アジア・中東・アフリカで活動する国際協力NGOです。
  • JVC facebook
  • JVC twitter
  • イベントメルマガ配信中
  • 文字サイズ:大きく
  • 文字サイズ:中くらいに
  • 文字サイズ:小さく
JVC English website

エリコ研修旅行・大きな刑務所

パレスチナ現地調整員 藤屋 リカ
2006年4月 6日 更新

ベツレヘムからエリコに行くにはエルサレム経由が速いのですが、西岸地区のパレスチナ人がエルサレムに行く(通過する)にはイスラエルの許可が必要で、この許可は特別な労働許可や病院での治療を除いてはほとんど出ません。

エリコに行くには、砂漠の中のワディ・ナハル(火の枯れ川という意味)と呼ばれる谷底を通る高低差の大きい急カーブの道を通ります。谷を上りきった所にイスラエル軍の検問所があります。この日、検問所では車が多く渋滞、私たちも待たされましたが、バスの運転手による研修旅行の説明によって無事通過しました。

検問所を越えると、東エルサレムの町、アイザリアに出ます。この町はイスラエルによって建設された「分離壁」が張り巡らされています。

8mにも及ぶコンクリートの壁8mにも及ぶコンクリートの壁

「分離壁」に並行する道をバスで通過し、町の外れの道を通ってアイザリアの東の入り口にたどり着きました。そこは、ヨルダン川西岸地区で最大のイスラエル人入植地、マアレ・アドミウムの入り口でもあります。占領地への入植は国際法では禁じられています。

マアレ・アドミウムの外観、緑が多いのは限られた資源である貴重な水が大量に使われているためマアレ・アドミウムの外観、緑が多いのは限られた資源である貴重な水が大量に使われているため

ここからはイスラエルが管理しているイスラエル側と西岸地区のイスラエルの入植地を結ぶ道路になり、道路は急に良くなります。そこにもイスラエル軍による移動検問所が設置されていました。海面下約400mのエリコまで一気に、1000mの高低差を一気に下ります。

海面地点0mには観光用のラクダもいる海面地点0mには観光用のラクダもいる

エリコの入り口にはイスラエル軍の検問所があり、そこを越えるとエリコの町で、ベツレヘムから約2時間かかりました。

今回、ベツレヘムのベイトジブリン難民キャンプ・ハンダラセンターの女性刺繍グループ(関連記事No.138,No.139,No.146,No.147)のエリコ研修旅行(関連記事No.151,No.152,No.153)に参加した最高齢の女性は67歳でした。彼女は、女性刺繍グループの代表の祖母にあたります。8人の子どもたちに高い教育を受けさせ、子どもたちは技術者・教師等の専門職として働いています。難民キャンプで尊敬されている女性です。

1948-9年の第1次中東戦争後、彼女は現在イスラエル領となっているベイトジブリン村を追われ、一時エリコでの難民生活を送りました。約半年エリコの難民キャンプで過ごした後、ベツレヘムの難民キャンプに移ったそうです。当時まだ、9歳でした。

彼女は若い頃、アメリカのキリスト教・メノナイト派によるミッションによる西岸地区の女性刺繍グループのメンバーで、ベツレヘム地区のリーダーの一人だったそうです。彼女も子どもを抱えながら、刺繍で生計を助けてきました。約20年前1987年の第1次インティファーダが始まり、ベツレヘムからエルサレムへの移動中に刺繍製品をイスラエル兵に没収、移動そのものが困難になる等、様々な問題が起こり、その刺繍グループでの活動は続けられなくなったそうです。

公園でくつろぐ家族。伝統刺繍は、祖母、母、娘へと受け継がれている公園でくつろぐ家族。伝統刺繍は、祖母、母、娘へと受け継がれている

今でも、家族のためにテーブルクロスやクッションカバー等に刺繍をしています。
孫が、難民キャンプの中で、自力で刺繍グループを起こし、約15人の女性たちが刺繍関連の仕事で収入を得ることができるようになり、日本、イタリア、イギリスでも売れる商品を製作していることを誇りに思っています。今回、女性の力でこのような研修旅行ができたことを喜んでいました。

終始、笑顔で、この旅行のために大量に作ってきたパレスチナ風ピザやほうれん草入のパンを私にもしきりに勧めてくださいました。

旅行も最後に近づき、日が暮れかかった公園でくつろいでいるとき、彼女は少しため息をついて話し始めました。「今日はとても良い日です。女性や子どもたちにとって特別な経験です。しかし、私は心から幸せとは言えません。それは私たちが『大きな刑務所』に入れられているからです。ベツレヘムとエリコを移動するとき、私たちはいくつのイスラエルの検問所を越えなければならないのでしょうか。ここは私たちの土地なのに自由に行き来することさえできないのです。検問所では緊張し嫌な思いをし、占領下の私たちに自由がないことを感じるのです。これでは本当の幸せではありません」と言いました。

辺りは暗くなり、公園の噴水はライトアップし、初めて見る光景にはしゃいでいる子どもたちもいるときのことでした。

事故もなく、笑顔と笑い声に満ちた研修旅行でした。しかし、その道中には、社会の根本の問題である「占領」を様々な形で感じさせられたのも事実です。心から幸せだと思えるには、根源にある問題の解決が不可欠ということを、彼女の言葉から改めて感じさせられました。
 


団体案内
JVCの取り組み
11ヵ国での活動
イベント/お知らせ
現地ブログ
あなたにできること
その他
特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター
〒110-8605 東京都台東区上野5-3-4 クリエイティブOne秋葉原ビル6F 【地図】
TEL:03-3834-2388 FAX:03-3835-0519 E-mail:info@ngo-jvc.net