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アフガニスタン大統領選挙関連速報第三報(1)

JVCアフガニスタン現地代表 谷山 博史
2004年10月12日 更新

アフガニスタン大統領選挙レポート

10月9日の大統領選挙当日、私と本間氏はアフガニスタンとの国境に近いパキスタンのペシャワールにいた。選挙前後は治安が悪化することが予想されるため、ANSO (Afghanistan NGO Security Office)の助言を受けてここに一時退避をしているのである。

退避しているとはいえ私たちは選挙の行方が気になってしかたがない。そこでジャララバードに残っているアフガン人スタッフからアフガン国内の選挙当日の様子を電話でレポートしてもらうと同時に、私たちはパキスタン北西辺境州で難民のために設けられた投票所を訪ねることにした。

ペシャワール市内及びその周辺の難民キャンプを見学できたことは不幸中の幸いであった。なぜなら、ANSOは今日1日NGOのすべてのスタッフに安全のために自宅待機の勧告を出したからである。ジャララバードに残っていたら投票所を見学することは適わなかったであろう。

<第一部 パキスタン選挙報告>

パキスタンにおける投票所見学

私たちは知人の計らいで4箇所の投票所を見学することができた。難民キャンプ2箇所、ペシャワール市内の投票所2箇所である。

パキスタンでは北西辺境州、バロチスタン州、イスラマバードの3つの行政区で計740,000人が選挙登録を行った。北西辺境州では410,000万人が選挙登録を行い、そのうち女性の割合は27%であった。同州内には1,016箇所に投票所が設けられた。

1) 市内ユニバーシティタウン、アルバーブロウ地区の投票所

ユニバーシティーロード沿いにある投票所である。午前10時半、投票所前は投票に訪れた人々とカルザイのキャンペーンチームの人たちが人だかりを作っていた。投票所に通じる小路の入り口脇に仮作りの詰め所が設えてあるのを見つけた私たちは、まずそこで見学の挨拶をした。ところがそこは選挙関係者の詰め所ではなく、カルザイキャンペーンチームの詰め所であった。私たちはたちまちカルザイ支持者に囲まれ、景気付けの神輿を担がされることになった。「ゼンダバーアフガニスタン! ゼンダーバーカルザイ!」のシュプレヒコールが繰り返される。ちなみに、他の候補者のキャンペーン詰め所は見かけなかった。

投票所に通じる通路は男性用と女性用に仕切られていた。男性は30メートルほどの通路一杯に列をなしているが、女性は列を作る必要はなかった。先頭の男性はもう1時間も並んでいるという。関係者とおぼしき人に聞くと、この投票所では7000人が登録をしたそうである。うち男性は4000人、女性は3000人というが、事実かどうか。事実だとすると、パキスタンでは登録した場所で投票することが決められているので、ここで7000人近くの人が投票することになる。人数に比べて投票所のキャパは小さいように見える。

ここのように市内に設けられた投票所は、難民キャンプではなく市内でパキスタン人にまぎれて暮らす難民たちのために設けられている。その数は正確にはわからないが数十万人にのぼるであろう。ここが一般の難民のイメージと大きく違うところである。この日の朝JVCスタッフのDr.ハヤトラに聞いた話では、投票所に来る人たちは皆イードの祭りの時のように楽しげだったというが、ここでは違っていた。皆緊張した面持ちで黙々と投票を済ませて帰っていく。試しに誰に投票したか投票を済ませた男性4人聞いてみた。4人ともハミッド・カルザイと応えた。

2) カチャガリ難民キャンプ・キャンプ1、小学校No. 156の投票所

カチャガリ難民キャンプはかつてパキスタン最大の難民キャンプの1つであった。2001年10月に私が訪れた際は公式発表で8万人、実際は10万人をゆうに越える難民が住んでいたが、現在は多くの難民が帰還して1000足らずに減っていた。6つの投票所が設けられ、各投票所がいくつかのポストに分けられている。各投票ポストには、選挙数日前にトレーニングを受けた2人のコミュニティ・モービライザーが配置されている。また各投票所には、4,5人のパキスタン警察が警護に当たっている。

学校No. 156の投票所は男性のためだけの投票所である。4つの教室にそれぞれ一つずつポストが設置されていた。最初に訪れたポストでは、214人が選挙登録をしたという。

