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アフガニスタン大統領選挙関連速報第一報、第二報

JVCアフガニスタン現地代表 谷山 博史
2004年10月12日 更新

第一報 10月5日(火)

大統領選挙前夜 武装勢力の合従連衡

大統領選挙が近づいている。選挙期間中多くのNGOが事務所を閉鎖し外国人スタッフは国外に退避する。選挙中投票所や政府機関だけではなく、NGOの事務所も襲撃のターゲットになることが予想されるからである。誰が選挙や復興を邪魔するのか。一般にはタリバンやアルカイーダだといわれているが、それだけではない。地方の都市や村村を牛耳っている大小無数の武装グループのボスがカルザイ再選を嫌って問題を起こそうとしているのである。

10月9日の大統領選に続いて来年の4月か5月には国会議員選挙がある。私は、大統領選と国会議員選挙選の期間を通じてアフガニスタンは内戦状態になるかもしれないと思っている。全面戦争ではない。誰が敵で誰が味方か分からないような小規模の紛争がいたるところに起こり、治安が極度に悪化する可能性がある。

大統領選挙までに地方の軍閥の私兵10万人を武装解除するというのがボン和平合意に基づいて設定されたDDR(「武装解除・動員解除・兵士の社会復帰プログラム」)の当初の目標だった。しかしこのプログラムは遅々として進まず、今年初めの段階で武装解除できた兵士は1万人たらずだった。今年4月のベルリン支援国会合では、当初の目標を下方修正し、大統領選挙までに4万人とした。しかしそれでも選挙までに目標を達成するのは難しい。9月初めの段階で武器回収できたのは14,301人に過ぎない。

武装解除が進まない理由は様々ある(過去の記事を参照)。しかし一言で言うと、国際社会の側が腹を括って武装解除に取り組む覚悟がないからである。日本がDDRの主導国になっているが、他の国々から十分の協力を得ているとは言い難い。特に日本が当てにしていたアメリカは協力するどころか、プログラムそのものに矛盾するような行動をとっている(対テロ戦争の名のもとに不正規の武装グループを利用しているなど)。ここではDDRのことは詳しく述べるつもりはないが、今年と来年選挙期間を通して、アフガンが内乱に近い状態になったとしたら、それは他でもない、国際社会の責任であるということを強調したい。

大統領選の選挙キャンペーンが潜在的な地域の対立を顕在化させることになっている。数々の武装勢力が、選挙戦での対立を機に合従連衡しつつ自分の勢力を伸ばそうとしている。中央の選挙戦の政治的な側面だけを注目していては、アフガニスタンの現実、人口の9割以上が暮らす地方の現実は見えてこない。私たちの地元であるナンガルハル県の事例を紹介することで、アフガンの現状の一端を知ってもらいたいと思う。

ナンガルハル県でもカヌーニ派やドスタム派の選挙キャンペーンが盛んに行われている。一般の人々は戦争に倦んでいるので、カルザイを支持したいと思っている人が多いようだ。もしカルザイが負けたら再び軍閥の支配が横行することを危惧しているからである。たとえカルザイがアメリカの傀儡だとしても、他に選択肢はないということである。

しかし対立候補の選挙キャンペーンは人々の心を揺さぶっている。金で揺さぶり、銃の脅しで揺さぶっている。私の親しい友人ハキウラの父親はナンガルハル県ホギャニ郡の村長である。彼の父親は同じホギャニ郡出身の教育局長ガニ・ヘダヤットから、選挙でカヌーニを支持するよう買収されそうになった。カヌーニ支持の票を500集めたらそれ相応のお礼をすると詰め寄られたそうである。ガニ・ヘダヤットは県教育局長であるが、大統領選でカヌーニに協力するのに忙しい。アフガニスタンでは大統領選の立候補者以外は公職にあるものも選挙運動に関わることが認められているので、このようなケースは珍しくない。

大統領選挙でカルザイの最大のライバルと言われるカヌーニを支持するコマンダー(武装グループのリーダー)は少なくない。たとえカヌーニ支持ではなくても、アフガニスタン中に跋扈しているコマンダーの多くがこの時期反カルザイで一致しつつある。これをアフガン人の私の友人はコマンダーのニュー・ムーブメントだと呼んだ。

