な緊急支援を展開しました。家を破壊されたスタッフも精力的に働きましたが、無理をして後で疲れが出てしまったり、燃え尽きてしまったりしてしまったのも事実です。

イテダルは、「今回の緊急事態に対しても何らかの対応が必要と感じています。水も電気も限られ、食料もいつ入ってくるかわからない。スタッフも疲れ始めています。私たちは現実的に何ができるか考えなければなりません」と言います。電話で色々話し合いました。そして彼女と「私たちに今あるのは、人の力です」ということにたどり着きました。「ますは今のサービスを地道により良い形で提供しなければなりません、現実的でかつ必要なのは人の力です。スタッフが一人増えれば、子どもたちの栄養食の準備も母親たちへの教育も余裕を持って一人ひとりに合わせてできます。増え続ける来所者にも対応できます。スタッフの誰かがセンターに来られないようなことがあってもみんなで補えます。今までに「人間の大地」で働いた経験があり働きたい意志のある待機者もいます。一人が収入を得られれば家族や親戚10人ぐらいは食べていけることにもつながります」とイテダルは語ります。

経済危機下での緊急支援が必要な状況のなかでの軍事侵攻・攻撃という更なる緊急事態への対応として、ガザセンターにおいても、2ヶ月間、新しく保健指導員を1名採用、JVCがその部分を支援することにしました。できるだけ早く新しい保健指導員に入ってもらう予定でいます。

イテダルは「神様が子どもたちや私たちの仕事を守り、助けてくださるでしょう」と言い、感謝の言葉を繰り返しました。彼女自身は、喘息発作に苦しみながら「いつものことだから」と気丈に仕事を続けています。(7月3日)

サマープログラム開始
国連のセキュリティ担当者からは、今朝からイスラエル側とガザを結ぶエレツ検問所は外国人に対しては封鎖との連絡が入っています。ガザ北部ではイスラエル軍の局地的な侵攻は続き、更なる戦車がガザ周辺には配置されているとのことです。また、パレスチナ側からの武装組織による手製のロケット弾はイスラエル側に撃ち込まれ続けています。政治的な介入も行われていますが、解決の糸口は全く見えてきません。

今日7月4日、「緊急対応」としての幼稚園の子どもたちのためのサマープログラム、遊びとビスケットと果物の提供、は開始しました。
今日は幼稚園の先生たちのトレーニング、明日、明後日は幼稚園での準備、幼稚園に子どもたちが集まってくるのは土曜日から2週間の予定です。
子どもの栄養改善事業の責任者のモナは、困難な状況にもかかわらず、着々と準備を進めてきました。ガザ地区北部、ガザ市、中部の34の幼稚園、1700人の子どもたちに対してまず始めます。プログラムの遊び使う紙や絵の具などと栄養強化ビスケットは、昨日から各幼稚園に配り始めました。果物は木曜日に幼稚園に届く予定とのことです。
モナは「果物はスイカも入れようと思うの。夏のおやつはやはりスイカよ。洗うのに水も少しですむから、水の心配もしなくてすむし。今年はみんなお金がなくてスイカが買えないでいるから、ぜひ幼稚園で出しましょう」と母親らしい感性で具体的な内容を検討しています。

幼稚園の先生のレーニング幼稚園の先生のレーニング

軍事侵攻での緊張、水や電気も不足しているので、このサマープログラムの実施を辞退する幼稚園も出るのではないか、今日のトレーニングには先生たちが集まってこられないのではないかとモナやスタッフは心配しました。心配をよそに、全ての幼稚園の先生が参加、予定を大幅に上回る58人にもなりました。会場にはいっぱいで活気にあふれていたといいます。幼稚園の先生のトレーニングは、各幼稚園から一人ずつですが複数でやってきた幼稚園もありました。トレーニングを受けた先生が幼稚園の先生たちにその内容を伝えます。トレーニングでは、幼児教育、特に情操教育を専門としている大学の先生のファティマが講師で、参加した先生たちに子どもたちの創造力を生かして遊ぶ方法を具体的に紹介していったそうです。

