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クメール・ルージュ特別裁判からカンボジアを考える 第2章

CLEAN 環境教育担当 樋口 正康
2010年8月 2日 更新

2010年7月26日、クメール・ルージュ特別裁判(ECCC)で判決が争われていた、トゥールスレン刑務所所長であったドゥイ(本名カン・ケク・イウ)被告に懲役30年の判決が下った。求刑は40年であったが、既に拘留されている期間を差し引いて、実質懲役19年が彼の刑期となる。カンボジアでは死刑制度はなく、最高刑は無期懲役となっており、刑期19年というのは、一人の人の命を奪う行為である殺人と同等である。

当時のドゥイ被告(トゥールスレン博物館にて撮影)当時のドゥイ被告(トゥールスレン博物館にて撮影)

現地通信No.62でもお伝えしましたが、ポルポトが政権を握っていた1975年から1979年までの間に、カンボジア全土で人口の約1/4(150〜200万人)が、強制労働、飢餓、病気等の理由で命を失いました。そのうち約12000人が、トゥールスレン刑務所(当時はS21と呼ばれていた)で、同じく殺人、拷問、栄養失調などで亡くなりました。S21で亡くなったのは、カンボジア人だけではなく、中には外国籍の人も含まれていました。

カンボジアで、ポルポト時代のことを聞くのには、抵抗があります。加害者と被害者の多くが同じカンボジア人であるからです。あるJVCカンボジア現地スタッフの兄弟は、7人中5人がポルポト時代に亡くなりました。彼女の父親方の両親も亡くなり、父親の兄弟は12人全て亡くなってしまったという。先日、私の父親方の祖父母の写真を彼女に見せたばかりだった。彼女がその時、「おじいちゃんとおばあちゃん。。。良いですね。」と私に一言に言ったことを思い出した。切ない気持ちと申し訳ない気持ちになりました。

ドゥイ被告は、トゥールスレン刑務所長でS21を統括する立場にあったにも関わらず、S21で行われた残虐行為を止めませんでした。繰り返しの説明になりますが、拘留された人を拷問、ポルポト政権の都合の良いことを暴力によって「自白」させて当時の政権幹部に提出、ポルポト政権の施策が間違っていないことを証明しようとしました。供述を取り、次から次へ順番に殺していく。人の道から外れた行為が昼夜行なわれていたのにも関わらず、管理する立場にあったドゥイ被告が受けた判決は、通常の殺人罪と同じです。法の下での正義、ポルポト時代にもっとも苦しんだ人たちの正義は果たしてもたらされたのでしょうか。 

この判決にカンボジア国民の見方はさまざまであり、12000人の犠牲と彼の犯した人道に対する罪と殺人罪で、懲役19年では短すぎるという声が聞こえてきます。特に、クメール・ルージュによって直接苦しめられた人、家族を失った人々、トゥールスレン刑務所で肉親を亡くしている人々は、この判決に納得していない人もいます。12000名の人を死に追いやり、なぜ求刑が40年しかないのかという問いさえもあります。例え、ドゥイ被告が無期懲役になろうとも、彼とクメール・ルージュがカンボジアの人々にした行為を許さないという人もいます。

 建物3階からの風景と自殺防止用鉄網(トゥールスレン博物館にて撮影) 建物3階からの風景と自殺防止用鉄網(トゥールスレン博物館にて撮影)

その一方で、ドゥイ被告は高齢で体調も悪く、生きて刑務所をでられない可能性もあり、19年が妥当と考える人々もいます。判決で有罪を宣告できたことが、大きな成果と考える人もいます。彼がもし殺戮の命令に従っていなければ、彼がこうして証言台に立つことはなかったかもしれません。ドゥイ被告は、ポルポト政権の末端幹部にしかすぎず、罪を訴追するのが彼を含めた5名、ヌオン・チア、イエン・サリ、イエン・シリト、キュウ・サンパン、カン・ケク・イウ(本人)のみで本当に良いのでしょうか。

カンボジアのフンセン首相は、これ以上被告を増やし、罪を訴追しようとするとカンボジア数十万人に危険が及び、カンボジアの平和が脅かされると述べています。5人が全ての責任を被るのか、それとも法の下に、新たな訴追の準備を進行するのか、それはカンボジア国民と国際社会の手に託されているように思います。

ドゥイ被告の刑期は、もちろんカンボジア国民と国際社会にとって、とても重要なことではありますが、ポルポト、そしてクメール・ルージュが残した苦い経験を、今を生きる人々がどう捉えて、どのようにして次の世代へ教訓を引き継いでいくのかを、考えていかねばならないと私は思います。それは、カンボジア人だけではありませんし、日本人もしかりだと思います。

第3章へ続く


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