ここは閑散としていて、見学していた15分ほどの間に投票に来たひとはたった3人であった。今回回った投票所を見る限り市内の投票所と難民キャンプ内の投票所の違いはここにある。相対的に市内の投票所のほうが人の入りが多い。一般に難民キャンプ内はコミュニティーの縛りが強く、市内に住む人たちの間では自由度が大きいが、このことに関係があるかどうかは調べてみる必要がありそうだ。

投票の流れを観察した。まず、入り口でボディーチェックをうけて投票所の中に入り、係員に選挙票を渡す。係員は渡された選挙票の登録番号と登録者リストの登録番号を照らし合わせ、照合できると登録者リストの欄に捺印をさせる。選挙票はパンチで穴を開けてから回収する。投票者は立候補者の名前、写真、ロゴの印刷された長さ1メートルほどの投票用紙を受け取り、部屋奥の記入台で記入する(この投票所では記入台はダンボール製の手作りのものであった)。記入した投票用紙を投票箱に入れ、親指を特殊なインクにつけて終了。選挙手続きでは最初の選挙登録と最後の投票証明のマークであるインクの塗付が重要である。このインクはインド政府から援助されたもので、2,3週間は消えないことになっている。選挙登録ではインク塗付はなかったので、二重三重の登録が可能であったが、投票そのものはこの特殊インクを用いることで二重投票はできないことになっているはずである。

3) ペシャワール市、ハヤタバード、ハルハニ地区、フランス病院の投票所

ここはトルカムの国境に向う幹線沿いにあり、道路と平行して走る線路をまたいで100メートルほど行ったところにある。病院の門が男性用と女性用に仕切られて別々の棟で投票できるようになっている。

投票所に向う途中で2,30人で固まった一団に出あった。もう投票をすませましたかとパシュトゥーン語で聞くと、投票を拒否されたと口々に不満をぶつけてきた。話を聞くとこういうことである。彼らは皆ジャララバードから来た。ジャララバードで登録し選挙票も持っているのでここで投票しようとしたが、アフガニスタンで登録したものはパキスタンでは投票できないと言われ拒絶された。だから今ジャララバードから来た人間が集まってジャララバードに戻る算段をしているところだ。だが、今日はなぜかパキスタン側の国境が閉鎖されているので困っている。

かれらはジャララバードに家があり仕事や家族の病気治療のためにペシャワールに来ていた。パキスタンで投票できないなどとは夢にも思っていなかったようだ。なぜなら、選挙をしたとき係員からどこで投票しても言いと言われたし、あるものはBBCでも同じことを聞いたからである。私たちではらちがあかないので、今度は近くにいた警察にクレームの矛先を向けた。

投票所の入り口で中の様子を窺っているとき選挙登録と投票の管理を委託されているIOM(International Organization for Migration)の国際スタッフがやってきたのでこの問題を投げかけてみた。話を聞いてかれはそれはミステイクだなと言ったが、思い直してアフガニスタンではどこで登録してもいいことになっているので、係員はアフガニスタンでのことを言ったのに、聞いたほうが誤解したのかもしれない、と付け加えた。確かにその可能性はあるが、パキスタンでは投票できないことが告知されていなければ、やはりそれはミステイクである。彼は2日後にカブールに行くというのでUNAMAとの会議でそのことを報告しておいて欲しいとお願いしてその場を離れた。

それにしてもアフガン人たちのこの投票に対する熱意はどこからくるのであろう。かれらは投票を拒否されたことを本気で怒っている。さらにトラックを設えて皆で投票のためだけにジャララバードに戻ろうとさえしている。ふと投票すれば何らかの恩恵がある、あるいは投票しなければ何らかのペナルティがあると誤解しているのではないかという疑問が生じた。失礼だとは思ったがあえてこのことを先ほどの一団に聞いてみた。しかしだれもそんな誤解をしている人間はいなかった。しかしその中の一人が気になることを口にした。親指にインクのマークがなければアフガンに帰ってから困る。おまえはなぜ投票しなかったのか、おまえはアフンガニスタン人じゃない、などと言われるじゃないかというのである。皆が同じことを感じているかどうかは別としても、こうした雰囲気を感じている人間もいるということ事実のようである。

