アジア・中東・アフリカで活動する国際協力NGOです。
  • JVC facebook
  • JVC twitter
  • イベントメルマガ配信中
  • 文字サイズ:大きく
  • 文字サイズ:中くらいに
  • 文字サイズ:小さく
JVC English website

アフガン・レポート 第三部 政治プロセスに隠された危険

JVCアフガニスタン現地代表 谷山 博史
2003年12月 2日 更新

タリバンを初めとする反米・反政府ゲリラ活動が激しさを増している。援助団体を狙った襲撃の危険が差し迫る中、国連もNGOも多くの団体が活動を中断している。1カ月ほど前、NGOの連合組織でアドボカシーを担当しているバーバラは、近いうちに大きな混乱が起こるかもしれないと予想していたが、不幸にも的中してしまった。武装解除やISAFの地方展開、憲法制定のプロセスなどに進展は見られるが、政治の表舞台の一皮めくるとおよそアメリカ政府が「民主主義と平和の進展」を喧伝(けんでん)するのとは裏腹の実態が見えてくる。

DDRの進展

レポートの第二部で書いたように武装解除、動員解除、兵士の社会復帰(DDRと呼ぶ)がアフガン北部のクンドゥーズと東南部パクティア県の県都ガルデーズでスタートしたが、前途は多難で楽観は許されない。DDRは3年の間に10万人の軍閥の私兵を武装解除し社会復帰させることを目標にしているが現在はまだ試行段階で、選挙までの期間を考えると、8つの地域で6000人の除隊が可能になるかどうかである。総数10万人以上と言われる軍閥の兵力を削ぐには程遠い。来年6月の選挙でも軍閥や地域のボスの影響を排除することは不可能だといっていい。脅迫、暗殺、買収が横行するであろう事は想像に難くない。

クンドゥーズでは1000丁の銃を回収した。その際イスラム協会(タジク人を中心とするイスラム主義組織。国防大臣ファーヒム、教育大臣カヌーニ、外務大臣アブドゥッラの3人がカルザイ政権で実権を握っている)のある将軍は、「古い武器は提供したが、最新の武器は倉庫に保管し敵の攻撃に備えている」と新聞の取材で答えている。また一方で国連の発表によると、除隊した兵士が銃の引渡しと交換で供与された一時金200ドルを、軍閥の指揮官が没収するケースが報告されているという。除隊登録リストに兵士ではない一般民の名前を登録するというケースも報告されている(「The News」11月21日)。

クンドゥーズに続く対象地ガルデーズではDDRが11月9日に始まり、11月17日現在で595人の兵士から武器が回収された(「The Frontier Post」11月20日)。また、北部バルク県の県都マザリ・シャリフでは、正式なプロセスに先立って衝突を繰り返す軍閥の2大勢力の武装解除に踏み切った。イスラム協会でタジク人の将軍アッタ・ムハマッドは58台の戦車を引き渡したという。一方のイスラム国民運動の領袖でウズベク人のドスタム将軍は、武装解除に賛同しながらも未だに実施する気配がない(「The News」11月22日)。カメレオンのように変節を繰り返し、断続的とはいえ30年近く北部で実権を握りつづけてきたドスタムとしては、言を左右にして白を切り通す魂胆であろう。

治安の空白を誰が埋めるのか

DDRはアフガンの治安を安定させ、中央政権による地方の掌握を実のあるものとする上で必要不可欠のものとしてボン会議で約束された。自由で公正な選挙の実施を保証する上での前提とされたのである。上記のようにDDRはその量と質の両方で多大な困難に挑戦しているわけであるが、このプログラムはそれとは別の根本的な課題を抱えている。仮にDDRが成功裡に進められたとする。しかし地方を実質的に支配している軍閥の兵員を除隊させたあと、地域の治安を誰が確保するのであろうか。軍閥を解体した後の権力の空白、あるいは治安の空白を誰が埋めるのか。軍閥が治安悪化の原因であることは一定の事実として認めなくてはならない。しかし同時に軍閥の実効支配によって地域に一定の統制がもたらされていることも、その程度に地域的な差異があるとしても無視できない事実である。

PRTとISAFの地方展開

地方の権力の空白、治安の空白をいかにして埋めるのか。これがアフガニスタンの新しい政府を正当なものとして確立する来年夏の選挙にいたるプロセスの最大の課題である。治安の悪化によって復興援助活動が脅かされているNGOも繰り返しこのことを問題にしてきた。NGOやカルザイ移行政権が要請してきたのはISAFの地方展開である。ISAFはこれまで5,500人の要員で、カブールの治安の維持だけしか行ってこなかった。ISAFが活動を始めてから2年もの間、度重なる要請にも関わらずカブールから一歩も外に出なかったのは、要員派遣国の財政負担の問題・地方での任務に伴う危険の問題だけではなく、指揮系統の問題があったと思われる。