ナンガルハル県でカヌーニを支持しているコマンダーの中で最大の勢力はハズラット・アリ将軍である。ハズラット・アリはタリバン戦争の際北部同盟に呼応し、アメリカの前線を担って力をつけた。少数民族パシャイー出身であるが、国境地域の一部を除くナンガルハル全域をほぼ牛耳っている。つい最近ナンガルハル県の警察署長のポストについたばかりである。(アリのナンバー2であったグル・カリム将軍がカルザイによってこのポストから解任された後、カブールから送られた新任の警察長官のもとでジャララバードの治安がこれまでになく悪化した。そのためカルザイはアリを警察長官に任命せざるを得なくなった。)

アフガン人が合従連衡を繰り返してきたことは歴史的によく知られているが、現在も戦国時代さながらの奇々怪々の合従連衡が演じられている。ハズラット・アリの最大のライバルは、タリバン戦争の際共にアメリカに協力して名を挙げたホギャニ郡のコマンダー、ハジ・ザマンである。ハジ・ザマンは、タリバン戦争の後2002年8月、アメリカの協力を得たハズラット・アリに戦闘で敗れ亡命していた。最近になってハジ・ザマンは反カルザイでハズラット・アリと手を組んだと言われている。最近ホギャニで起こった出来事はその状況証拠を示すものだ。

ハジ・ザマンの後ホギャニを牛耳ったのは、ホギャニ郡の警察署長をしているムラー・オマルである(タリバンのムラー・オマルとは別人)。この両者は従兄弟同士であるが対立している。大統領選挙戦の前夜、オマルはハズラット・アリから突然警察署長を解任された。これまで対立していたハジ.ザマンとハズラット・アリが反カルザイで手を組み、密約を交わしたと考えられている。解任されたオマルは、ハズラット・アリと対立しているナンガルハル県知事のディン・モハマッドに泣きつき、ディン・モハマッドからこれまでよりも高いポストである郡長に任命された。ナンガルハル県知事のディン・モハマッドは、暗殺されたハジ・カディール(前県知事その後暫定政権下で副大統領であった)の兄に当たる。

つまり、カルザイとカヌーニとの対立の構図がナンガルハルでは、県知事と警察長官の対立に反映されており、県下の郡部でコマンダー同士の軋轢を顕在化する結果になっている。さらに厄介なのは、敵同士だったものが合従連衡に走り、敵の敵は味方という新たな関係を作りつつある。地元を牛耳っている武装グループのボスにとって、カルザイは脅威になりつつある。アフガン国内最大の軍閥であるヘラートのイスマイル・カーンが先月カルザイによって解任されてからはなおさらでなる。カルザイが圧倒的多数で再選すれば、武装解除を初めとした改革が今まで以上に協力に推し進められることを知っているからである。

地方の村々で選挙がどのようにお行われるか全く予断を許さない。そもそも選挙登録者は想定される選挙人人口以上の数に登ったとはいえ、投票率が同じように高くなると考えることはできない。選挙登録と投票とは全く別物である。地方の住民にとって投票はとてもリスクが大きい。選挙ボイコットを呼びかけているタリバンによる襲撃の脅威もあるが、地元のコマンダーの脅威は日常生活に直接関わっているためさらに深刻である。投票が秘密投票であるということすら知らない人が多いのである。

私は、混乱が起こるとすれば投票当日より選挙後、特に開票結果が出てからのほうが大きくなると予想している。また、もしカルザイが過半数の投票を得られず決選投票なるとしたら、さらに混乱は増すだろうと考えれいる。そして来年春の国会議員選挙は大統領選挙とは比べ物にならないほど地方は諸勢力の対立が激化し、住民が治安悪化の脅威に曝されるだろうと思っている。にも関わらずことがここまで進んでしまった以上、この大統領選挙が最小限の混乱で無事終わってもらいたいと願わずにはおれない。アフガンの人たちの命の危険と引き換えに実施される選挙なのだということを改めていま感じている。

この選挙には様々な問題が付きまとっている。そしてそれらの問題に対する責任の多くを国際社会が負っている。選挙の何が問題で、どう国際社会は責任を負っているのかは、追って書こうと思う。

第二報 10月7日(木)