4) ジャロザイ難民キャンプ、第4投票所、学校No. 150の投票所

最後にペシャワールから約30分イスラマ方面に戻るとパヴィ・バザールの交差点がある。その交差点を右にチャラック方面に10分ほど行くとジャロザイ難民キャンプがある。ここも非常に大きな難民キャンプで、現在でもおよそ40,000人の難民が暮らしている。18箇所に投票所が設けられている。

今回訪ねた第4投票所には4つの投票室があり、3,700人の登録が記録されているという。午後1時半の時点でこれまでに投票に来た人の数はおよそ900人。投票所に入っても投票者の数はまばらだった。午前中に投票に来るケースが多いと聞いていたので、登録者のうち何人がこのあと来るのか心配になった。

本間さんが英語のできる係員と話していのが耳にはいった。若い係員は本間さんの何か問題はあったかとの質問に答えて面白いことを言っていた。問題があったとすれば、インクのことだ。インクを付けたくないという人間が何人かいた。なぜかと問うと、インクをつけていると投票に行ったことが分かってしまう、タリバンに見つかると指を切られる、と言っていたというのである。またインクの問題である。

インクがついていないと困るという人間、インクをつけると困るという人間、立場によって両極端の反応をする人がいる。だから一概にどちらの言い分が真実とは言えない。しかし、先進国といわれる国でこのような方法を採用したらどういうことになるだろうか。プライバシーの侵害に当たらないだろうか。この「消えないインク」は投票に行った人と投票に行かなかった人を峻別するために身体に施された「烙印」である。投票に行ったか行かなかったかが一目瞭然に分かってしまう。投票に行ったか行かなかったか知られたくない人も中にはいるのであるから、これは明らかにプライバシーの領域だと言える。このことはアフガニスタンではとても深刻な意味をもっているのではないだろうか。選挙に参加するかしないかを巡ってアフンガニスタンでは反政府勢力の脅し、コミュニティの縛り家族の決定など様々な外的な制約がある。だれに投票をしたかを秘密にするだけではなく選挙に行ったか行かなかったかをも秘密にできるような方法を考える必要があるのではないか。

さて、投票所を出てからさらに何人かの人に聞いてみた。するとやはりここにも投票でできなかった人間がいた。40代のある男性はジャロザイに家がありカブールは仕事で行っていた。登録はカブールでしたのでここでは投票できないと言われた。また30代のある別の男性は同じくここに家があるが、ヌーリスタンに仕事で行っているときに登録をしたのでやはり登録を拒否されたという。一体こうしたケースはどれぐらいあるのだろうか。

別の2人には誰に投票したかを聞いた。2人ともカルザイに投票したと言う。では、奥さんは誰に投票したかと聞いた。2人ともカルザイに投票したと応えた。兄弟は誰に投票したかと聞くと、やはりカルザイに投票したという。そこでなぜ妻や兄弟がカルザイに投票したことを知っているのか、と訪ねた。するとそのうちの一人は、ファミリーでカルザイに登録すると決めたからと言う。ファミリーは何人だと聞くと、村全体で15家族いるが全部ファミリーだという。アフガニスタンは奥が深い。

難民キャンプの中でも一族がコミュニティを作って集住しているのである。そしてこのケースでも分かるように、一族が決めたことには皆が従うのが一般的な習わしである。欧米流の自由で公正な選挙の「自由」と「公正」の意味を、ここアフガニスタンでは、一族で決めることの自由、一族で決めることの公正さという意味にまで広げて考え、よしとする必要がある。さもないと社会の基層の秩序に大変な混乱が生じてしまう。

一方で今アフガニスタンはこの選挙を一つの契機に大きな社会変化の過程を辿っていると考えることができる。JVCスタッフのハヤトラからの選挙報告にあるように(第2部参照)、アフガニスタンでは政治的な問題は男性の意見に従うのが当たり前の社会だか、口では男性に従うといいながら、実際には自分自身の意志で投票した女性も多かったのではないかという意見もある。無数の人々の内面の葛藤が熱を帯びて社会全体を被っているようである。特に伝統的な社会規範の強い農村部で人々は反発と迎合の狭間で困惑と不安に身悶えながら新しい時代を模索している。「自由で公正な選挙」を蒙昧な人々を啓発するためのものと考えている人には、アフガニスタンの現実は見えてこないだろう。

第一報、第二報はこちら
 第三報(2)はこちら


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