既に書いたように、ISAFは対テロ戦争を行っている連合軍とは指揮系統を異にする。ISAFは国連の管轄下にあり、連合軍はアメリカの主導・指揮のもとで活動している。ISAFが地方展開した場合、必然的にISAFは米軍の統制下に組み入れられる。国連もISAFに参加している各国もこのことを嫌ったのではないか、というのが私の憶測である。

ISAFが一気に地方展開に進展を見せた背景には二つのことがあると私は考えている。一つは、8月にISAFの指揮権がドイツ・オランダからNATOに移行したことである。NATOも実質的には連合軍同様、アメリカ軍の指揮下にあると考えられるからである。もう一つの背景は、イギリスがアメリカの考案したPRT(Provincial Reconstruction Team 主要都市で復興援助と間接的な治安支援活動を行う連合軍の民生部門)をマザリ・シャリフに派遣し、これまでのアメリカのPRTとは違って、マザリ・シャリフでのセキュリティー・コミッションや対立する武装勢力の停戦交渉、さらに武装解除に積極的な役割を果たし一定の成果を上げていることである。ISAFがイギリスのPRT方式にならって治安維持に役割を果たすことができるのではないかと考えたとしても不思議ではない。

NGOのPRTとISAFに対する懸念

アフガニスタンで活動するNGOの連合体ACBARがPRTをどう見るかという判断の前提には、PRTのアメリカ方式とイギリス方式の違いが作用している。アメリカが考案し実施してきたガルデーズ、バーミアン、クンドゥ―ズ(後ドイツに移譲)でのPRTは、学校建設、井戸掘り、橋や道の修復といった比較的小規模の復興活動を軍が行うというものであった。これに対してNGOは、軍による復興援助活動の問題に焦点を当て提言活動を展開してきた。批判のポイントは、援助活動の隠れ蓑の下で情報収集活動をするのではないか、国連を中心とした援助調整を損なうのではないか、軍事活動と援助活動の混同を招き、NGOのみならず援助を受ける地域社会をもテロの危険にさらすのではないか、さらには軍の本来の任務である治安確保の役割が明確ではない、などであった。この懸念と批判のポイントはアメリカのPRTに関しては依然として生きている。しかし、イギリスのPRTが間接的とはいえ治安確保に一定の役割を果たしていることに対しては、現実的な代案を探る立場から考慮の対象とする必要が生じてきた。

しかし、ISAFの地方展開が始まるにあたって問題は複雑化してきたといえる。ISAFが地方で展開したとしても、本格的な治安維持の活動を行わず、イギリス方式のPRTに毛が生えたような活動でお茶を濁すのではないか。イギリス方式のPRTが、ISAFの地方展開が拒否されつづけている現実において第二・第三の代案としての考慮の対象になりえたとしても、地方の治安を確保するにはとうてい十分とは言えない。この懸念は地方展開するISAFの要員総数が2,000人から10,000人と予測されている事実を考えるとうなずける懸念である。さらに、すでに述べたように、地方展開に要員を派遣すると名乗りをあげている国がない。もし要員が増員されなければカブールから引き抜いて派遣するしかないことになるが、そうするとカブールの治安が低下することになる。こうした懸念はすでに出始めている。

さらに、NGOの不信感を誘うのは、ISAFの派遣の最初のケースが、タリバンなどの襲撃で撤退の危機にさらされている南部、東南部の問題のある地域ではなく、比較的治安のよいクンドゥーズだったという事実である。ISAFはどこまで治安確保という大命題に応える意志があるのか。本当に予測される規模と任務で治安の確保ができるのか。少なくとも現在までのところ、ISAFは現状の治安悪化に対処する上でも、今後DDRの進展によって生じる地方の治安の空白を代替する上でも、その効果を楽観することはできない。ちなみに、DDRは国軍創設と平行して実施されることになっており、新国軍が軍閥解体後の治安を代替することが期待されている。しかし現実には、70,000人の新国軍のトレーニングと配置という目標に対して、現在トレーニングを完了し動員できる兵員は10,000人に満たない。今のペースで行くと、当初の目的に達するまでに5年から10年はかかると言われている。

