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止まらない混乱

イラク事業現地調整員(ヨルダン駐在) 田村 幸恵
2007年8月17日 更新

「たくさん僕くらいの子供がいたよ。お菓子や果物が置いてあったけど家に帰りたかった」

バグダッドで誘拐されて、身代金を払って釈放された男の子が誘拐された場所の様子を聞かれて話した内容だ。身代金が払えない、連絡が途絶えるなど様々な理由で取り残された子供がたくさんプールされているのだ。12歳以上の子供は民兵組織に入れられることも多いという。イラクで頻繁に起こっているのは、爆弾テロだけではない。身代金目当ての子供の誘拐、知識人の殺害、援助品の略奪など、治安がまったく維持されていない状態にある。警察自体が略奪に加わることもある。

真面目に働こうとしても、まともな口がない者はイラク軍への入隊を希望する者も多いという。しかし、入隊希望登録をして、「2週間後に準備をしてきてください」といわれていってみると、民兵組織から派遣された人がすりかわって先に入隊し、銃器扱いを習ったものの、行方が知れない。管理が不備な軍隊は殺人の訓練を施す場になっている。

2004年バグダッドのアーザミーヤ地区から逃れてきたA氏(身の安全のために名前は伏せます)は、「町を離れるなど、夢にも思わなかった。脅迫されて逃げてきた。私がいた地域ではシーア派の人たちは家を借り、店を構えて隣で暮らしていた。シーア派は南部から出稼ぎに来ていた人も多くて富裕な人ばかりではなかったかもしれない。けれど、彼らの中には大学を卒業した人もいたし、尊敬しあって暮らしていた。モスクでは隣り合って一緒に祈っていたんだ」と語る。

治安の悪化を受け、国内避難民が増加している。国連はやっと事態の深刻さを受けて役割を拡大すると発表した。しかし、必要な人に物資が届かない状態を生み出しているイラク政府による援助物資配布の規制に縛られ、有効な活動ができない機関が多い。国連機関自体、国内で地道に住民組織などを通じた物資配布の経験を持つNGOに情報源を頼っている状態だ。

国内避難民は2006年のシーア派の有名なモスク爆破を期に、爆発的に増え、現在国内だけで220万人いるといわれている。大抵は宗派の違いや戦前の政治的見解を異にすることを理由に、家を明け渡すよう脅されるという。シーア派の人はシーア派の多い南部に、スンニ派の人はスンニ派の多い北部に逃れる人が多いのはそういった理由からである。

その間、人々は危険の多い地域を脱出し、親類縁者を頼って隣の県などに逃れる。受け入れる家庭も負担は大きい。JVCが国際NGO、そして地元の住民組織と協力してはじめる食糧援助はこうした受け入れ家族の負担を減らすことも狙っている。食糧援助は、彼らの主食である米、そして蛋白源でもある豆を配る予定でいる。約5人から7人の家族が2-3週間持つほどの量しか一度に配ることができない。

こうした避難民に焦点を当てるのは、かれらが国外に逃れることもできず、自分の暮らしていた地域にも戻れない状況が改善される兆しがないためだ。避難民の状況は悪化する一方で、県の中でも避難民を受け入れない姿勢を明確にし始めた県もある。また、親類縁者を頼ることもできない人が集まって、水のある場所などで野営をしているケースもある。そうした人々の状態はなかなか報道では知らされることはない。

イラクから逃れてきた家族の少女とイラクから逃れてきた家族の少女と

アラブでは、挨拶が長く、型どおりにいろいろと尋ねる。「元気ですか?仕事はどうですか?生活はどうですか?ご家族はどうしています?」などと矢継ぎ早に聞かれる。ヨルダンに逃れてきた難民の人に、こちらも同じ調子で聞き返すのが礼儀だ。大抵、返事は「元気ですよ、うまくやっています、みんな元気、おかげさまで」という。イラクのご家庭に訪問する機会があるとき、家族はどうですか、と聞くと顔を曇らせてしまう人が多い。「大丈夫、生きています」という答えが返ってくると、状況はひどいけれど、というニュアンスがある。

貧困から来る混乱なのか、占領から来る抵抗なのか、支配権を狙う内戦なのか、見極めることも必要だ。今は、そうした状況の判断とともに、この混乱を招いた決定を支持した日本の一国民として、イラク人の行き場のなさに対する支援を展開する必要性を感じる。


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