今私はペシャワールに滞在しています。NGOセキュリティーオフィスの助言を受けて選挙期間中はジャララバードをでてここで退避しています。

先日お送りしたアフガン・レポートの内容の一部に誤りがありましたので、この場を借りて訂正したいと思います。

レポートでは、選挙戦におけるカルザイとカヌーニとの対立を軸に、ナンガルハル県でも武装勢力同士が互いに虚々実々の合従連衡に走っていると述べました。そしてその例として、これまで対立していた県警察長官のハズラット・アリとホギャニの軍閥ハジ・ザマンが反カルザイで手を結んだらしい、という憶測をしました。しかし、この憶測は現時点では誤りであったことがわかりました。

パキスタン英字紙The Nationは10月6日、ペシャワールに亡命中のハジ・ザマンがカルザイ支持を表明したと報じました。アリとザマンが手を組んだとしても、それがカルザイに対するカヌーニ陣営の合従ではなかったと考えざるをえません。今後事態がどのように推移するか分かりませんが、新情報に基づいて誤りを訂正し、お詫びします。

ところで、選挙前のここ1週間、CNNは毎日米大統領戦と平行してアフガニスタンの選挙に関して特集を組んで報じている。CNNの報道の基調は、アフガンの人々は今まさに歴史上初めての自由で公正な直接選挙に臨んでおり、自分たちの手にアフガンの未来を掴もうとしているという体のものです。民兵の脅しや伝統的な社会規範による制約がある中で、どれだけの人が自らの意思で投票できるのかといった基本的な疑問には触れることがありません。

概して選挙の成功、ひいては3年間の復興プロセスとそれを可能にした対タリバン戦争の成功を言い立てたい側は、予想を上回る数の人々が選挙登録を行ったことを強調します。
もちろん、登録者数が想定された選挙人人口を100万人も上回っていることが何を意味するのかには触れません。一方BBCは、タリバンや軍閥の民兵による脅威が投票を危ういものにしていることに触れていますが、伝統的な社会規範による制約から「自由な選挙」が実は西洋的価値観に根ざした幻想であること分析するまでにはいたりません。

Human Right Watch やAfghan Independent Human Right Commission といった人権団体は治安と伝統的・保守的な慣習が人々、特に女性の投票を妨げている点を批判しています。しかし、それらは「そうあるべきではない」といった原則論を述べているのであって、アフガンの、とくに農村社会の現実にたいする見識に欠いていると言わざるをえません。

これも民主化のためのプロパガンダと捉えれば合点がいくのですが。

私の乏しいアフガン在住経験をしても、アフガニスタンの農村で人々が家族や村のシューラ(評議会)の意志とは無関係に一人一人が自由意志で投票すると想像することは無理があります。この現実とタリバン後に導入された政策および選挙報道とのギャップをどう理解すればいいのでしょうか。

これは占領統治なのです。あるいは早すぎた革命と言ってもいいでしょう。つまり現実を反映していない政策を上から導入しようとしているのです。欧米の価値観では現実とのギャップは斟酌して「教育的効果」に重きを置くことになるでしょう。蒙昧な人々の心を啓いてあげるという支援の意味に疑問をもつ人は少ないと思います。この過程で治安が悪化し人々が多少犠牲になっても、あるいは伝統的な社会の秩序が壊れて村が混乱しても、定められた歴史の進歩を妨げるべきではない、と考えるでしょう。しかしこれが内在的な発展でないことは確かです。

だから伝統的な社会の規範を守るべきだと言えるかというと、私にはそこまで言い切れないもどかしさがあります。相対的な歴史発展の論理をアフガンという社会に照らして論理化するまでに至っていないからです。アフガン社会がどうあるべきなのか、私にはまだはっきりと見えてきません。しばらくは、少なくともあと10年は、アフガニスタンの中でアフガンの人々自身の異なる価値観、異なる思想、ことなる政策が互いにぶつかりありながら、いわば帰納的にあるべき姿が見えてくる、否アフガンの人々が見いだしていくのかもしれません。

しかし今のアフガニスタンで圧倒的な影響力をもつ外国の人間が、金の力、政治力、武力を使ってアフガニスタンに自分たちのよしとする価値観を押し付けることだけは止めさせなければなりません。英語ができない人間が外国人から英語でまくし立てられ、英語で反論できないために武器を取るしかなくなる、といった事態は避けたいものです。アフガニスタンは歴史的にそういう事態を繰り返してきた国です。揺り返しを誘発するような政策による進歩はどんなに成功しているように見えても、以前よりも大きな混乱と退歩を生むことになるのです。

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