ジャララバードの現実

DDRは地方の治安の空白を生むのではないかという感覚は地方に在住していないと理解しにくいかもしれない。私が駐在しているジャララバードの治安はよくも悪くも軍の実権を握っているハズラット・アリ将軍と警察の実権を握っているグル・カリム将軍によって保たれているといっていい。その実情を認識しているからこそ日本政府はアリ将軍を日本に招き、関係維持に努めてきたはずである。ハズラット・アリもグル・カリムも少数民族のパシャイ―人で、両者の関係は緊密である。ハズラット・アリは前県知事でその後カルザイ政権の副大統領になった(昨年8月に暗殺された)ハジ・カディールの子飼いの兵士から身を起こした。ハジ・カディールの後を継いで県知事になったディン・モハマッドとは一枚岩とはいえないが、大きな衝突も起こさず一定の均衡を保っている。

ハズラット・アリは他の多くの地方軍閥同様、アメリカの対タリバン戦争で功績を上げ、アメリカに重用された。現在の実権の背景にはアメリカの支援がある。昨年8月、アリ同様ハジ・カディールの司令官の一人であり同じく対タリバン戦争でアメリカに重宝がられたナンガハル県ホギャニ出身のハジ・ザマン将軍が、アメリカの支援を得たアリの攻撃を受けて亡命するという事件が起きた。ハジ・ザマンが追い落とされた後、ホギャニの治安は悪化し、JVCが行っていたホギャニでの巡回診療活動は中止せざるを得なくなった(ホギャニの治安の悪化はケシの栽培に絡んでいる面が強いが、ケシの収穫が終わった後も状況は好転していない)。

話を戻そう。アリ司令官とグル・カリム警察長官は、曲がりなりにもジャララバードを含むナンガルハル県一体の治安確保に一定の役割を果たしている。反政府ゲリラの活動の取り締まり、沿道のチェックポイントでの警備、犯罪の捜査、政府要人や国連やNGOなどの車での移動の護衛、国連やNGOなどの事務所への武装ガードの派遣などなど。彼らはパシャイー出身で、兵士や警察もパシャイ―で占められているため、住民から軽蔑の言葉を投げられることもあるし、一部の人間が麻薬や禁止されている木材の取引に関わっているという批判もされている。それらを差し引いて考えても、彼らが解体された後の治安が今より良くなると想定することは到底できない。カルザイ政権やアメリカへの反発からゲリラ活動に転じる可能性もないわけではない。

県知事・司令官の更迭

カルザイ大統領はこの3,4ヶ月の間に地方の要職にあるものの首のすげ替えを果敢に行っている。すでに述べたが、バダクシャン県、ヌーリスタン県、クナール県、そしてカンダハル県と立て続けに知事や司令官を更迭し、新しい人間を任命して送り込んでいる。この果敢な措置がカルザイのワシントン訪問の直後から始まったことから、カルザイはアメリカのお墨付きを得てこの行動に出たと考えられている。中央の意に添わない地方の軍閥の更迭は、国際社会から概ね好意的な反応を得ていて、カルザイが軍閥対策に本腰を入れたと見る向きも多い。しかし皮肉なことに、知事や司令官を更迭した後それらの地域の治安はまたたく間に悪化している。

モウラビ・ラバニ前知事更迭後のヌーリスタン、ナジブディン前県司令官更迭後のクナール県がそうである。古くは昨年1月アメリカの後押しでカルザイに一旦任命された後地元のシューラの反発を受けて解任されたパクチア県前知事パッチャカーン・ザドラムの例もある。パッチャカーンはその後反米、反政府ゲリラ活動に転じた。

カンダハルのケースはちょっと趣が異なる。前知事グル・アガも現知事ユーサフ・パシュトゥンも共にカルザイ派である。アガはカンダハールの実力者であったが、カルザイの要請を受けて政権の大臣職に横滑りした。一方のパシュトゥンは大学卒でインテリ、いわゆるテクノクラート(官僚)で、都市計画・住宅省の大臣であった。カンダハル県知事の交代のあとで起こったことは、地域の秩序を維持することがいかに難しいかを如実に語っている。カンダハルではタリバンの襲撃が日ごとに激しくなり、地域地域で小ボスの造反も多いという。今や全県の半分は政府の統制のきかない地域になっている(「The Nation」11月17日)。

