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キャンプ・デビッド・サミットを振り返る

パレスチナ現地代表 小林 和香子
2003年6月26日 更新

テル・アビブ大学とアルクッズ大学他が「2000年キャンプ・デビッド・サミット - 何が間違ったのか? 未来への反省」というタイトルの講演会を主催しました。キャンプ・デビッド・サミットの失敗がオスロ合意の停滞(あるいは破綻)をもたらしたと言われていますが、その失敗を分析することで、今後の和平交渉の成功に結びつけたいという思いが込められていました。スピーカーはイスラエル側、パレスチナ側、アメリカ側を代表する学識者と一部政治家で、全員がオスロ和平プロセスに関わってきた人達です。

最も印象的だったのは、サミットの失敗当初は、アラファトがイスラエル側の「寛容な申し出(generous offer)」を蹴ったとして、和平の停滞の責任を負わされたものの、今回参加したほとんどの人は、サミットの失敗の責任はパレスチナ、イスラエル、米国の三者全てにあったと認めたことです。元米国駐イスラエル大使は、「振り返って思えば、アラファトであってもなくてもパレスチナを代表する人間があのときの提案を飲めるはずがなかった」とすら語りました。実際そのとき提案されたものは、パレスチナを分断し、周りをイスラエルの安全地帯として(半永久的に)貸し出し、空域の自由もなく、水資源の自由もないなど、およそ独立国家とはかけ離れたものでした。難民の帰還についてもないがしろにされていました。さらに、サミットの失敗は、イスラエルの提案内容だけではなく、サミットを取り囲む様々な要因が複雑にからみあっているということでした。詳細には意見のずれもあるものの、大枠として下のような要因が挙げられていました。

状況的な要因として挙げられたのは、「シリアトラック」の失敗とレバノンからの撤退。イスラエルと米国はシリアを落とせばパレスチナが落ちると考え、シリアとの和平交渉にかかりっきりになるものの、結局失敗する。この行動がアラファトのイスラエルと米国への猜疑心を増長させるものとなる。またイスラエルのレバノンからの撤退はパレスチナに武力抵抗が独立を勝ち取れると思わせた。時間的な要因として、シリア交渉の失敗の後、クリントンとバラクに残された時間は約半年。2人はサミットで決着させなければいけないと言う焦りがあり、無理やり合意に持ち込もうとした。しかし、イスラエルの提案内容を知っていたアラファトはサミットに行くことすらも拒んでいた。後のない2人と違いアラファトは提案を飲まないことでヒーローになれるという読みがあったのではという意見もあった。交渉の進め方の問題も指摘されている。最も難しい最終交渉の一つのエルサレム問題をクリントンが沖縄サミットに旅立つ前夜に初めてイスラエルが提案。この問題だけでも何ヶ月もかけて交渉しなければまとまるはずがないのにである。さらには、クリントンの仲介者としての関与不足。また、第三国(エジプト、ヨルダンなど)の不在。交渉の方法にも問題。サミットは当事者の力関係(バランス・オブ・パワー)に基づいており、エジプトやヨルダンと和平交渉のときのような本来あるべき利害関係(バランス・オブ・イントレスト)に基づいていなかった。またこの交渉の期間中のそれぞれのキャンプ(イスラエル・パレスチナ・米国)の内部分裂も指摘されており、ここにも仲介者の力不足が伺える。

このような失敗の分析に1人真っ向から対抗したのは、他ならぬバラク元首相でした。彼は失敗の全ての原因はイスラエルの最初で最後の「寛容な申し出」を蹴ったアラファトにあると譲らない。アラファトのことを「テロリストの様に話し、テロリストのように行動する。彼は恐らくテロリストだ」と熱く語る。そして、国を代表するものは、信念をもってやり遂げなければならないことがあるが、アラファトにはその信念がない、と熱弁をふるいました。

対照的にパレスチナ政治家として唯一出席したDr. Samih al-Abedは、サミットで交渉が終わったわけではないことを強調。時間切れで合意には至らなかったが、その後のタバ交渉でのイスラエルからの「公式」でより発展した提案を今後の交渉のスタートラインに据えようとしている。

残念ながら会議中ほとんど聞かれなかったのが、オスロ・プロセスがパレスチナの人々に与えた影響です。暫定合意が結ばれていく過程でパレスチナはじわじわと「植民地化」されていき、人々の生活基盤や自由が目に見えて奪われていった。また、イスラエルによる新規入植地建設停止などオスロ合意での約束不履行。これらの事実がパレスチナ人のオスロ・プロセス及びアラファトへの不満につながり、イスラエルへの猜疑心を増長させていったことはほとんど指摘されませんでした。

今回の講演会で語られた反省に基づけば、今後の交渉の進め方や参加者などテクニカルな部分での改善は可能かと思われます。また、取り巻く国際情勢も変化しています。しかし、先送りされてきた5つの問題、特に難民帰還の問題とエルサレムの問題、については今後いかに解決するのか、お互いがどうすれば譲歩出来るのか、まだ糸口すら掴めていないというのが正直なところであったようです。


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