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アフガニスタン大統領選挙 -アフガン人の本気、国際社会の茶番- (3)

JVCアフガニスタン現地代表 谷山 博史
2004年12月 2日 更新

3. 選挙の実態

インク問題と重複登録

選挙は成功裏に行われたとアメリカやOSCE(欧州安全保障協力機構)がいち早く表明するなか、インク問題が大きな問題を引き起こした。投票当日は投票した者の左親指に特殊なインクをつけることで重複投票を防止できるはずであった。しかし、投票日にいくつかの投票所で普通のインクが使われていることが判明した。この問題は瞬く間に波及し、カルザイを除く15人の候補者全員が選挙をボイコットする事態にまで発展した。国連がこの問題を含む候補者からのクレームを調査する外国人3人からなる査察パネルを設置した結果、候補者はボイコットを取り下げたが、開票結果は査察パネルの調査結果が出るまで保留にされた。

この問題はJEMB(Joint Electoral Management Body:合同選挙管理機構)や欧米政府が軽視するほど簡単な問題ではない。なぜなら、100万人以上が選挙登録を重複して行っていた疑いがあるからである。選管当局は重複登録のことは知りつつも選挙で重複投票できないようにすれば問題はないとたかを括っていたふしがある。しかし水際で重複投票を防げなかったことになる。もし100万票が無効になれば、カルザイの得票率は50%に達しなかった可能性がある。もしそうなれば次選のカヌーニと決戦投票をしなければならなかった。しかしそれは事実上不可能なことであった。決戦投票は11月の末から12月の初めに行わなければならないが、この時期は雪のため投票準備も投票もできない地域がでてくる。それ以前では準備は間に合わない。そもそも決戦投票のシナリオはなかったと考えてよい。したがって100万票以上の不正票の可能性は取り上げるわけにはいかなかった。

さらに別次元の政治判断も働いていたと考えてよい。もし決戦投票になればカルザイ支持と反カルザイの陣営および人々の間の政治的分断は修復できないほどに深刻になるおそれがあった。カルザイに恭順のそぶりを見せていた武装勢力の不正工作が活発になるおそれもある。さらに新政権の求心力も失われたであろう。

いかなる理由があるとはいえ、選挙結果が茶番にしか見えない事態は、今後大きな禍根をのこすであろう。不正の疑惑を払拭できない理由は2つある。一つは選挙登録のあり方である。登録作業は昨年12月から今年3月までの第一期と5月から8月までの第二期に分けて行われた。第一期は150万人の登録しかできず、この遅延が問題視されていた。アメリカの強い働きかけで選挙が10月に強行されることが決まってから登録作業は驚異的な速度で進められるようになった。第二期は農村部のしかも治安が懸念される地域対象であったが、5ヵ月の間に1,050万人の登録を終えた。しかしこの期間だけで12人の登録スタッフが犠牲になった。そして1,050万人という結果は選挙人資格を有する人口980万人を超えてしまった。重複登録の問題は当然未登録の問題と裏腹の関係にある。例えば中央統計局のデータに基づいて出された選挙人人口によると、南東部では登録者の数が選挙人人口の140%に達し、一方カブールを含む中央部では64%にしか達していない。登録実数がどこまで重複登録によるものかは確認する手立てがない。アフガンでは住民票もなければ正式なIDカードもないのである。

重複投票を防ぐ方法は2つしかない。一つは消えないインクである。もう一つは登録所と投票所を同じにし、登録所に登録者の名簿を残すことである。後者はパキスタンで行われたがアフガニスタンでは実行されなかった。

選挙の不正

選挙の不正はいくつか報告されている。重複投票以外に重要だと思われるのは投票所での脅迫である。シャリプール県では投票所にドスタム派の地元武装グループの私兵が監視しており、記入した投票用紙を改めていたという事例が報告されている。こうした脅しを畏避して投票に行かなかったものが、なぜ投票に行かなかったかを地元のボスに責められるという例もある。このような事は公然とまかり通っていたと考えられる。

今回の選挙の決定的な欠陥は、国際選挙監視が存在しないに等しい状態だったことにある。総勢で150人に満たない(日本は5人)。それもカブールなどの安全な地域に限られる。JEMBによって承認されたアフガン人の選挙監視グループと、同じく同機構の承認を得た28政党からのアフガン人監視員を入れても、国内の半分の地域しかカバーできなかった。国連が設置した査察パネルは立候補者からのクレームに対応するのみで、監視員のいない地方の現実は把握する術も意志もなかったのである。

各国各国際機関が国際監視員を派遣しない理由は治安の問題が大きい。監視員の生命の危険が避けられない状況にあったからである。ここに今回の選挙の矛盾、あるいは茶番の実態が見えてくる。ARUE(アフガニスタン調査評価ユニット)のレポートはこの点を厳しく批判している。国際監視員に危険な治安状況とは、投票に参加する一般のアフガン人の危険に他ならない。にも関わらずアメリカとアフガン現政権はNGOや国連の警告を押し切って選挙を強行した。何がなんでもアメリカ大統領選の前に選挙を行い、成功の既成事実を作り上げるという政治的な意図が見て取れる。

軍閥や地方の武装勢力が跋扈している状態での選挙は、ボン和平合意の前提にはなかった。「自由で公正な選挙」を実施する条件として想定10万人の軍閥私兵の武装解除をすることになっていた。しかし当初の目標は10月現在2割しか達成されていない(今年4月のベルリン会合での下方修正した目標に照らしても5割)。選挙の矛盾の原因を遡っていくと、選挙登録とか、投票管理といった技術的な問題をはなれてアフガニスタンの復興と平和構築そのものの問題に行き着いてしまう。人々を危険に晒し、「自由選挙」の信頼性そのものを損なう最大の要因であった軍閥の武装解除が達成されなかったのは誰の責任か。今でも軍閥を支援しつづけているのはどこの国か。それを見てみぬふりをしているのは誰か。

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