サマープログラムに使う栄養強化ビスケットを作っている会社から、ビスケットやチョコレート菓子などとミネラル・ウォーターの差し入れがあり、ちょっとしたパーティーのようだったとのことです。このようなときにはいつもは紅茶やコーヒーが出されますが、お湯を沸かすのに電気か燃料が必要なので準備できなかったのを残念がっていました。
「みんなとても楽しそうだった」とモナは嬉しそうに言います。「状況が厳しい分、みんな子どもたちのために何かしたいのよ。予定が変わったりはするけれど、できる範囲でやっていくわ。私たちはこの状況でもこうやって働いているの。誰かにそれを話せるのも励みになるわ」と続けました。そして「土曜日にはあなたも幼稚園に来てね」とのことでした。(7月4日)

心配される緊急事態
7月5日、エルサレムで開催された国際NGOの連合体AIDAの定例会議では、ガザの状況が話し合われました。
国連の担当者は、ガザを結ぶエレツ検問所は完全に閉められて、外交官さえと通れない可能性が高いとの報告でした。イスラエル軍が侵攻している南部の空港周辺の一部には、国際赤十字のみがたどりつけているようです。ガザの北部はイスラエル軍によって安全緩衝地帯としてされ、更なる侵攻が予測されています。物流専用のカリニ検問所も一度開きましたが、また閉まりました。燃料の供給も止まったとのことです。大手の国際NGOでは、既に地域限定で水の供給等はじめていています。医療系のNGOはスタッフを派遣して各病院で電気の供給状況やスタッフの状況などをモニタリングしています。WHOが公立の病院やクリニックのフォローアップをしています。病院の発電のための燃料は1週間分の備蓄とのことです。北部のベイト・ハヌーンには待機の医療スタッフも配置されています。

ガザ内では、国際赤十字、国連関係機関、国際NGOが合同で、緊急調整会議を持っています。エルサレムでも、国際NGO間でのガザの人道状況についての支援と情報交換のための会議も設定されました。

2002年4月の西岸地区への大規模侵攻、2002 年夏の長期化する軍事包囲・外出禁止令下のナブルス、2004年のラファでの家屋破壊、2004年のガザ北部への軍事侵攻、そして今回の侵攻1 侵攻2。。。。

JVCは他の国際NGOと共同、あるいは今までに関係してきた団体を通しての支援や既に支援している幼稚園が受けた被害の補修など、規模は小さいですが可能な範囲での人道支援をしてきました。そのたびに状況に対する声明も出してきました。繰り返しとさえ思われる状況に、焦燥感が積もることも否めません。

人道状況に対してそこにいる人々の声を聞き、弱い立場にある人々と共に最も有効にできることを考えていかなければなりません。同時に人道支援は人が生きていくのに必要です根本的な解決にはならない、このような人道支援をする状況がなくなって欲しいと、思いながらの活動です。

会議の帰りは、これまでの緊急支援を一緒に行ってきたアメリカのNGOの代表が車で送ってくださったのですが、今回のガザの状況には悲観的な見方です。更なる流血の事態を迎えるのではないかという心配をしています。緊急支援の話になると、お互い話が進みません。どこかで「またか」ということや支援をしなければならないことの裏には支援が必要な状態を強いられている一般の人々があるわけで、言葉が出なくなってしまうのかもしれません。

「サマープログラム」の昨日の先生たちへのトレーニングが好評だったことで、モナをはじめとするスタッフは更にパワーアップしていました。もちろん北部の緊張した状況は知っています。事務所の所長とのミーティング予定だったアイルランド人の外交官がエレツ検問所を通れなかったことを伝えてくれます。それでも「幼稚園でのプログラムが始まったら、所長やエンジニア(別事業で幼稚園建設を担当)も一緒に幼稚園を回る予定。あなたが来たときに一緒に行くのよ。その日は朝が早いから前の晩はガザに泊まったほうがいいわ。いつになるかはわからないけれど、計画は続けていきましょう」と言います。

「人間の大地」の代表のイテダルからは新スタッフの契約等の連絡も入らず、気になって携帯電話に連絡したら、仕事を休んでいました。喘息発作が続き、必要なときに電気がなくて自宅での吸入治療もままならないようです。医者から出された新しい薬が合わなくて頭痛で動けなかったと言っていましたが、多分過労からだと思います。 (7月4日)


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