さらに、9月には、カンダハル刑務所から41人のタリバン囚人がトンネルを掘って脱走するという事件が起きた。パシュトゥン知事は刑務所内部に内通者がいると憤慨している。そして10月の末、カルザイはJVCの足元のナンガルハル県の知事、軍司令官、警察長長官、税関所長、検察所長、保健局長などを更迭し、新任を送り込んだ。同時に新国家警察100名、新国軍を200名も派遣した。しかしこのうち新任者が任務につけたのは税関所長のみで、他のポストは皆前任者が居座ったままである。皮肉なことであるが、治安を司る知事、軍司令官、警察長官が居座りを決め込んでいるために、表立って大きな混乱は起きていない。しかし、例えばホギャニのハジ・ザマン将軍のように、またクナールのナジブディン将軍のように、アメリカがこの更迭を後押しするために実力行使をした場合、またそうした動きと相まってナンガルハルでDDRがスタートした場合、ナンガルハルの治安の混乱は避けられないだろう。

対ソ連ムジャヒディン戦争の再現の悪夢

DDRも地方軍閥の知事や軍司令官の更迭も「新しいアフガニスタンの統一」のためには避けて通れないプロセスであることには疑問の余地がない。しかし、しかしである。そのやり方はこれで本当にいいのであろうか。現実はこうした政治プロセスを担保するものなのだろうか。例えば、新憲法草案では、県評議会は住民の自由で公正な直接選挙によって選ばれ、議長は評議会から選出されると規定されている(評議会の長は立法府の長に当たるのか県知事に当たるのかは不明)。

カルザイがいかに中央政府の統制力の確保に真剣だったとしても、地方住民の意思を反映していない県知事の任命は地域の反発を招く危険が大きい。新憲法の発布と新しい地方行政法の制定を待ってからでも遅くなかったのではないかと思えてくる。また、カルザイのバックにアメリカがいて、地方要職の新人事がアメリカの意図によるものと受け取られた場合の反発も無視できない。アフガン人は外国の介入を最も嫌う。不満を抱く指導者だとしても、外部から強制された指導者につくぐらいなら、できそこないの指導者と共に傀儡(かいらい)と戦うというモラルと性向を伝統的に持っていることを忘れてはならない。

また、アメリカのやり方があまりに手前勝手で、軍閥を利用したいときだけ利用し、お払い箱になれば切り捨てるというパターンできたために、切り捨てられた軍閥はアメリカやカルザイに深い恨みを抱く可能性がある。この復讐の執念もアフガン人の際立った特長である。タリバンもヘクマティアルも、アメリカに利用され、そして捨てられた。さらにアフガン人のもう一つの特徴、「共通の敵の前ではこれまで反目していた者同士が結束する」という歴史的に証明された事実を忘れてはならない。

タリバンとヘクマティアルは仇敵であったが、今や地下で連携している。東部地域に関して言うと、モーリー・ガフールやモウラビー・ラバニやナジブディンがタリバンやヘクマティアルと結束し、さらにこれにハジ・ザマンが加わり、ディン・モハマッドやハズラット・アリやグル・カリムが加わった時のことを考えると、これは悪夢としか言いようがない。アフガン人の友人が言っていたように、ムジャヒディンによる対ソ連抵抗戦争の再現にならないと誰が言えるであろうか。

****************
第三部は1回で終わりませんでしたので、残りは第四回として追ってお送りします。
次回は主に新憲法と選挙の問題に関して書く予定です。


この活動への寄付を受け付けています!

月500円からのマンスリー募金で支援する

今、日本全国で約2,000人の方がマンスリー募金でご協力くださっています。月500円からの支援に、ぜひご参加ください。

郵便局から募金する

郵便局に備え付けの振込用紙をご利用ください。

口座番号: 00190-9-27495
加入者名: JVC東京事務所

※振込用紙の通信欄に、支援したい活動名や国名をお書きください(「カンボジアの支援」など)。
※手数料のご負担をお願いしております。

JVCは認定NPO法人です。ご寄付により控除を受けられます(1万円の募金で3,200円が還付されます)。所得税控除に加え、東京・神奈川の方は住民税の控除も。詳しくはこちらをご覧ください。

遺産/遺贈寄付も受け付けています。詳しくはこちらのページをご覧ください。

団体案内
JVCの取り組み
11ヵ国での活動
イベント/お知らせ
現地ブログ
あなたにできること
その他
特定非営利活動法人 日本国際ボランティアセンター
〒110-8605 東京都台東区上野5-3-4 クリエイティブOne秋葉原ビル6F 【地図】
TEL:03-3834-2388 FAX:03-3835-0519 E-mail:info@ngo-jvc.net